4話 「レーチェルの流儀」
「さて、始めるか・・・俺の方から仕掛けさせてもらってもいいんだよな?」
「あら? リュウト君、あなたは実戦でもそんなことを言うつもりかしら?」
「・・・了解」
向こうも実戦のつもりで殺すつもりで来いってか。そういうレーチェルこそ実戦でもそんな事を言うのかって気もしなくはないが、それぐらいの余裕を見せられる程度は優に実力差があるのは事実。レーチェルに本気でやられていたらもう俺はこの世に・・・まではさすがにやらないにしても、確実にすでに負けているだろうからなぁ。
「竜神剣、第3封印解除! そして竜神流・・・刹那飛翔閃!」
能力を5千倍にする第3封印解除。そして俺たちネフェーシアの生き物はその気の力で初動から最高速度を出せるのだが刹那飛翔閃ならば初動に置いては刹那同様に3倍の(竜神剣の強化無で)マッハ15だが、飛翔石同様に地面に足がつくたびに速度が倍々に無限に増えていく性質を持つ技。負担もそれなりにはあるが、レーチェル相手ならばこの程度の速度はないと話にならないだろう・・・!?
「うん、足をつくたびに倍・・・2回足をついて約光速の3分の1ってところね。まぁ、その程度じゃ本当はお話にならないんだけど、一応はよく考えたって言っておくわ。でもね」
ふっとまさにレーチェルの体が掻き消える。だが、これは転移系の技じゃない?
「覚えておきなさいね・・・戦場では常にこれを心がけなさい。自分に出来たことは相手もできるかもしれないということ。自分に出来ないことも相手はできるかもしれない・・・そして相手に出来たならば自分に出来ない理由もまたないってことをね」
っ!? ・・・つまりレーチェルは俺の刹那飛翔閃と同じ技で返したってことか。初めから使えたのか、それとも俺のを見てコピーしたのか・・・いずれにしても実力者相手に技の乱用は危険だってことだな。
「はい、チェックメイト・・・って言いたいけど、それじゃあつまらないわよね?」
「当・・・然!!」
背後から聞こえるレーチェルの声。首筋に当たる冷たい感触・・・これが戦場ならば完全にチェックメイトだが、これが模擬戦・・・いや、それにすらなっていない稽古ならばこれで終わるわけにもいかない。
「竜神流・・・十字脚!!」
振り向くように撃たれた飛びまわし蹴りとかかと落とし・・・その両足の軌道は十字を描く。まぁ、単純と言えば単純だが、それなりには・・・
「なるほどねぇ・・・四連脚といい、リュウト君は足技も増やしてきたわけね。うん、良い判断よ。足は比較的空いていることが多いものだから・・・でもね」
少しばかり横に体をずらしてかかと落としをよけながら回し蹴りを余裕で掴んだレーチェルは・・・
「この私に見せる技としては芸がなさすぎるんじゃないかしら?」
思いっきりぶん投げてきた・・・そりゃ、芸がないのはわかっているがな。一日やそこらでそんなたいそうな技を作れたら苦労はしないぞ!
「さてと、これで終わりかしら? だったら・・・うふふ」
微笑みながら近づいてくるレーチェル。これは模擬戦のはずなのに圧倒的な死の予感に冷や汗が流れる。まぁ、訓練としてはその位の方がいいんだろうけどな。
「じゃあ、今度は私の技をしのいで見せなさい・・・こういうのも特訓の内よ。ミラーフィールド!」
俺を取り囲むように現れた無数の鏡。これが話に聞いていたレーチェルの鏡魔法か・・・たしか水と光の複合魔法らしいが、これを使ってきたということはだ
「リュウト君ならばこの後の事はわかっているわよね? さぁ、耐えて見せなさい」
何が耐えて・・・だ。破って見せろって言うんだろ? 鏡に乱反射する光の牢獄。ならば俺が取れる方法は一つしかないじゃないか。もっとも本来はこれを持って破ったなんて言うのはおこがましいにもほどがあるが
「頼むぞ・・・リュム!」
「・・・情けなき主だ。『地力同我』!」
リュムの、竜神剣の力で乱反射してくる光自体を吸収する。だが、はっきり言って光自体のエネルギー量があまりにも大きすぎる。本来のリュムならばともかく、俺の実力でこの光を吸収しようとしても・・・
「そうね、無茶は無茶だけど気が付いてってことだけは評価してあげるわ。さ、これからどうするのかしら?」
大きすぎる力はすぐには吸収できない。そして吸収した力も俺の分相応にあわなければ俺自身を蝕むだけだ。そして光を吸収しても鏡がある以上は破ったとは言わない。
「こうするに決まっているさ・・・竜神剣、モードチェンジ闇! セパレード!!」
吸収した力を光から闇に変えて、内部にある力を開放する。俺が扱い切れていないリュムの表層の力だけでも小型ブラックホール程度は発生させるだろうが、レーチェルの光を吸収している今ならば・・・
「重力場で空間を歪めて鏡の結界から抜け出すか・・・でも、そんなに傷ついちゃって割にあうのかしら?」
たしかに俺の体は吸収時の、そしてセパレード時の衝撃で大きなダメージをおっている。それこそ、戦闘不能に近いレベルで
「あわなかろうとなんだろうとあれしか方法がなかったからな」
だが、それをしなければ実戦ならばすでに俺は死んでいる。ならばやるしかないというわけだ。
「そうね。まぁ、リュウト君もなかなかしぶとくて頑張る。でもまだまだだってことが分かったからこれで終わりにしましょう・・・一回死んで来なさい」
へっ? そう思った時には俺の意識は闇に消えていた・・・
「し、師匠!?」
い、一体何があったのだろう? レーチェルという人が指をパチンとはじいたら・・・そ、その師匠の首が
「ヤマト君だったかしら? 大丈夫よ、首がちぎれたぐらいじゃリュウト君は死なないから。一応治療はしていくけど、目が覚めたら伝えといて・・・これは幻術の力のほんの一端、次に会う時までに対抗策を考えておきなさいって」
そういうなり師匠を治療して消えていくレーチェルさん。首がちぎれても生きている師匠も、それをあっさり治していくあの人も凄まじすぎる。でも、いつかは僕も立つんだ。この人たちと同じ戦場に・・・
さて、リュウトVSレーチェルですが、予想どうりというかかなり悲惨なというか・・・
レーチェル「リュウト君はあれでも竜神よ? 首が斬れようと体がバラバラになろうとそれぐらいで死ぬような体はしていないわ」
そ、それはそれで凄まじいんですけどね・・・この先こんな奴ばっかりなのかというと
レーチェル「そんなわけがないってことね。リュウト君の場合はあのままほっといても自然と治ったでしょうけど、普通の存在はあの状態でほっとかれたら死ぬわ。まぁ、竜神がそれだけ特殊な存在ってことよ」
まぁ、かなり初期のころから心臓が止まったぐらいじゃ死なないなんて言っている奴ですからねぇ・・・。で、これが日常ってことは?
レーチェル「さ、じゃあ次の日常に行ってみましょうか。次回もちゃんと見て頂戴ね♪」
・・・逃げたな。あ、でも次も見てくださるとうれしいです。ではまた・・・




