3話 「鋼鉄の守護者」
「ほう! きっとそなたはこの剣に認められたのだな。」
「さっすが、リューくんだね!」
方や感慨深げに、方や無邪気に喜んではくれているが・・・俺には少々気にかかる。この剣はあくまで竜神が『使っていた』だけだ。これが竜神が『作った』というのなら俺の中の先代の力に反応したとも考えられるのだが・・・。まぁ、現状この剣を使えることで困ることは無い。細かいことは抜きに戦力アップを喜ぶとしようか。しかし・・・恐ろしいほどに軽い・・・まるで重さが無いみたいに感じる。
「ところで、この剣の名前はなんていうんだ?」
自分が使うとなるといつまでも魔剣というのは気分的によろしくない。
「名までは伝わっておらぬな。先代なら知っていたかもしれんが・・・我らは竜神様が使った剣、竜神剣と呼んでいたがそなたの好きな名で呼べばいいのではないか。」
「いや・・・それなら竜神剣でいい。2代に渡って竜神が使った・そして使うことになる剣・・・まさにふさわしい名前じゃないか。」
「・・・警告する。神をも恐れぬ盗人よ。剣を置き、早々に立ち去れ。」
なるほど、考えてみれば伝説の魔剣があれほどボロボロになるまで放置されていて誰の手にも渡らないはずがない。つまり・・・ガーディアンの一人や二人いない筈がなかったな。おまけにしっかりと逃げれないように結界まで張られているか・・・。
「アキ、レミー・・・さっきの言から言って一度置けば結界は消えるはずだ。その間に二人は神殿の外に出るんだ。・・・俺の武器を得るための戦いだからな、二人に迷惑はかけられない。」
俺は真剣に言ったのだが・・・ニッコリと笑ったアキが近づいてきて
「迷惑? そなたは何を言っているのだ?」
アキさん・・・その笑顔もの凄く怖いんだけど・・・
「わ、私たちは仲間じゃなかったのか?」
わわ! 今度は今にも泣きそうに、こっちの方がもっと辛い!
「わかった! わかった! 手伝ってくれ!!」
「うむ、そもそも私が連れてきたのだから当然だな。」
この変わり身の早さ・・・女って怖いな。
「じゃあ・・・レミーだけでも・・・。」
「リュ~く~ん? わたしだってリューくんの仲間だよね~?」
「ああ・・・そうだな。」
これは逆らわない方がよさそうだ。・・・俺の立場ってパーティで一番弱いんじゃ?
「わたしだってリューくんやあーちゃんのこと大切だよ? だから二人の為なら戦う。・・・迷惑なんていって欲しくないよ。」
隣で聞くアキもしきりにうなずく。二人とも・・・俺なんかにはもったいないぐらい良い仲間だよ。
「答えは出たようだな・・・。ならばここに神の鉄槌を下す。」
どうやら、こちらも律儀に待っていてくれたらしい。ドシーンドシーンと響く重々しい足音。僅かに金属音も混ざる・・・その正体は。
「ゴーレムか! たしかにガーディアンには最適だ。・・・いくぞ!アキ!レミー!」
気合を入れて戦いに望む。今までの俺と違いゴーレム相手に接近戦を仕掛ける必要はない!
「いくぞ! 竜爪閃!」
剣から生じた三本の衝撃波がゴーレムを切りきざ・・・まないな?
「うお!」
竜爪閃を受けてもまったくダメージを受けた様子のないゴーレムが繰り出してきた拳を辛うじて俺は避ける。
「馬鹿者! 土や木のゴーレムならともかく、鉄のゴーレムにそなたの魔法などが通じるはずあるまい!」
アキからの叱咤の声。たしかにゴーレムはその素材によって能力が変るが・・・そこまで言われるほど俺の魔法って弱いのか?
「って! いい加減に・・・しろ!!」
考え事をしてる間好き勝手攻撃してきたゴーレムを思いっきり斬りつける。切り裂くことこそできなかったが、普通の剣なら確実に折れるだろう衝撃にもかかわらず刃こぼれ一つしない。
「リュウト! 見つけたか?」
アキが聞いているのはあまりに有名なゴーレムの弱点。ゴーレムは体のどこかにemeth(生)の文字が刻まれている。それをmeth(死)に書き換える・・・つまり頭のeを消すなり削るなりすればゴーレムは動かなくなるのだ。・・・しかし
「いや、さっきから探してるんだがどこにも無い!」
そう、必ず無ければいけない文字がこのゴーレムには見つからないのだ。
「となると・・・リュウトよ! おそらくこのゴーレムの文字は体内にあるのだ。ここは正攻法で攻めるぞ!」
「了解!」
・・・ははは、どっちがリーダーだか分からないな。だが、冷静で博識なアキは本当に頼りになる・・・心からそう思うよ。
「さぁ、溶かしてやるぞ!ファイヤーボール!」
「わたしもやるよ~。水の刃は鋭いんだから! ウォータカッター!」
アキとレミーの魔法攻撃・・・それはさすがに俺よりもずっと高威力だ。硬いゴーレムの装甲ゆえに一撃で致命傷とはいかないが確実に削り取っている。
「ごぉぉぉぉおおん!」
たまらずターゲットをアキたちに切り替えるゴーレム。だが!
「おっと、悪いな。あの二人に手を出すのは俺を倒してからだ。」
そんなあっさり後衛を攻撃されるようじゃ前衛失格だからな。ここは体を張らせて貰う!
そして30分後・・・少々疲れはしたが俺たちはほぼ無傷で戦いに勝利した。・・・のだが
「こういう罠って勝ったら解除されるものじゃないのか?」
一向に結界が解除されないのだ。閉じ込められたってことか?
「おかしいな? この手の結界の解除条件はそなたの言うとおりなのじゃが?」
アキも不思議そうにしてる。・・・ドシーンドシーン
「ああ、そういうことか・・・。」
「まだ、終わっていなかったのだな。」
「ム~! しつこいよ~!」
文句を言っても始まらない!・・・っていくらなんでも多くないか! 俺たちの前に現れたゴーレムの総数は・・・なんと10体だった。
ガシーン!ガシーン・・・え~、現在戦いの真っ最中です。さて誰をゲストに呼ぼうかな?
???「ならば我が話してやろう。」
・・・ネタバレキャラはお呼びではありません!あなたの出番はある意味ず~っと先なんですから!
???「くっ! まぁ、仕方あるまい。」
さて、では今回は僕だけでお送りしましょう。この章のタイトルでもある『究極の魔剣』こと竜神剣。今のままでもそこいらの名剣、名刀なんて歯牙にもかけないのですが(さすがに伝説クラスの武器には劣るけど)まだまだ本来の能力は発揮していません。
まだまだ謎の多いこの剣の正体と能力・・・予想してみるのも面白いかもしれませんね。ではまた♪




