8話 「姫・力、そして」
ここは? 目に映るのは満天の星空・・・そうか、俺はあのあとに倒れたんだな。この様子を見ると随分と寝込んでしまったようだ
「う・・・ぬ? 我が君・・・か?」
俺が身動きをするとカサリと葉が音を立てる。どうやら葉と草で簡易ベットを作ってくれたらしい・・・横にある氷のベットは見なかったことにしよう。だが、その音で俺を囲むように座って寝ていた4人の中のカーミラを起こしてしまったみたいだな
「悪い、起こしてしまったか」
「何を言う。本来この時間は我らの時間だろうに・・・それに」
確かに普段は俺に合わせてもらっているがカーミラはバンパイア1族、本来の活動時間は夜か。ユキは分からないが、姉さんも本来はそうなのだろうしな。そして、ウルッと潤む瞳。一瞬カーミラらしくないと考え、首を振る。カーミラの涙は以前も見たことがある。案外このへんもアキと同じで本当の姿は泣き虫なのかもしれない
「それに我が君が気がつくよりも嬉しきことがあるわけがなかろう?」
そう言いながら飛びかからんばかりの勢いで近づいてきたカーミラは急停止をし・・・いや、急停止させられたというべきか?
「あなたは私の弟に勝手に何しようとしてたのかな~?」
笑顔でギリギリと後ろからアームロックの要領でカーミラの首を絞めつけるのは姉さん。ああ、腕が完全に入っているな・・・カーミラ自身の勢いもあって、あれは相当痛いだろうな
「ゲ、ゲホッ、つ、妻が夫の心配をして何が悪いというのじゃ」
「だ・れ・が・誰の妻なのかしら?」
うん、まぁ、あの2人はあのまま放っておいてもいいだろう、たぶん
「あ、あのお兄ちゃん・・・大丈夫ですか? い、一応もう1人の私が頑張っていたので大丈夫だとは思うんですが・・・あ、私もちょっと頑張ったんですよ」
いつの間にかちょこんと隣に座っていたユキに微笑みつつ頭を撫で回す。ちょっと吃驚していたみたいだが、心地よさげに目を細めているから問題ないだろう
「ああ、大丈夫だ、っぅ!」
安心させようと立ち上がろうとして、一瞬の痛みに顔をしかめる。やれやれ、ユキだけでなく4人ともそんな顔をしないでくれよ
「えっと、ボクがこんなことを言う資格ないかもしれないけど、本当に大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。それと資格がどうとかなんて言って欲しくないな。少なくても俺はアイのことを大切な仲間だと思っているんだから」
うん、だからその涙目は本当に勘弁してもらえるとありがたい
「ふむ、まぁ、体が痛むぐらいならば我が君ならばすぐ癒えるじゃろう」
なんか俺と姉さんの方をチラチラ見ながらなのが気にはなるが・・・今、気にするべきは
「それじゃ、早速教えて欲しいんだが・・・」
「そ、そのじゃな! 我がバンパイア1族の姫であるというのは本当なのじゃが、別に悪意があって隠していたわけではなくてじゃな」
いや、それは比較的どうでもいいんだ。言うのはなぜかやめておいたほうがいいと本能が言っているので言わないが
「いや、それじゃなくてレーチェルが混ざり物の神というやつをな」
「ぬっ、それか? 此度のことに関わりがあるとも思えんのじゃが、あれは先代の竜神の血を飲んだとかいうある意味において竜と人の中間的な存在じゃ。人の神程度ではあれに勝ち目はないじゃろうなぁ。しかし、我が君ならばとっくに知っておると思っておったぞ」
なるほどな、確かにそれぐらいならばありえそうな話だ・・・ん? っていうことは俺の血を飲んだアキも同じってことなのだろうか? まぁ、俺の竜の血はだいぶ薄いわけだが
「色々と重大な秘密が隠されていそうな話だが・・・今回のことに確かに直接は関係なさそうだな。じゃあ、アイ?」
「な、何かな?」
俺の呼びかけにビクッと体を震わせながらアイは答える。そこまで恐々とする必要はないのだがなぁ
「冥王の目的、そしてここにあったもの・・・どんな小さなことでもいい。何か聞いていないか?」
「えっと、ごめん。目的は全くボクにもわからない。でも、ここに封じられていたものは・・・『終焉を告げるもの』、そう、冥王は言っていた」
『終焉を告げるもの』、話半分で聞いたとしてもとてつもなく厄介そうな封印物だな、それは
「物騒な名前ねぇ」
「はい、私もそう思います」
姉さんとユキも同じ感想を持ったようだが・・・カーミラ?
「どうしたカーミラ?」
「う、うむ・・・いや、大したことではないのじゃがな。その名前、どこかで聞いた覚えがあってのう。ムム、あれはどこでじゃったか?」
いや、それは思いっきり大したことだ。どうにか思い出して欲しいものなんだが。他の3人も黙ってカーミラを見ているためにカーミラも結構真剣に思い出そうとしているし
「ぬぬぬ、そうじゃ! 確か我のおじいさま・・・こほん、バンパイア族の王がそんなことを言っておったきがするの」
「カーミラ、ならば・・・」
「うむ、案内しようではないか。我らバンパイアの王都へと。ここからならば、オルグの砦を超えてゆくのが一番早いの」
どうやら、次の目的地が決まったようだな・・・
さて、今回はいろんなことがちょっとだけ明らかになりました。そして
リデア「大事なことは兄さんが次に行く・・・いえ、通っていく場所ね」
そういうことですね。覚えておられるでしょうか? オルグの砦・・・そこは前章の最後でリデアが派遣された場所ですね
リデア「つまり次章でワタシが出ることは確定的なのよ! ・・・て、貞操の危機だけど」
なにせ、1章分挟んでますからね。果たして未だに無事なのかどうか・・・
リデア「ぶ、無事に決まっているでしょ!? っていうか無事だって言いなさい! ねぇ!!」
さぁ、どうでしょう? というわけで次回はおなじみになった感のある、操られている人サイドのお話です。お楽しみに~♪
リデア「い、いや~~~! 誰か嘘だって言いなさいよ~~~!」




