1話 「晴れ時々天使?」
「リュウト、ここらで休憩にしよう。」
アキは最近、こうして休憩を挟むことが増えた。・・・けして彼女の体力が無いのではない。
「ま、また魔法の特訓か?」
「当然だ。竜神ともあろうものが使えないでは困ろう。」
というわけだ。まぁ、アキなりに責任を感じてるのだろうけどな。アキが隠れて特訓をしているのを俺はしっかり確認してたりする。
「しっかし・・・ちっとも使えるようにならないな。やっぱり俺って才能ないんじゃないのか?」
「何を今更・・・才能がないなんて初めからわかっていたじゃろう?」
・・・これまた随分なお言葉で。普通はそんなこと無いとかって慰めるんじゃないのか? 魔法に誇りを持つエルフとしてはそんな妥協は出来ないってか?
「才能無くても使えるようにしてやるゆえ安心するがよい。リュウトは杖は使わぬゆえに私と同様にというのは無理だろうがな。」
ん? ・・・杖?
「杖ってやっぱり魔法を使いやすくなるのか?」
「魔力から魔法への変換効率を高めるというのが正解だな。他にも私がつけているペンダントのように両方の効率を高めてくれる道具もある。」
とアキが見せてくれたのは綺麗な赤色の宝石が埋め込まれたペンダントだった。
「ふ~ん、アキの持ち物だからな。凄いものなんだろ?」
「無論だ。これより上のものと言えば伝説級の魔法の至宝石ドラゴンハートぐらいなものだろう。」
「ドラゴンハート?」
「なんだ?知らんのか?? こぶし大の大きさで綺麗な球形をした燃えるような赤色の宝石だ。何故かこの宝石は大きさも形もほぼ一定という不思議な宝石じゃな。きわめて硬く加工も細分化もできん。さらに個数も殆ど無いゆえにきわめて高価なものなのだ。」
・・・どこかで見たことがある形状だな。(1章6話~2章1話参照)
「俺・・・それ売ったかも知れない。」
「売った!?・・・どこでだ! 一体いくらで売り払ったと言うのじゃ!」
「ウィルで・・・アキと出会うちょっと前だな。値段は・・・この剣と迷いの森の案内代分・・・。」
「リュウトよ・・・一応聞こう。その剣はいくらだ? 案内代などたかが知れてるぞ? あれは道を作れぬのは我らの都合だからな、殆ど慈善事業に近いのだぞ。赤字経営なのだぞ!」
そ、そうだったのか・・・知らなかった。
「えっと・・・10000ジル(1ジル=10円相当です)。」
あはは、アキなら案内代は知ってるから・・・ばれるな。
「つまりあわせて15000ジルか・・・この大馬鹿者! そんな剣など100万本買っても釣がくる! いや、釣りの方が多いぐらいの価値があるのだぞ!!」
あはは・・・さすがに魔法の至宝となると黙ってはいられないか。まさに自分の戦力に関わる話だからな・・・。
「きゃぁぁぁぁぁああ!!」
「「!?」」
突然の悲鳴に俺とアキは顔を見合わせる。聞こえたのは・・・上? 思わず空を見上げると・・・何かが俺の上に落ちてきたのだ。
「ふぐぅ!?」
「いったぁぁぁぁあい!」
それは俺のセリフだと思うんだけどな。俺の上に落ちてきたもの、それは・・・白い羽と頭の上に浮かぶ輪・・・天使?
「ム~! ひっどいよ~!」
いや、酷いのも君だと思うのだがな。
「そなた! いつまでリュウトの上に乗っているのじゃ! さっさと降りるのじゃ!」
アキはアキでさっき激怒した所為で沸点が低くなっているのか妙に余裕が無い。
「あ、ごめんね~。よいしょっと・・・。」
「で! そなたはなんでリュウトの上に降って来たのだ!」
本来は一番怒るべきは俺だと思うのだが、これ以上怒るわけにはいかないと言うか・・・むしろ押さえ役にならないといけない気がする。
「えっとね、わたしがお仕えしてる神様が竜神って人を助けに行けっていきなり放り出したの!」
・・・おそらく俺とアキが考えていることは同じだろうな。
「そなた、その羽は飾りか? 飛べないのか??」
そう、それだ。
「あ~! そうだ!わたし、飛べるんだった! で、でもね、天界からここまで落ちると10分しかないんだよ? その間にそんなこと思い出せないよ~!」
・・・いや、10分もあれば普通気づくだろう。
「リュウトよ・・・どうする?」
「一応名乗らないわけにはいかないだろう?・・・えっとな、俺がその竜神なんだが・・・名前はリュウト=アルブレス。リュウトって・・・」
「わかった!リューくんだね!会えて良かった~!!」
「だ・か・ら! リュウトに抱きつくでない!!!!」
俺に抱きついてきた天使をアキが無理やり引き離す。別に困りはしなかったのだが・・・。しかし、様子だけを見るとアキの方が大人だが、年齢はこの子の方が上だよな? 人間なら16、7歳ってところだと思うのだが?
「まったく、そなたは・・・まぁいい、私の名前はアキ=シルフォー・・・」
「よろしくね、あーちゃん!」
この子は最初の一文字しか覚えられないのだろうか? アキもあーちゃんなんて呼ばれて固まっているし。
「あ! 忘れてた~! わたしの名前はレミー=エンジェルだよ! よろしくね♪」
どこの神様か知りませんが・・・俺たちに厄介払いしたんじゃないですよね?
3章とうって変わって4章はギャグ要素が強くなります。原因は・・・
レミー「はーい! みんなのアイドル! 天使のレミーちゃんただいま到着~♪」
そう、この人。けして悪気があるわけじゃないんですが、やることなすことトラブルを呼び込む無類のトラブルメーカー(お馬鹿なだけとも言う。)です。
レミー「ム~! わたし、みんなの役に立つもん!」
もうお気づきかと思いますが。レミーはアキたちとは違い一人称は『わたし』です(アキたちは『私』)。また相手の名前は男:カタカナで頭一文字を伸ばす+くん、女:ひらがなで頭一文字を伸ばす+ちゃんで呼びます。一応メインキャラの一人ですのでよろしくお願いします。
レミー「よろしくね~♪」




