7話 「そして三人に」
「というわけで持ってきたんだが・・・」
早速帰ってきた俺の神殿で姉さんに事の成り行きを説明したのだが・・・問題はこれからどうするかだよなぁ
「ん? その剣で私の呪縛というかここから長時間離れられない体質を斬れるんでしょう? だったら、早くやってほしいんだけど?」
「いやいや、剣だぞ? たぶん姉さん自身は(斬ろうと思わなければ)斬れないと思うんだが、その刃物で斬りつけるということに対してだな・・・」
ん? 姉さんがニコニコ~って機嫌よさげに近寄って・・・いや、俺は何回同じミスをすれば気が済むんだ!? 姉さんがあんな笑顔で近寄ってくるときは
「このお馬鹿!」
とやっぱり思いっきり殴られる。というよりもゲンコツとアッパーが同時に綺麗に入ったんだが。なんで、この人は今の俺にまで的確にきっちりとダメージを入れてくるんだろう。まぁ、なんとなく避けることも防御することもできない雰囲気というのがあるにしてもだが
「あのね、今更そんなことで怖がると思っているの? お姉ちゃんを馬鹿にしないで欲しいものだわ。それに・・・初めの一回をハナやケンタにするわけにはいかないでしょう?」
本当にこの人にはかなわないなと心から思う。斬り合いなんて何度となくやり、何度となく斬られてきた俺だって痛いのは好きじゃないし、出来ることならば斬られたくなどないものだ。はっきり言って嬉々として自分にダメージを与えらえる者や攻撃を待ち望むアシュラのような奴が例外中の例外なんだ
だから、当然姉さんだって怖いはずなんだ。実際に普通ならば気がつかないかもしれないけど、ほんのわずかに不安げに瞳が揺れていたんだ。それでもやらずに先に進めないならば一番先に完全に安全であることを証明するのは自分だと
「本当に姉さんらしいよ。それじゃあ・・・」
「あ、ちょっと待って? 斬るなら首以外にしなさい。流石に首はちょっとね~」
あの時、コクトに止めを刺されたのは首だったからなぁ。その前の心臓への一撃でただの人間だった姉さんはつんでいたとはいえ、さすがに生前の自分の命を奪った箇所への一撃は嫌だったか
「当然。首を斬る事が幽霊の致命傷になるのかどうかは知らないが、俺も姉さんのそんなところは斬りたくないし」
久しぶりに笑った気がした。そんな俺を見てぷく~とふくれてみせた姉さんだったが、ひょっとしたらそんなところも俺を気遣った計算ずくだったのかもしれないな
「ふむ、これで当面の問題は片付いたわけじゃが」
結局何の問題もなく体質だけ斬れることが判明したので、続けてハナとケンタも斬った後のカーミラのセリフ。とりあえず、今考えることはあと2つだな
「そうねぇ。私がついていくことは決まっているけど、ハナやケンタまで連れて行くのはお姉ちゃん反対だなぁ」
そうだな、ハナやケンタまで・・・ちょっと待て?
「姉さん、いつ姉さんがついていくことが決まったんだ?」
「初めから」
「俺たちの旅はけして安全では」
「初めから!」
「いや、だからな」
「は・じ・め・か・ら!!」
「・・・わかった」
結局、俺は神になろうがどれだけ強くなろうが姉さんにはかなわないということらしい。カーミラからは呆れたような、姉さんに対しては睨みつけるような視線を感じるんだが、姉さん全く堪えてないし・・・いくらなんでもあれに気がついてないということはないよな? あの図太さが羨ましいよ
「じゃあ、姉さんがついてくるのは100歩譲って認めるとして」
「はい♪ もう一回ね」
・・・姉さん、その笑顔でアームロックはやめてほしい。結構、真剣に痛いから
「姉さんがついてくるのは歓迎するとして、本当にハナやケンタをどうするべきかだな」
まぁ、本人たちは幽霊というのは精神年齢が変化しないものなのか、よくわからないって顔しているのだが
「うむ、だがここはもとより、どこに隠しても同じではないのか? いるのだろう?」
「・・・たぶんな」
そんな言い方をするということはカーミラも感知できていないということなんだろうな。ママナかコーリン、少なくともどっちかは俺たちの動向を探っていると見ていいだろう。リュムさえいれば探知することも可能なのだが、無いものねだりをしてもな
「ならばバレていてもさほど問題のない場所に隠すしかあるまい」
「いや、そんな場所がないから悩んで・・・」
「我らバンパイアの隠れ里に隠せばよかろう?」
カーミラの発言に俺も、あの姉さんさえもぴたりと止まる
「ねぇ、それってバンパイア1族まで危険にさらすってことだけどいいの?」
「なに、今更じゃろう。どうせ、このまま冥王を放置すれば時間の問題じゃ。そもそも、我らの動きがわかっていながら、我らが秘宝を探している間に冥王本人はおろか手下の1人さえもここに送り込まれておらぬ。つまりは、今の時点では冥王も動くに動けぬ理由があるということだ」
なるほど、確かにな。姉さん達どころか俺たちだって今、冥王に攻め込まれたら正直厳しい。ここでお前を倒せば~なんていう展開どころかリュムがない以上は俺とて操られない保証はないというのに何故攻めてこない?
「今、それを考えていても仕方ないわね。カーミラさん、バンパイアの里は場所がわかったからといって、そう簡単には攻め込まれないと見ていいのかしら」
「うむ、そしてこういうのも悔しいものがあるが、里に残っている未熟者達でも人間・・・幽霊の幼子2人を連れて逃げる程度のことはできよう。冥王本人やそれに相当するようなものに攻め込まれなければな」
しばらくの沈黙。だが、それは重い空気故ではない。単純にそれぞれがそれぞれの思考をし
「よし、ならそれで行こう。向こうの動きは確かに不気味だが、奴らに考え事があるというのならば、こちらはそのあいだに状況を整えるだけだ」
「うんうん、ちゃんとリーダーできるのね、リュウト君も。大丈夫、お姉ちゃんも付いているんだから!」
「そこで我を抜かすでない! コホン、ではもう1つの考え事も必然的に決まりだな」
ああ、次の目的地はバンパイアの隠れ里だ!
こうして旅の仲間はもう1人(隠れ里につくまでは3人)増え、次の目的も決まり・・・でもまだまだ先は長そうですね
マリア「確かにね~。でもお姉ちゃんがいれば何の問題もないのだ~~!」
・・・久々の活躍の予感に大はしゃぎのマリア姉のようです。いや、この人って本編中では別に活躍シーンは
マリア「そこ! お姉ちゃんはお姉ちゃんだっていうだけで価値があるの!」
・・・ああ、やっぱりメイの同類なんだな、この人。そして、姉は強し。ママナでさえリュウトには強いもんなぁ
マリア「ママナちゃんをお姉ちゃん扱いするのは微妙なんだけど、姉が強いっていうのはその通りよ! で、作者くんはこっちね?」
へっ? あのどこへ連れて行くおつもりで?
マリア「ん? この先の展開についてすこ~しお話を・・・拷問部屋で」
またですか!? いい加減に・・・誰か~た~す~け~て~~~!!




