2話 「開始早々に」
「さて、本当はすごろくだから順番が早い方が有利なんだけど、あんまり気にする人もいなさそうね。とりあえずリュウト君の組から始めて頂戴」
明るく言ったレーチェルだが、本人もわかっている通りなんだよなぁ。アシュラ以外はゲームの勝ち負けじゃなくて死なないことが目標みたいなもんだし、アシュラも特訓が主で別にすごろくに負けても何とも思わないだろう。まぁ、その点、一応リーダの俺が露払いするべきなのか・・・出来ればレーチェルにやってほしかったところだがな。
「ん~、じゃあリュウトが振る?」
「いや、ママナが振ってくれ。別に俺が振っても好きな目が出せるわけじゃないからな」
・・・厳密に言えば、風の力使っていかさますればさいころの目位いくらでも操れるが即座にレーチェルにばれるだろうし、マス目の指示が伏せられている以上は大きな目が出たから良しともいえないしなぁ。
「あ、リュウト! 見て見て6だよ~」
ほんのちょっとだけママナが羨ましい気もするな。で、肝心の指示の方は・・・なるほど、マス目に応じていくつかのパターンの中からランダム狙ばれた1つが空に浮かぶのか。まぁ、これぐらいならばレーチェルの作ったすごろくだし、そう驚くことでもないが・・・な、なに!?
「デスマッチ! 魔獣の群れを倒して戻れ・・・ええ~!」
「レーチェル! どういうことだ!?」
だというのにレーチェルは・・・
「あら、序盤の比較的簡単な指示よ? ああ、安心して頂戴。魔獣はこれからあなたたちが運ばれる異空間だけに存在できる幻よ。一見実態はあるように見えるからそう思えなければ、ゴーレムみたいなものだと思ってくれてもいいわ」
なるほど・・・とりあえず生き物の命を奪う心配はしなくてもいいのか。つまり後は、俺たちが生き残れるかどうかというわけなのだが
「うう~、なんですごろくで命がけの戦いなんだろう」
「同感だよ・・・まぁ、がんばろうな。死なないように」
それぐらいしか言うことないよなぁ。もっともがんばるのは主に俺なわけだが
「・・・なぁママナ、どこら辺が簡単な指示なんだと思う?」
「ごめん、私に聞かないで。レーチェルさんの感覚って凄いとしか言えないから」
魔獣と聞いて匹数にもよるが以前戦ったオルトロスやケルベロス級ならばなんとかなるかと思ったら・・・そんなレベルじゃない奴らがずらずらと。本当にすごろくじゃなくて闘技場なんじゃないのか、このゲーム?
「まぁ、愚痴っていてもしょうがないか! 竜神流暗殺術奥義、無明!」
気配を隠し、予備動作のない高速突撃術。背後を取るという目的上、刹那飛翔閃ではなく通常の刹那のほうだが、それでも軌道上の数体を・・・っ!?
「ママナ!」
「へっ? うきゃ! きゃ~きゃ~!!」
思ったよりも耐久があったようで生き残っていた連中がママナを襲いに行くとは・・・もっともなんだかんだ言って隠密術と回避は優れているママナだから事なきを得ているが
「うう~、なんで私の居場所が分かったんだろう。それに肉体が消失している私にもダメージを与えてくるなんて」
「おそらく、この空間自体が竜神剣と同じような特性を持っているんだろうなぁ」
だからこそ、竜神剣の力を使っていない俺にもママナの居場所が見える。つまり、隠れてやり過ごすのは許さないってことか、レーチェル。ほんのちょっぴり掠ったのか、痛そうにしているママナを見てそう思う。だが! 守って見せるさ! 絶対に!
「ママナ! 後ろに・・・」
「駄目だよ・・・リュウトの悪い癖だよ。何でも1人で抱え込んで。私だって・・・戦える!」
ママナ? ・・・そうだよな、いっしょに戦っているんだ。1人で戦う必要もないよな
「リュウト! 私に合わせて!! サンドショット!」
「おお! トルネード!!」
「「サンドトルネードだ(よ)!!」」
ママナの技は砂を呼び出してぶつけるだけの技。威力という意味ではほとんどない技だが、風の基本技トルネードと合わせれば敵の視界を奪いつつ攻撃できる技へと変わる!
「リュウト! あとはお願い!」
「任せておけ! 竜神流・・・刹那風竜閃!」
高速突撃の風竜閃! 俺の体は人とは少々違う・・・アシュラ程でなくても突撃時の攻撃の剣速は突撃速度が速いほどに速くなる。俺の場合は200倍と言ったところか。ゆえに刹那と風竜斬の合体技の威力は大きく跳ね上がる・・・はずだ。
「お疲れ様、リュウト」
「ふう、しかし初めからこれだと先が思いやられるよなぁ」
俺もまさか、この言葉が本当に現実のものになるとは思ってもいなかったのだが・・・
1回目のサイコロを振った後の結果
リュウト&ママナ組 6マス地点
アキ&メイ組 魔法戦勝利 4マス地点
アシュラ&コーリン組 3マス進め が出て8マス地点
レミー&リデア組 計算問題100問 3マス地点 (レミーがグロッキー気味)
コクト&レーチェル組 女神のお仕事代行(勿論やったのはコクト) 1マス地点
さて、というわけで始まった天界のすごろくですが・・・
ママナ「いきなりデスマッチってどういうことなのよ~~!」
まぁ、それはレーチェルに文句を言ってもらうとして・・・リュウト&ママナ組が一番大変そうなのにあたっていますね
ママナ「うう、私6を出したのに・・・。でもアキたちもなかなか大変そうなのが出ているよ」
まぁ、魔法のエキスパートのアキですから何とかなるでしょう。メイは魔力は低くとも使い方はアキよりもうまいですしね。アシュラあたりは欲求不満かもしれませんがw
ママナ「なんで一番戦いたい奴のところが普通のすごろくになっているのよね~。でもレミーは・・・」
どっちかというとレミーの勉強にリデアが付き合わされたというところかもですね。中ではきっとリデアの怒号が飛び交っていた事でしょう
ママナ「うん、私もそう思う。じゃあ、次の2順目・・・無事に過ごせるように祈っていてね?」
では、次回もお楽しみにしていてください!




