6話 「届くよね? 私の思い」
柄だけを残すようにして消滅した竜神剣・・・きっと、それ自体があの剣の最大級の手伝いだと思う。あとは私の思いがリュウトを縛っている力を払えるか。ううん、リュウトにそれだけの力を与えられるか、かな?
「ねぇリュウト・・・私ね、あなたのこと好きだよ」
リュウトは剣士だけど、剣がなければ戦えないわけじゃない。魔法を失ったらほとんど戦えない私とは違う。でもね・・・リュウトの傍に近寄っていくことを怖いなんて思えないんだ。
「ねぇ、リュウト・・・あなたはいつだって私たちを守ろうとしてくれて、いつだって誰よりも傷ついて、ほんのちょっと私たちにつけてしまった傷を誰よりも後悔して・・・。でもね、そんなことは気にしなくてもいいんだよ?」
私、正直なにがあなたを縛って暴走させているのかはわからない。でもね・・・竜神剣がついている以上はリュウトを術で操ることは多分できないと思うんだ。だとしたらおそらくは精神的な揺さぶりだと思うの。リュウトは以前も大きく精神を揺さぶられたときにこうなった。それを遠隔で強制的に出来る存在というのが恐ろしくもあるけど、考えられるとしたら多分これ・・・だから。
「リュウト、あなたはあなたらしくいてほしい。悲しみに心を囚われてもいい。怒りに身を震わせてもいい。でも・・・自分の心だけは見失わないで。私は、あなたの強さも弱さも醜さも全部受け止めるから・・・」
だからね、ぎゅって抱きしめるの。うん、もしも今リュウトが暴れたら、リュウトの力だったら非力な私なんて簡単に殺せるんだろうけど怖くないよ? それにリュウトの為にもまだ死ねないもんね・・・なんだろう、3人ぐらいの鋭い視線っていうか殺気を感じた気がするのは? たぶん1人はリデアだと思うんだけど?
「ア・・・キ?」
!? リュウト!?
「うん! そうだよ! 私、アキだよ? ねぇ、思い出して? 取り戻して、あなたの本当の心を・・・」
苦しげなリュウトの声・・・ううん、本当に苦しいんだと思う。でも、それでもリュウトは戦っている。だから、私の思いも一緒に戦わせてほしい。
「うん・・・いいよ。それであなたの苦しみが少しでも和らぐのならば・・・私、苦しくなんてないよ」
ギリギリって抱きしめているのか絞め殺そうとしているのか分からない抱擁に私の体は悲鳴を上げる。でも、どうしてかな? ちっとも苦しいとも嫌だとも思わないの。むしろ、ちょっと嬉しい・・・。
!? あれ以上締められるのはちょっと危険かもしれないわ。私にとって一番大事なのは妹であるアキ。例え相手がリュウト君でも、大恩ある竜神様でもいざとなったら・・・そう思う手が嫌な汗で滑るのがわかる。
「駄目よ、メイちゃん・・・ここはリュウトくんの為にも手を出してはいけない場面だわ。例え最悪の事態になろうとも・・・」
いつ間にか隣に来ていたレーチェルさんが私の肩を掴んでいる。その表情は笑顔だけど・・・目は笑っていない。たぶん、私が彼女の言うことに従わなかったら実力行使、場合によっては命を奪うことも辞さないのだと思う。アキは助けたい、でも彼女を出し抜く力は私にはない・・・
「大丈夫よ・・・少なくても私は信じているわ。リュウト君の力を、そしてライオスから、遥かな昔から受け継がれた竜神の力を・・・」
強いんですね、あなたは。でも・・・
「たまには弱いところを見せてもいいのではないですか?」
「あら? それはあなたも同じじゃない? それに私は本当に強いからしょうがないわ」
・・・私は弱さも見せていると思うんだけどなぁ。それに、あなたがそういうのでしたら見なかったことにしましょう。あなたの腕がほんの少し震えていたことを・・・
「ならば1つだけ答えてもらいます。そういうからにはあなたはリュウト殿を襲っている異常の正体を知っているはずです。あれは・・・いったい何なのです」
「そうね~、当然と言えば当然の疑問だけどまだ言えないわ・・・いえ、あなたにならばヒントぐらいならばいいかしら? いい? 竜神というのはね遥かな昔から1つの宿命を与え続けられている。いえ、1つのことをなすために存在するものの称号よ。厳密には神ですらない、もっと上位に存在するものなの。だから当然・・・」
それを邪魔するものがいるというわけね。いえ、むしろ何者かを倒すために? 竜神、竜族が破壊に特化していることからすると十分考えられるわね。
「ふふっ、そうやって冷静に思考を重ねるからこそあなたは信用できる・・・安心しなさい、リュウト君たちの中で1番先にあなたに真実を伝えることになると思うわ。それまでお互いが生きていたらね」
『私』が、じゃなくて、『お互いに』ね。どうも厄介なことに首を突っ込むことになってしまったみたいだけど・・・いいわ、彼が竜神様だからじゃない。アキとリュウト君の為にならば私の命、賭けてあげるわ。
「ええ、わかり・・・!?」
返事をしようとして私の体が固まる。そして同時にレーチェルさんの体も固まる。そ、そんな・・・こんなことになるなんて思ってなかった。
「・・・レーチェル殿? これは一体どういうことでしょうか?」
「私もこれは予想外だわ・・・ここまでやってくれるなんて」
レーチェルさんの顔・・・結構怖いわね。ひょっとしたら私も同じような顔をしているのかしら? そ、そのアキとリュウト君は恋人なわけだからあ、あたりまえなのかもしれないけど! なんか胸のあたりがもやもやするわ。
「やっぱりあなたも同じかしら?」
「ええ、もやもやするのは・・・でも、レーチェル殿ほど1人身の時間は長くありませんよ?」
「あら? 私は恋人どころか子供だっていたんだけど?」
そんな牽制をお互いにしてみたけどちょっとむなしい。アキ・・・こんなところで! リュウト君に気持ちを伝えるためっていうのはわからなくもないけど! リュウト君とききき、キスしているなんてどういうつもりよ~~~!!
さて、最終決戦のはずなのに非常に和やかな雰囲気さえも感じさせる展開です。・・・一部に殺伐としたものもありますが><
リデア「誰の所為かしら?」
メイ「私は存じませんわ」
レーチエル「奇遇ね、私もよ」
あんたらだ、あんたら! メインヒロインに嫉妬している3人! まぁ、他にも涙目で見ているママナとか、それを複雑そうに見ているコーリンとかもいそうですが・・・
メイ「そう言えば彼女たちも来ていましたよね・・・特に私と一緒に来ているはずのコーリンさんは全く出てきてませんが・・・」
彼女たちは2人揃って隠密が得意ですからね。どこかに隠れているのでしょう♪ まったく話に出てこないということもないはずですよ? ね、レーチェル
レーチェル「何で私に聞くのよ」
彼女たちを常時感知できる数少ない人物の1人だからです・・・今のところ。
レーチェル「そうね、でもそれは今は言わないことにしておきましょう」
リデア「まぁ、今更驚かないわ・・・この女のことで」
とまぁ、このまま会話していると確実に収拾がつかないのでこの辺で♪ もう少しだけ4部も続きますので是非次回も見てやってください♪




