2話 「姉妹と夢魔たち」
「あはは、本当にあの坊やの反応はなかなか面白いねぇ! まさか、あそこまで必死に守ろうとするとは思わなかったさね」
ひとしきり、妹ちゃんと竜の坊やをからかって戻って来た私の空間。そして、帰ってくるなり声を張り上げて楽しげに笑う私の相棒
「楽しそうねぇ。竜の坊やは『私のお気に入り』だって言ってたのは誰だったかしら?」
「あっはは、そんなこと言ったこともあったさねぇ。でも、それは坊やに会う前の話さ・・・たしかにあんたの言う通り、あの坊やはあたしたちの希望になれる逸材だよ」
なによ、それ? 私の目を信用してなかったってことかしら? 失礼しちゃうわね。
「まぁいいわ。で、わかっているんでしょ?」
「勿論さね。あの坊やはこれから守ってやらないとねぇ。あたしたちの目的のためにさ」
「あら? ただ守るだけじゃダメよぉ? 今のままじゃダメダメなんだから」
「わかっているさね。あの坊やの一番の武器は天井がないあの異常なまでの成長速度さね。まさに希望と呼ぶにふさわしいじゃないさね!」
そう、人と竜。二つのいいところがまじりあったのか、竜の坊やの成長速度は竜としては異常だし、その成長は竜である以上は無限・・・どこまででも限りなく強くなっていくはず。あの光の女神様が狙っているのと同じこと、竜の坊やが死なないように、そして最大の成長をするように試練と手助けをしていく。私たちの腕の見せ所ってわけね。
「ええ、今までの長い時間の中・・・間違いなく最高の逸材で、最強の竜神の座につけるかもしれない坊やね。まぁ、普通の人から見れば未熟な弱い竜なんでしょうけど」
でも、きっとこれがラストチャンス。あの人のために私が最後にしてあげられること・・・絶対に無駄にはしないわ
「ん? どこに行く気さね、ルーン」
「あら、決まっているじゃない。あの坊やを刺激するならば、一番いいのはあの子に会うことよ?」
「では、本日の業務はここまでにいたしましょう」
「ふう、最近は随分とやることが増えたのう」
「そうですね、良くも悪くもリュウト殿が我が国にいることで影響力が増えていますから、仕方がない事でしょう」
そうなのよね。まぁ基本的にはいいことだから、そこは我慢しないといけないよね。それに私の場合はお姉ちゃんがいてくれるからだいぶ楽なのも事実だし・・・!?
「メイ!!」
「はい、すぐに近衛兵を! それとリュウト殿にも・・・」
何かが結界に触れる感触、それは勿論結界を張ってる1人でもあるお姉ちゃんにも感じられて・・・でも、とっさの判断力はやっぱりお姉ちゃんの方が上なのよね
「クスクス、別に他の人を呼ぶ必要はないわよ~。戦いに来たわけじゃないから・・・でも、面倒だから他の人が来たら眠ってもらおうかしらね?」
「ルーンじゃと!?」
レミーが匂いを察したという時点でたぶん生きているとは思ったけど、やっぱり生きていたのね! でも
「そなたにはリュウトのキスを奪われた恨みがあるからのう。生きていたというならばそれはそれで好都合じゃ!・・・ひっ!?」
突然感じた強烈な殺気につい悲鳴が漏れる。いえ、相手がルーンならば予想の範囲内だから大丈夫だったと思うんだけど
「そうですか、あなたが話に聞いた・・・淫魔風情がリュウト殿を傷ものにしたのならば覚悟はできておりますね?」
な、なんで、お姉ちゃんがそこまで怒るんだろう。あれ? なんかもう1人結界に引っかかっているのがいるような・・・!? こ、これって!!
「ルーン、なんであんたはわざわざ結界に引っかかりながら行くんだい?」
「あら? 貴方だって引っかかっているみたいだけどぉ?」
「あんたが引っ掛かったから慌てて追いかけて来たんじゃないさね!」
な、なんでリリィまで・・・いえ、前にリリィ戦の時にルーンの匂いをレミーが感じたのだからおかしくはないのかもしれないけど・・・実力未知数のルーンだけでも怖いのにリリィまでいるとなると
「ふふ、言ったでしょ? 戦いに来たわけじゃないから心配しなくてもいいって・・・ただ私たちがここにいるというだけで竜の坊やに対して意味があるのよねぇ」
「牽制というわけですか・・・あなたたちがいつでもここに侵入できる。女王様のお命を狙うことができるという」
淡々というお姉ちゃんだけど、珍しく苦悶の色が見える。でもそれは当然、今でこそ実力を考えなければ2対2の互角だけど、いつでものど元まで迫ることのできる相手に防衛線というのは無謀に等しいから
「わかるのが当然さね。・・・と言いたいところだけど、この状況下でとっさに判断で出来るのは、まぁ上出来と言ってもいいさねぇ。お嬢ちゃんだけでなく、姉の方もそれなりには期待できそうさね」
「・・・あなたに褒められても嬉しいとは思いませんが」
「あっはは、そりゃそうさね。さ、ルーン・・・これからどうするんだい?」
「帰るわよ? 目的は果たしたんだしね・・・あら? どうしたのそんな鳩が豆鉄砲でも食らったみたいな。言ったでしょ? 争うつもりは今のところないって。あなたたちの命も今日のところは興味ないわ」
そう言うなり消えて言った二人だけど・・・今のところか。油断できないのは確かだし、おそらくは自分たちが生きていてコンビを組んでいることを知らしめる意味もあったのでしょうね
「メイ・・・」
「はい、無意味かもしれませんが結界の強化を行いましょう・・・特にリュウト殿の部屋を」
ええ、何を考えているかは今ひとつわからないけど、あんな夢魔達なんかに出し抜かれたりは絶対にしないもん!
さて、リュウトにちょっかいを出したらここにも出さないと・・・ということでシルフォード姉妹です
メイ「ただの謀略戦ならばそうそう後れを取る気はないのですが・・・レーチェル殿と言い手ごわい相手が多いですね」
確かに策略だけならばメイが一番な気がする・・・同時に実力が上の厄介な相手が多いのも事実ですが
メイ「ええ、残念ながら私の戦闘力は決して高くはありませんので」
・・・といいながらアキよりは強いメイさんなのです
メイ「ふふ、魔力はともかくまだ実力で女王様に負けるつもりはありませんわ。これでも姉の意地というものがありますから」
なはは、まぁ・・・これからも裏でこの辺のメンバーの謀略戦が行われていそうだという話でしたw では次回もよろしくお願いします!




