1話 「朽ちた剣」
星々がきらきらと輝く中、聞こえるのは虫のコーラスとリューくんとあーちゃん・・・恋人たちの甘い語らいだけ・・・。
パコ~ンとわたしの頭を叩くものがいる。犯人は目の前のあーちゃんだ!
「いったいよ~。」
「誰が恋人だ! 何が甘い語らいだ!・・・そうできたらどんなにいいか。」
「ん? 何か言った?」
「何でもない!」
こうして夜は更けていく。
翌朝
レミーに襲われて大怪我をおったリュウトは結局3日ほどまともに動けなかった。・・・本当はもっとかかるはずだったんだけど、レミーが自分が回復魔法を使えることを思い出して治してくれたのだ。っていうか自分の出来ることを忘れてるってどういうことだろう? まぁ、私もうっかりしてたんだけど・・・けっして看病したいがゆえに意図的に忘れてたんじゃないわよ!
「さて、じゃあ行くとするか!」
三日間ゆっくり寝ていたリュウトは元気一杯・・・有り余ってるって感じね。
ん? そういえばこの辺は・・・
「リュウト、ちょっと付き合って欲しいのだが・・・。」
・・・って! 間違えた~~!付き合って欲しい場所があるのだが・・・だったのに~! あんな言い方じゃリュウト勘違いしちゃうよ!・・・勘違いされても・・・いいかな?
「ん? アキがそんなこというなんて珍しいな。・・・どこに行けばいいんだ?」
・・・リュウト、あってるんだけど間違えてるって言うか・・・。はぁ、リュウトだもんね。
「いやな、ここら辺に先代の竜神様を祀った神殿があるはずなのだ。そこには先代が使っていた剣が納められていると聞く。」
「先代が剣を? 竜族も剣を使えるのか?」
?・・・ああ! そういうことね。
「純粋な竜族は人の姿と竜形両方を取れるのだ。先代は人の姿を主にとっていたという。」
「なるほどな。竜神が使っていた剣か・・・探してみる価値はあるな。」
「そうだろう? ゆえに共に探して欲しいのだ。・・・レミーはすまぬが待っていてはくれぬか?」
「え~! わたしも一緒に探すよ?」
「そうだな。皆で探した方が早いな。」
と言うわけで結局皆で大捜索。・・・当然といえば当然だけどね。
「ねーねー、ひょっとしてさっきリューくんと二人きりになりたかったりした?」
・・・今更気づくのね。まぁ、レミーが気づいていてもリュウトが気づかないから無意味だった気もするけど・・・。
「それに付き合って欲しいって・・・リューくんが勘違いしないかなって期待しなかった?」
!?・・・本当にこんなことばっかり鋭いのね。なんでレミーは気づくのにリュウトは気づかないのかな?
「アキ~、レミ~、神殿見つけたぞ~!」
「リュウトが見つけたみたいだな。・・・ほら、いくぞ。」
神殿はかなりの長期間放置されてきたのだろう。内部は見る影も無く崩壊していた。
そして、俺たちの目的の剣は、神殿の最奥部の祭壇に祀られていた・・・のだが
「いくらなんでもこれでは何も斬れないな。」
「剣のことは良くわからないが、研いでも駄目なのか?」
「いくらなんでもここまで朽ちてしまっていては・・・かってはどれほどの剣であったかはわからないが・・・。」
そう、時間の流れはこの剣の力を完全に奪い去ってしまったようだ。今のこの剣は何かを斬るどころか思いっきり振っただけで折れてしまいそうだ。
「そうか・・・残念だ。先代が『究極の魔剣の一つ』とまで言った剣だ。期待していたんだがな。」
アキは本当に期待していたんだな。表情からありありと分かる。・・・ん? 魔剣??
「聖剣じゃないのか?」
「聖剣とは教会が祝福した剣と言う意味だ。剣そのものの聖邪を問うものではない。そもそも魔剣とてマジックソードと言う意味なのだぞ。そなたも剣士ならこれぐらいのことは覚えておくといい。」
うっ! 耳が痛い話だな。
「ま、まぁ・・・どの道この剣は使えないよ。さぁ、帰るとしようか?」
失態をごまかす為・・・と言うのもあり、早々に剣を置き帰ろうとしたのだが、祭壇に戻そうとしたその瞬間に溢れた光を認識したとたんに俺の意識は暗転した。
え~、この章はある意味最初のキーポイントですね。
リュウト「究極の魔剣か・・・別に悪いものではないんだよな?」
作中のとおりですね。聖剣、魔剣の考え方は西洋のものです。そもそも日本には聖剣はありませんし・・・。
リュウト「伝説では大概英雄が持つのは聖剣が多いけどな。」
有名な伝説の場合、教会の権威付けで後から聖剣にすることが多いみたいですね。かの有名なアーサー王のエクスカリバーさえも原典では魔剣と書かれています。
リュウト「なるほどな・・・『究極の魔剣』・・・その力がどれほどのものか、そもそも使えるのか?」
それは次回以降のお楽しみですね♪




