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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
6部7章『赤き炎と終焉』
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3話 「カーミラの秘密」

「カーミラの奴には許嫁がいる」


 唐突に切り出された言葉はまずはそれだった。だが


「カーミラは姫だったわけだから、許嫁の1人ぐらいいてもおかしくはないと思うが」


 そう、おかしくはない。だからこそ、ここでその話が出てくることがおかしいのだ。俺とてカーミラの仲間だ。あいつには幸せになって欲しいし、望まぬ結婚なんてして欲しくない。条件? そんなものが何になるのかって感じだな。あいつが望むならばバンパイア族相手に1騒動起こしてやってもいい。まぁ、さすがに今というわけにはいかないが


「ふむ、確かにそうだな。ならば、この先もわからないか?」


「他にいい相手でもいたか? そういえば、隠れ里に行ったときに幼馴染だという男にあったがそいつか? カーミラ自身は否定していたが」


「そうであったならば、こんな事態にはなっていなかっただろうな。許嫁というのはそいつのことだ」


 ああ、逆だったか。となると、あいつには少々悪いが、俺としてもその婚姻は認めたくないな。幼馴染だというのならば、そいつの性格をしっかり知っている上での拒否だろうし


「となると・・・どうなるんだ?」


「なるほど、これは我が孫も苦労しそうだ。なに、あいつは『そんな結婚は承諾できません。相手は自分で探してきます』と飛び出していったのだ・・・祖父としては応援してやりたいところだが、王としては歓迎できぬところが厄介だ。特に相手側の方がな」


 そりゃあな、王族と一度決まった婚姻を破棄された方はたまったものじゃないだろうな。得られるはずだった名誉と地位を失うどころか、逆に傷つけられるわけだし・・・だが、カーミラの幸せと引き換えられる程の物とも思えないが、そこらへんは王としての苦悩なんだろうな、こんな人でも


「しかし、そこまでカーミラにとっては嫌な相手だったか。ん? で、それがどう俺とつながるんだ?」


「おまえ、相当鈍いと言われているだろ。ちょうど、カーミラの奴が逃げ出した少しあとに噂になったのが、魔界の魔王の1柱が竜神に滅ぼされたという話だ。婚姻を破棄するほどの相手となれば、それなりの地位か強さを求められる。その関係上で魔界に行っていたカーミラの耳に噂が届くのは早かっただろうな」


 ああ、それで俺の前に出てきたのか。確かに『魔王の1柱を倒した竜神』。それだけ聞けば、優良物件に思えるよな


「ようするに俺をダシにして婚姻を破棄する気だったのか。うん、まぁ、確かにカーミラ的には引けない理由があったんだなぁ」


「当初はその予定だっただろう。バンパイア族は通常、異種族と婚姻する場合まずは相手を噛み傀儡とし、召使としてそばに置いた後に愛着がわいたなどの理由で・・・というのが通常だ。古き時代の名残のようなものだがな」


 その古き時代から生きているような奴がよく言う。だが、確かにカーミラはそんなようなことを言っていたような気がするな。ふざけているのかと思っていたが、カーミラはあれはあれで必死だったわけだ


「とりあえず、カーミラが俺に会いに来た経緯はわかったが、その問題の婚姻は破棄されていたりするのか? まだならば、カーミラは俺に構っている時間はないんじゃ・・・」


「まだだからこそ我が孫はお前のもとにいるのだ。ククク、我が孫は飛び出て行ったあとも使い魔を通して近況だけは伝えてきおったが、あれはなかなかに見ものだったぞ? カーミラの抱えている使い魔は2匹1組のやつでな、片方が見ているものをもう片方がそっくり真似をするのだが、あの孫が乙女のような真っ赤な顔で『すっごく可愛い顔した将来有望な男を見つけた! 絶対に婿にする!』なんて狂喜乱舞していた姿などあれで見納めだろうなぁ。フッファファファファ!」


 ん? ちょっと待て? ってことはカーミラが言っていた我が君とか妻とかは・・・全部本気だったのか!?


