3話 「涙と罪」
アキの炎に燃え続けるアンデットの間を駆け抜け、俺はただ冥王の元へと走る! 相手がアキの先祖だろうとなんだろうと関係ない・・・今この平和を乱すものならば、一手で持ってけりをつけるのみだ!
「歴史の闇の中に戻ってもらうぞ! 冥王!!」
「それは御免こうむる・・・そして、彼女ごと斬れるのかな?」
俺の物とは違い、体の前面も覆うマントをひるがえすとそこにいたのは1人の少女・・・いや、見覚えのある顔だ。もう、決して会うことのない顔。そして、あの頃と不自然なほどに変わっていない顔
「久しぶりだね、リュウト・・・それとも君はボクのことなんて忘れちゃったかな?」
あの頃と全く変わらない声。だが、纏う雰囲気は・・・その表情さえもあの頃には考えられない邪悪さがある。それでも、俺の剣は彼女に触れる前に止まった
「な、何故、君がここに・・・?」
彼女は人間だったはずだ! 300年、生きているはずがない・・・ましてあの頃と全く変わっていないなどあり得ない! 理性は偽物だと叫ぶ。それでも動けないのは俺の弱さか? いや、認めよう。彼女が本物だという事を、理性が否定しようとも感覚が確かに教えてくれる
「何故? 君が助けに来てくれなかった結果じゃないか。ボクがここにいるのは・・・死ぬことさえもできなかったのは!!」
叩きつけられる怒気。いや、これは憎しみというべきだろうな。言うべき言葉はいくらでもある。おそらくは冥王に囚われていた彼女・・・アイ。そんなことは知らなかったと。何度となく様子を見に行ったが見つけられなかったと。だが、それが何の言い訳になる? もっと、きちんと探す気になれば竜神剣の能力を使っておけばよかった。アイが呼び笛で呼ばないのならば俺に会う必要がないのだろうと自己完結などしなければよかった。そう、今俺が何を言っても彼女の身に起こったことは何1つ変わらないのだから。そして
「リュウト! 足を止めるな!!」
実際に俺が足を止めていた時間などほんの数秒・・・だが今の俺たちのレベルだと、その隙はあまりに大きすぎる。いや、先頭の俺が足を止めれば後ろに続くもの全てが足を止めざるを得ない。それが集団戦闘というもの。そして、その失敗は
「すでに遅い。我が罠にかかりしものたちよ・・・貴様らはすでに我が駒だ」
「ぐっ・・・ああああ!」
漏れる苦悶・・・それは体というよりも精神に働く圧迫。そうだ、冥王の力で一番忘れてはいけなかったもの・・・それは他者を操る洗脳の力。このままでは俺も?
「・・・認めない。俺は俺としてここにある!」
心に力を込める! それに反応して竜神剣が光る! それは呪縛の糸を残らず切り裂いていき
「ほう? そうか、貴様の属性は風。何よりも自由であることを尊ぶ力。そこに強大な自然の力を持った竜・・・いや竜神の力に、あらゆる力を切り裂く竜神剣の力。見事だ、確かに完璧な洗脳封じのスキルと言わざるを得ない・・・貴様だけはな」
ん? 俺だけはだと?
「・・・リュウト」
「ん? どうした、アキ?」
後ろからかけられたアキの声。そして、すっと俺の手から抜かれていく竜神剣・・・振り向きざまに見えたアキの顔は口調とは裏腹に苦しそうで
「助けて、リュウト。私が、私が・・・消えちゃう」
つぅ~と流れ落ちていく一筋の涙。理解が追い付かない。いや、理解したくない・・・と言うべきなのかもしれない
「貴様の防御は完璧だった・・・だが、それは貴様だけが持つ能力だ。他の者はすでに我が手の内にある」
パチンと鳴らされる冥王の指。それとともに俺の元に殺到したのは無釉の矢・・・これはレミーか!
「くっ・・・!?」
竜神剣はアキの手の中。呼び戻して、撃退するには少々時間的に足りない。ならば、ここは避けるしかと思った頃には足は完全に凍り付いている・・・間違いなくリデアだろうな
「かはっ!」
そして、感じられる衝撃に氷ごと吹き飛ばされて・・・この衝撃はアシュラの物だろうな
「正気に・・・なんて言葉は意味がないのだろうな」
そんな言葉でどうにかなるぐらいならば、とっくに自分たちで呪縛を打ち破ってくるだろう。言葉が無意味とは言わないが、言葉だけで足りる状況でないのも事実だ。改めて皆の顔を見る。まさに能面のようなと表現したくなる無表情。唯一アキだけが苦しげにしているのは彼女が俺の影にいたからか、それとも彼女の意思の強さによるものか・・・少なくても今はその考察をしている時ではないか
「愚かなる竜神よ、貴様の敵はそいつらだけではないぞ」
「そう言うことだよ、リュウト・・・ラインボルト!」
背後から聞こえた声に慌てて振り向くと、そこにいたのはアイ。そして、胸部・・・いや、心臓の真上に殴りつけられる拳。確かに普通の人間とは思えない威力だったが、戦闘態勢の俺にダメージが入るような攻撃では?
「・・・ラン!」
一撃を加えた後にすぐに後ろの下がり、地面を殴ったアイは・・・まずい! これは誘導電撃!? 一撃を加えられたのは心臓。ならば、電撃はどこに逃げようとも必ずそこに到着するというわけか!
「くぅ・・・!?」
防御を固めて耐える俺に再び殺到したのは矢であり、氷であり、雷をまとった爪であり、そして炎だった
「く、ああ・・・」
どこか自分の声さえも遠く聞こえて・・・ま、まずい、意識がかすむ・・・
さて、おおよそ予想の範囲内だったであろうアイの再登場の仕方、そして予想されていた方もいるかもしれない仲間たちの一斉離脱ですね!
???「ふっ、主力となる仲間を一斉に失った我が君・・・つまりは我の出番というわけだな」
ええ~っと、名前を隠しても大体誰だかわかるので素直に名前を出して出てきてくださいね
カーミラ「ふむ、名が知れているとは面倒なことだな」
いえ、名前じゃなくて喋り方が独特なだけかとw まぁ、カーミラの出番は確かにありますが、どう出てくるのかはお楽しみに♪
マリア「そうそう、ここはお姉ちゃんがリュウト君を華麗に助けに行く場面でしょ?」
メイ「私という可能性もございますが・・・」
ちょ、ちょっと! ここで争わないで~~~~!! ということで今回はここでお開きです! これからどう物語が展開するのか楽しんでいただければ幸いです




