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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
6部6章『歪められた愛』
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1話 「穏やかな夜を」

 夜、目的地が決まったからと早々に出発するのはあまり芳しくない。まぁ、メンバー的には夜だろうと問題ないのかもしれないが、休息は必要だし俺の体も万全というわけではない。それに


「ふむ、我が君は武器の手入れか?」


 その様子が珍しいのか、覗き込んできたのはカーミラ。実際に自身の爪と牙で戦う彼女には武器の手入れは珍しいのかもしれない。もっとも、彼女もこっそりと隠れて爪の手入れなどをしているのを俺は見逃してはいないが


「ああ、ここまで来ると打ち直しに近いけどな。流石にこのまま戦うと色々と辛い」


 俺の持っている剣はレーチェルに一部とはいえ溶かされてしまっている。いくらなんでも刃の溶かされている状態じゃ斬れんし、耐久性にも思いっきり問題あるからなぁ。幸いにして俺のコピー能力を使えば材料のオリハルコンはいくらでも調達できるから手入れをするには問題ないが


「でも、リュウト君? 武器の手入れも大事なのはわかるけど、ちゃんと食事も取らないと毒よ?」


 そんな俺に小言を言うのは美味しそうに食事をとる姉さん・・・一体どうやって幽霊なのに食べているんだろうな? この人は


「いや、俺は食べなくても基本的には大丈夫だからな。とはいえ、多少は食べておいたほうがいいか」


 食べなくても大丈夫とは言え、食べたほうが体力の回復が早まるのも事実。特にすぐにでも動かない理由の1つが俺の体調なのだから体力回復になることはできる限りやっておいたほうがいいだろう。と思ったんだが


「リュウト! おかわり!!」


 と元気よく皿を・・・だったらいいんだが、鍋ごと持ってきたのはアイ。なぁ、それ優に皿30杯分はあったはずなんだが? 体を動かしている冒険者としては1皿1人前とは言わないが、2皿も食べれば十分なはずなんだがなぁ


「なぁ、我が君? 我らは口減らしを押し付けられたわけではないよな?」


「た、多分な」


 食料もコピー能力で作っている関係上、いくら食われてもさほど問題はないけどな。まぁ料理という形では何故か作れないから、このメンバーだと俺が料理するしかないんだが


「だ、だってボクはちょっと大食いだから1人前じゃ足りないよ。マリアもボクの分の鍋から食べちゃうし・・・」


 そうか。アイは1皿どころか1鍋を1人前と考えていたか・・・一応、この場の4人全員の分。それも少し多すぎるかと思ったんだが1人で食い尽くされて足りないと言われるとは思わなかったな


「あ、とりあえずボクはあと5人前ぐらいお願いね」


 うむ、『5人前』ね。間違っても5皿や10皿分ではなくて鍋で5杯分作ってこいっていう要望だよな、それ? まぁ、ここまでの量になったら3杯でも5杯でも10杯でも作る手間は大して変わらんが、その小さくて細い体のどこにこれだけの量が入るのだろう?


「アイ、種火頼むな」


 水はコピー生成場所を鍋の中にすれば問題なし、食材は風の魔法で随時皮をむきながら切っていけばいい。そして火は俺が起こしてもいいがアイの雷でつけたほうが幾分楽だ


「ん、まかせて」


 自分が食べることになる料理に必要だからなのか、投げ渡した枯れ枝(これもコピー生成したもの)を上機嫌で受け取って、火をつけた状態で持ってきてくれる。さて、じゃあ、さっさと作ってしまうか。勿論、俺や他のメンバーの分もな。量的には明らかにおまけだけど




「そういえばユキはそれ食べて大丈夫なのか?」


「えっ? お兄ちゃんのご飯とっても美味しいですよ?」


 ホフホフと温かい皿の上の料理を吹きながら食べているユキの姿にちょっと心配して聞いてみる。いや、ユキの実力から言って、これぐらいの熱量でどうにかなるとも思ってはいないのだが雪女であることには変わらないしな


