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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
6部3章『希望と絶望の狭間で』
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8話 「操られし者の夜」

 

「そうですか、わかりました。では後はコーリン殿と交代して、ゆっくりとお休みください」


 偵察に出していたママナからの報告を受け、私は思案する。どうすれば冥王様の利益を最大にしつつ、リュウトさんを打ち取ることができるのか・・・正直、リュウトさんは今まで仲間だったわけで、そこに対する蟠りがないというわけではない。ただ最優先は冥王様という絶対のものがあるというだけ


「うん・・・ねぇ、メイ?」


「なんでしょうか?」


 冥王様にご報告するための書類を作りながらママナの言葉にも耳を傾ける。なぜでしょう? この現在カーミラと行動しているという文を書こうとすると胸に痛みのようなものが走るのは


「なんで冥王様は攻めていかないのかな? 居場所がわかっているんだから、メイならば急襲するのも罠を仕掛けるのも楽にできるよね?」


「それは私も知りません。ですが、ママナ殿? 勘違いをしてはいけません。私たちは冥王様のお考えに沿って行動をするのです。冥王様が現在、主力部隊をお動かしになるおつもりがないのでしたら、その上で利益最大になるように動くのが私たちの仕事です」


 正直手ぬるい感はあります。リュウトさんの力を誰より知って・・・いるのはアキやアシュラさんかもしれませんが、私とてそこいらのものよりは熟知しています。このままでは戦況をひっくり返されるかもしれない。その前にリュウトさんを始末するためには・・・!?


「くぅ!」


 突然、襲ってきた頭が割れるような痛みに机の上に常備している冥王様からいただいた薬を飲み込む。たしか3錠ぐらいでいいと言われましたが・・・今何錠飲み込んだのでしょう? あまりの痛みに数えることさえできませんでしたが痛みは収まったので問題はないのでしょう


「メイ、大丈夫? 私も偵察のあいだに何回か、それ体験したけど、すごく痛かった」


「問題ありません。冥王様もこのお薬さえ飲んでいればだんだんと痛みを感じることもなくなるとおしゃっていましたから。さ、ママナ殿はそろそろ休んでください。休息後のお仕事に支障があるといけませんので」


 半ばママナを追い出すようにし、私は水を口に含む。頭痛はほとんど収まったけど、原因不明の吐き気といらだちはまだ収まってはいない。この程度の報告書を作るのにこれほど時間がかかるとは情けないことです




「冥王様、ご報告に上がりましたが、よろしいでしょうか?」


「・・・いいだろう、入れ」


 ノックをし、声をおかけしてからしばらくして返していただいたご返事。少々疑問に感じながらも扉を開けるとそこにいたのは


「・・・アキ?」


 何故か、冥王様のベッドの上で裸で倒れているアキを発見する。状態を見る限りはその・・・そういうことをやっていたわけではなさそうなんだけど


「・・・伽を命じたところ、裸になったところで苦しみだして気を失ったのだ」


 大して興味がなさそうに・・・いえ、その現象にわずかな関心とほんのわずかな落胆を交えた様なお声。しかし、冥王様の命ひとつまともにできないとは、つい先日まで女王をやっていたのになんて情けない。これが私だったら


「あぅ!」


「ふん、貴様もか。薬ならばそこにあるから飲むといい」


 あ、ああ・・・早く、早く飲まないと・・・冥王様から指し示して頂いた場所にあるビンに入った薬を震える手で取り出して飲み込む。しばらくすると、やはり吐き気と苛立ちは残りますが壊れてしまうのではないかと思うほどの頭痛は収まってきて


「この娘といい貴様といいなかなか抵抗してくれる」


「い、いえ、私もアキもそのような・・・」


「気にするな。それは貴様らが良き素材だということの証左だ・・・こうやって薬を飲み続ければ、そう遠くないうちに伽もあやつの命を奪うのも嬉々としてできるようになろう」


 前半のお言葉はよくわかりませんでしたが、後半のお言葉は嬉しく思います。ですから、私は笑わなければいけません。たとえ、胸の奥にチリチリとした違和感があったとしても




「ふ~ん、なかなか面白い事になっているわねぇ」


「出歯亀とはいい趣味をしているさね、ルーン」


 冥王なんて大層な名前を名乗っている坊やが占拠したエルファリアを覗いていたところに背後から聞こえる声。まったく、どうしてこの子はいつも背後から出てくるのかしら?


「あら~ん? それがサキュバスに言うことかしらん?」


「あたしにまで変な言葉遣いをするんじゃないさね。ま、あんたがそういうことが好きなのは知っているさけどね・・・あの坊やのために助けなくていいさね?」


 ふふ、そういうところはまだ女の子なのね、リリィちゃんは? まぁ、恋すらまだしたことのない純情娘だから仕方ないのかもしれないけど


「膜1つぐらいどうってことないでしょう? ここで夜の技の1つや2つぐらい覚えておいたほうが竜の坊やも喜ぶかもしれないわよ」


「はぁ、これだからサキュバスは・・・。まぁいいさね。で、肝心のあの坊やの方はどうなのさね?」


 もう、どういういう意味かしら? まぁ、後半の方は多少なりとも竜の坊やを心配しているのでしょうけどね


「今のところ順調みたいよ。まぁ、光の女神様よりは私たちの方が自由に動けるし、いざとなったら助けに入ることも検討するけど・・・あの程度のやからに苦戦はして欲しくないものね」


「もっともさね・・・自分が傀儡であることさえも気がつかず、世界を操っているつもりになっている愚王程度に苦戦するようじゃ困るのさね」


 あらあら、言葉は辛辣だけど、本心はどうなのかしらね? さ、竜の坊や? 私たちに見せてみなさい。あなたと竜神の本当の力を・・・そして、本当の絆の力というものをね

ということで、今回は操られているメイ視点の話でした・・・このぐらいならば健全だと言ってもですよね?


アキ「ほう? 言いたいことはそれだけなのか?」


ビクッ!? い、いや、今ならな操られている方なわけだし・・・あれ? なんでその状態であとがきに??


メイ「そんな言葉を辞世の句にするとは・・・やはり、どうしようもない人なのですね、あなたは」


ちょっと待って? ひょっとして正気モード? なんで?


アキ/メイ「後書きじゃからだ(ですから)!!」


そ、そんな!? え、えっと、別に悪気があったわけでは・・・


アキ「悪気なくあれを書いておったならばもっとタチが悪いのじゃ~~~!!」


メイ「さぁ、今回もあなたのためにお部屋を用意させていただきましたので」


い、いや、その部屋はもう勘弁して欲しいのですが? ヒグッ!?


メイ「さぁ、とりあえず邪魔な作者殿は気絶させましたので女王様、次回予告を・・・」


アキ「うむ、カーミラを『部下』に、そしてマリア殿を引き連れてリュウトが向かうはバンパイアの隠れ里。じゃが道中はそう楽なものではなく? 次章 竜神伝説第6部4章『竜神と雪女』リュウト? その女は何者なのじゃ?」


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