「おまえはあれを斬ろうとした時にあれの涙を見て一瞬躊躇したと聞いておる。そのおかげで我が孫は生き延びたわけだが、あれにも孫はいたく感激していたぞ。『可愛くて優しくて将来きっと強くなる人』だと」


 その可愛い連呼は男としてなかなか辛いものがあるのだが・・・そう考えるとなかなかカーミラに悪いことしていたかもしれないな。俺を好きになる変わり者なんてアキぐらいなものだと思っていたんだが。とはいえ、アキを裏切るわけにもいかないしなぁ


「・・・若き竜神よ、我が孫を妻になどとはまだ言わぬ。だが、あいつを泣かせるような真似はしないで欲しい。普段はあんなふうに虚勢を張ってはいるが、本当は王族など向かない子だ。我は祖父としても王としてもあの子を幸せにはできなかった。だから、お前に頼む。今はそばに置いておくだけでいい。それだけで我が孫は十分に幸せそうにしておった。あの子にも普通の幸せというものを与えて欲しい」


『普通の幸せ』か・・・正直、それを言われると辛いんだよな。なにせ、俺自身それを追い求め続けたんだから


「卑怯かもしれないが、今は答えを先送りにさせて欲しい。俺には既に相手がいるが、恋人としてではなくも仲間としてカーミラには幸せになって欲しいというのも偽り無き本音だ。だから」


 それにこれこそ卑怯と罵られそうだが、今のこの状況で仲間内に不協和音を作ってしまうと幸せがどうとか以前に全滅して終わりそうだしなぁ。どっちみち、この戦いが終わってアキを取り戻さないことには話が進まないんだ。今は・・・今だけは甘えさせてもらおう


「うむ、それでいい。竜神よ・・・おお! いかんいかん。そういえばお互い名も名乗っていなかったな。我はファルト=エルプレストという」


「ああ、俺はリュウト=アルブレスだ。リュウトでいい」


「ならば我もファルトと呼ぶことを許可しよう。ククク、答えは確かに先送りを許可したが、エルブレスト家の枠はいつでも用意してやるぞ?」


 あはは、さすがにバンパイア族の最長老にして王というところか。なかなか1筋縄では行かないみたいだな。だが、どうにも普通の幸せってやつから俺は逸脱しているのは気のせいか? まぁ、仮の平和とはいえ300年の幸せがあったわけだから前払いをもらっていたってことなのかもしれないがな

さて、今回はカーミラの秘密大暴露! の回でした。え、えっと~、カーミラさん? 大丈夫ですか~?


カーミラ「お、お祖父さまひどい、酷いです~~! 我の、我の威厳というのが全部・・・」


そんなものが果たしてあったのかは、はなはだ疑問ですが・・・でもアキ以外でリュウトが相手の気持ちに気づいた最初のケースなんですよ!?


カーミラ「う、うむ、そうじゃの。これで我がヒロインレースでも有利に立ったわけじゃ。少々まだあのエルフの小娘には負けておるようじゃが、逆転するのも時間の問題であろう」


肝心のリュウトは『俺とでもいいというぐらいに相手の幼馴染が嫌なんだろうなぁ』ぐらいにしか思っていないわけなんですけどね


カーミラ「そ、そんなことはないぞ!? たしかにあやつはどうにも性に合わないのじゃが、それがなくても我は我が君に惚れているとも!」


それをどうリュウトに伝えるか・・・好意を知ってもらっただけではまだまだだというあたりがリュウトの鈍さなんでしょうねぇ


カーミラ「あれさえなければ完璧なんじゃがのう」


で、リュウトを好きになった理由・・・いろいろありますし、前回のあとがきでも言ってたように将来性も理由の1つではあったようですが


カーミラ「う、うむ」


1番の理由は・・・ずばり顔ですね?


カーミラ「そ、そんなことは・・・ない・・・ぞ?」


まぁ、バンパイアは昔から面食いというのが定番ですからね。と、こんなところで今回はお開き。次回もよろしくお願いしますね~。


カーミラ「べ、別に顔が1番というわけではないのじゃ! そなたらも妙な勘違いはするでないぞ!!?」


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