「その暖かい料理でも問題なのか?」


「はい、大丈夫です! その、今まで食べたことはなかったですから吃驚はしましたけど・・・なんだか心まであったまるみたいで嬉しいです。特にこっちのスープはなんだか温まります」


 雪女として温まるのがいいのかどうかは判断に悩むが、すごく気持ちよさげな表情でスープ・・・味噌汁を飲んでいるのだから問題ないだろう。まさか、人でいうならば麻薬的な効果が出ているとかそういうことじゃないだろうし


「ねぇ、リュウト君」


「ん、どうした姉さん」


 そんなこんなを見ながらも自分用に作った皿をつついていると近寄ってきた姉さん。こういう真面目な雰囲気の時はレミーとは違って流石に馬鹿はやらない人だから、何か言いたいことがあるんだろうな


「ううん、ただね、守ってくれてありがとうって。ちょっぴり泣けちゃうぐらいに嬉しかったから」


「そうか・・・そうだよな。俺はやっと・・・姉さんを守れたんだよな」


 元々、この力を求めたのは姉さん達を守りたかったからだ。ようやく、これほど長い時をかけて、2度とは取り戻せないはずだった思いを遂げることができたんだな。そう考えると感慨深いものがあるな


「うん、ありがとう。さ、食べ終えたらさっさと寝てしまいなさいね」


「いや、さっきまで寝てたしな。見張りとかもあるだろ?」


「ダ~メ。私はあなたのお姉ちゃんなんだから。少しぐらいは私にも守らせなさい」


 ちょっとおちゃらけて。でも真面目に・・・やっぱり俺はこの人には勝てないのかもな


「うむ、先程も言ったであろう? 夜は我らの時間じゃ、我が君はゆっくり休むがいい」


「そうです! ベッドもご用意していますよ」


 2人の気持ちも嬉しいが・・・ユキ、氷のベッドは流石に勘弁して欲しいんだが


「・・・グリュリュリュリュ~~」


 突然響いた場違いな音に振り向くと、そこにはちょっと顔を赤くしたアイがいて、今のは腹の虫か


「え、えっと・・・リュウトたちが美味しそうに食べているところを見たら、つい」


「・・・あと1鍋でいいか?」


「うん♪ おねがい」


「食べ過ぎて明日動けないなんてことにならないでよ?」


「大丈夫、8分目までは食べてないから」


 そうか、これでまだ8分目以下か。ま、たまにはこんな夜があってもいいだろう。明日からまた厳しく辛い戦いが始まるのだから

以前もリュウトが言っていましたが、この世界では神といえども未来はわからない。ということでこの先に待っている出来事など知りもせずに穏やかな時間を過ごしていたリュウト一行です


リリィ「ふむふむ、時系列的には前章の8話のすぐあとって感じさね」


そうなりますね、少なくてもまだ夜はあけていない時間帯です


リリィ「ま、竜の坊やは実際問題メンタル面はかなり弱いさね。こんな夜もないと持たないだろうさ」


辛辣ながら、なかなか的確なコメントを・・・なんでリリィがゲストの方がまともな後書きになるんだろう?


リリィ「あたしがまともだからに決まっているさね。しかし、あの嬢ちゃんの大食いもすごいものさね。あれに関しては嬢ちゃんがNO1だろうさねぇ」


さすがのリリィもそれに張り合うつもりはないみたいですね


リリィ「当然さね。これでもあたしも女のつもりさね・・・ルーンだったらもっと騒ぐだろうさ」


アキやメイもそうでしょうね。あの辺は太ることにかなりの危機感がありそうです。主に誰かに見てもらうという意味において


リリィ「嬢ちゃんたちも痩せているさけどね。周りもだいたい痩せ型さからねぇ」


そこまで太れるほど裕福な人いませんしね。エルフ族は貧乏種族ですし・・・唯一を言えば昔のアイですけど、食べる割に太りませんしね、彼女


リリィ「嬢ちゃんの体を調べてみたいものさね。さて、そろそろお開きかい?」


そうですね、肝心のお話は次回以降になるわけですし・・・では皆様、次回もよろしくお願いします!

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