5話 「優しい記憶」
「シャインレイン~~~♪」
ゴブリンの群れに降り注ぐ光の雨。・・・あの中にはリュウトがいるんだってば~~~!!!
「な、なんだ!?・・・ぐわぁぁぁああ!」
い、今のリュウトの声だよね?
「さっすがレミーちゃん! 見事に全滅させたよ~! ついでに出口もはっけ~ん!」
レミーの声なんて聞こえない。リュウトは・・・リュウトはどこ?
「リュウト~、お願い返事して~~!・・・・どこにいるの~~!!」
半泣き状態の私がゴブリンの死骸の山の底から気絶したリュウトを発掘するのはそれから10分後のこと・・・。
「ん?ここは??」
「気がついたか!?・・・リュウト、そなたはレミーの無差別攻撃に巻き込まれたのだ。」
「ご、ごめんなさい・・・。」
つまり今日一日だけで二度レミーに殺されかけたってことか?本来なら怒るべきなんだろうが・・・レミーの様子を見る限りすでにアキにそうとう絞られたんだろう。
「まぁ、すんだことはしょうがないさ。これからは注意してくれよ?」
「うん・・・ありがとう、リューくん。」
「まったく、そなたは本当に甘いな。」
「さて、いつまでも寝ているわけにはいかないな・・・くぅ!」
「こ、こら! 無理をするな!! 今しばらくは起きるなど無理だ。大人しく寝ておれ。」
さすがのリュウトも無防備にレミーの魔法を受けて、あれだけのゴブリンに下敷きにされたのは効いたみたい。しばらくは起き上がれないわね。・・・ん? じゃ、じゃあ、私が看病してあげようかな♪
「ほ、ほら!リュウト・・・口をあけるのじゃ。」
私は今、リュウトに食事を取らせている。勿論、膝枕付きよ。こ、これっていわゆる恋人同士の・・・は、恥ずかしいけど嬉しいよ~!
ホントはね、私の手料理を食べさせたかったんだけど、リュウトが何故か頑なに拒否したのよ。やっぱり・・・初めのあの料理の失敗の所為? ちゃんと、人間が食べれるものさえわかっていれば大丈夫なのにな~。
ん? じゃあ、それはレミーが作ったのかって? あの子が作れるわけ無いじゃない。あの子・・・料理にトリカブトなんて入れようとしてたわよ! あの子じゃなければ本当に毒殺を狙ってきたと思うところね。
じゃあ、誰が作ったものなのかっていうと・・・以前、リュウトがなんかあったときのためにって作っておいた保存食なのよ。美味しいは美味しいんだけどね・・・。
「あのさ・・・俺も自分で食べることぐらいはできると思うんだが?」
「駄目だ。そなたには早くよくなってもらわねばな・・・こんな時ぐらい甘えることを許してやろう。」
私だって恥ずかしいのよ? でもね・・・すっごく嬉しいの! 幸せってこういうことを言うんだなって感じ! ・・・リュウト?
「どうした、リュウト? やはり私では駄目か?」
リュウトの顔が凄く寂しいそうに遠くを見ていたことに気づいた時、私の心は不安で一杯になった。もし・・・私なんかにはやって欲しくないっていわれたら・・・私どうなっちゃうんだろう?
「あ、いや・・・そういうわけじゃない。ただ・・・思い出したのさ。昔、風邪を引いたときに・・・同じように言われながら看病されたなって・・・。」
それってつまり・・・
「マリア殿か・・・。すまぬ、辛いことを思い出させてしまった。」
リュウトはやっぱり彼女のことを引きずっている。当たり前だよね? まだ、それほど時間は経っていないのだから。
「・・・辛くなんかないさ。いや・・・辛く思ってはいけないんだ。これは姉さんがくれた優しい記憶だから。辛いなんていったら怒られちまうよ。忘れるつもりも無いぞ? いつかきっと笑いながら話せる日が来るからな・・・。」
リュウト・・・本当はまだ辛いんだと思う。でも・・・
「そうだな。マリア殿ならあの世からでも怒鳴り込んできそうだ。・・・忘れる必要はない。いつか・・・私が・・・。」
「ん? 私が・・・なんだ?」
「いや・・・なんでもない。気にしないでくれ。」
「? 変なアキだな?」
いつか私が・・・マリアさんとの思い出全部貰うから。マリアさんの思い出の上に私の思い出を上書きしていくから・・・。忘れて、なんて言わない。でも、思い出すときは半分っこ・・・それならきっと辛くないよね? そうすれば、いつかマリアさんのことを思い出しても辛くない日が来るよね? そして・・・あなたの心の傷がいえてもマリアさんだけの思い出になんてさせないわよ?
こうしてレミーの引き起こした騒動はいったん幕を閉じる。・・・だが彼女の起すトラブルはまだまだ序の口であることをリュウトもアキも知らないのだった。
とりあえずリュウトは死亡フラグは回避したようです。えっ? 何がフラグかって・・・勿論、アキ(orレミー)の料理です! しかし、女性陣が二人して作れないとは^^
マリア「由々しき事態ね。やっぱりリュウトくんは私が・・・。」
・・・いや、あなたも作れないでしょ? 幽霊なんだから・・・。
マリア「成せば成るわよ!! まだまだアキさんには負けないんだからね~!」
死んでから張り合わなくてもいいのに・・・。とりあえず、後は任せたぞ~、リュウト!
リュウト「やれやれ、役割は次章の紹介だったな? アキに連れてこられた神殿の中に眠っていたものは伝説の? 竜神伝説第5章「究極の魔剣」竜神の力はキミと共に!」




