4話 「風の鼓動」
「そもそもこんな閉鎖空間で爆発魔法を使うなど・・・そなたは何を考えているのだ!」
あれから30分、アキのお説教はまだ続いている。さすがの俺もあやうく全滅の危機だったと聞いて冷や汗が流れたが、魔法に疎い俺では注意もしにくい。ここはアキに一任するとしよう。
「いいか、これからはもっとよく考えて行動をするのだぞ!」
「は~い。」
お、どうやら終わったようだな。
「アキ、お疲れ様。」
「いや、これは私が適任だからな。・・・レミーはどこに行った?」
・・・目を離したのはほんの一瞬だぞ? いくらなんでも・・・
「リューくん! あーちゃん! 変なレバーを見つけたよ! エイッ!!」
ガラガラガラ・・・と背後で響く音。うん、洞窟の入り口が鉄格子でふさがっているな。なんでこんな仕掛けがあったのかは分からないが、とりあえず・・・
「「おまえ(そなた)はなんでそういうものを触るんだ!」」
「え~、だってレバーがあったら普通・・・」
「「触らない!!」」
「ぶ~!」
不満だって言うのを全身で表すレミー。悪いがさすがにこれを見逃しはしないぞ?
「はぁ、とりあえず元に戻しておけ。罠の類だったらもう遅いけどな。」
そして結局入り口が開くことは無く、俺たちは出口を探す羽目になるのだった。
「えへへ~、なんかこうしてると冒険って感じで楽しいね。」
こんな事態を作ったのが自分だってことを自覚しているのかいないのか(たぶんいないわね)能天気にレミーははしゃぐ。
「そなたさえいなければ無かったはずの冒険なのだがな。」
「えへへ、じゃあ、わたしのおかげだね!」
皮肉にもなっていなかった皮肉さえも通じない前向き(?)さ加減。ある意味人生を楽しめる性格ね。
「ねーねー、あーちゃんの気持ちは分かったけどさ、リューくんはなんて思っているんだろうね?」
・・・顔から火が出るってこういうことかしら? いきなり振られた話題に顔が真っ赤になるのが私にもわかる。
「わ、私が知るか!」
むしろ私が聞きたいぐらいよ!
「う~ん、じゃあ本人に聞いてみるね?」
えっ?・・・ちょっとレミ~!
「ねーねー、リューくんはあーちゃんのことどう思っているの?」
れ、レミー・・・いくらなんでも直球過ぎじゃあ・・・。
「ん? アキか? 博識で頼れる仲間だな。」
・・・やっぱり仲間っていうだけなんだ。でも頼れるって言ってくれた! まだ望みはあるよね?
「ぶ~! なんで仲間なの~~!」
「お、おいおい、何を期待してたんだ?・・・アキ! レミー!」
! リュウトが何かに気づいたみたい。・・・これは魔物の気配! それもかなり多い!
「かなり多いな・・・。」
私の言葉にリュウトがうなずき返してくれる。それだけでも・・・嬉しいな。アレ? レミー、何をしようと・・・。
「お~い! わたしたちはここだぞ~~~!!」
「「そなた(おまえ)はなんでわざわざ敵を呼ぶのだ(んだ)!!!」」
声をそろえて叫ぶ私たち。・・・結構息が合ってる?
ドドドドド・・・地響きがするぐらいの大群で押し寄せてきたのはゴブリン。まだ、この程度の相手で助かったと言えるけど、数が数だけに厄介だ。・・・リュウトなんかすでに大軍の中に飲まれちゃって見えないし・・・。
「面倒だ! 一気に片付ける・・・フレイム!!」
火の基本技その3フレイム・・・火炎放射っていうとイメージがつくのかな?
「あちちち! アキ!! 俺にまで当たってる!!!」
「す、すまぬ!」
い、いっけっな~い! リュウトがあの中にいること忘れてた。見えないリュウトを避けながら範囲魔法は使えないわね。なら!
「あーちゃん危ない!」
私に飛び掛ってきた二匹のゴブリン。一匹はレミーが射抜いたけど、もう一匹はそのまま飛び込んでくる。・・・私が接近戦ができないとでも?
「ぐぎゃぁぁぁ!」
なんともいえない断末魔の声をあげるゴブリン。さすがに杖で叩くのは折れるとまずいから出来ないけど、こっちならむしろ叩く専門だしね。
「あ、あーちゃん・・・それは?」
? レミーの顔色が悪いわね。あ、そっか! レミーは知らないのね。私もお姉ちゃんに教わるまで知らなかったし。
「言っただろう? 私はエルフの女王なのだぞ。女王なら鞭ぐらいは使えなければいけないそうだ。」
結構便利なのよね。私の腕力でも振り回せるし、射程も長いんだもん。・・・お姉ちゃんがくれたものの中で一番役立ってるかも!
「ぐぴゃぁ!」
一匹、また一匹とゴブリンたちを切り伏せていく。低級な子鬼の彼らには言葉は通用しない。本来、彼らの住処に踏み入ったのは俺たちである以上気は進まないのだが、ある程度数を減らさねば切り抜けることも出来ない。
だが、何故だろう?・・・さっきから体が熱い。脳裏にちらつく一つのイメージ・・・それは風?
そのイメージそのままに・・・剣を振り下ろす。すると! 意図せずして生まれた風の刃がゴブリンたちを切り裂いていく。・・・これは風の基本技エアブレイドって奴か?
なるほど、アキの言ってた『自分の属性は自身が一番知るもの。・・・魔法を使えるような状態になればおのずと分かる』って言うのはこういうことか。俺の属性は風と言うことだな。
俺には少し前より魔法を使えるようになったら試してみたいと思っていたことがある。あの闇黒騎士ヘルが使っていた魔法剣とやらだ。・・・俺が使ったらどうなるのだろうか?
「はぁぁぁぁ・・・はっ!」
アキならばそんな掛け声はいらないとでも言いそうだが、一念を込めて振った剣より生じたのは3本の風の刃。エアブレイドよりは数が多い分便利って言う程度だろうか?
「名づけるなら・・・。『竜爪閃』というところかな?」
正直に言って、俺はまともに魔法を使えたことに感動していた。だから気づかなかったんだ・・・自分の身に迫っていた危険を・・・。
風が走る・・・はっきり言って魔法としての質は低い。効率なんてなっていないにもほどがある。でも、リュウトの魔法は今まで押さえつけられていたものが開放された・・・そんな清々しさがあった。それに・・・リュウトの属性風だったんだ~! やっぱり私とリュウトは運命で結ばれてるのよ~♪(間幕劇場『アキの魔法講座』参照)
「リューくん、さっすが~! わたしもやるよ~♪」
・・・って! ちょっとレミ~!!!!
「シャインレイン~~~♪」
魔法を使えるようになって喜ぶリュウト、女王だからと言う理由で鞭を振り回すアキ(元凶はメイ)、そして我が道をひたすら行くレミー・・・このパーティ大丈夫だろうか?
レミー「わたしがいれば大丈夫だよ~♪」
いや・・・キミが一番の不安材料だと思うが・・・。
レミー「え~! そんな事ないよ~!」
・・・言って理解するならアキたちも苦労はしてないか・・・。この章は次で最後、リュウトに襲い掛かる危険とは!?・・・バレバレですけどね^^
レミー「じゃあね~♪」




