4話 「2度目の」
「第3の封印・・・まさかこれほどとはの。さて、これほどの力も消し去れるのかは知らぬが、先ずは受けてみるがよい! ファイヤーボール!」
第3封印の解除によって与えられた力に驚きつつも、先制の8連ファイヤーボールを撃ったのは勿論アキ。アキ自身、牽制目的で放ったのだろうそれは半分ほどは無の力に吸収されたようだが、残りは思ったよりもあっさりと当る。
「ふん、攻撃はアキからばっかりじゃないわよ! フリーズアロー!」
同じくリデアの放った3連発のフリーズアローも1つは当たった。これは勝てる?・・・たしかにこの強化率は自分でも恐ろしくは思える。だが、こうまであっさりと勝ててしまうのか? レーチェルの顔に驚きの表情は一切ない。だから、彼女が見たいものはこれではないことは明白。いったい何を見に・・・
「なかなかやりおる・・・だが、リーダーがよそ見をしているようではな! 集団とはリーダーを失えば脆いものだ」
考え事をしていた俺に向けられた黒い球体・・・無の力か。正直、俺がいなくなったからと烏合の衆になるようなメンバーには思えないけどな。それに
「戦場で対策も取らずによそ見をしていると思うか? こういうのはな・・・攻撃を誘っているのが相場だぞ」
ゼウスからみれば当たったはずの俺が消えたというところだろうか? 元々風の力での蜃気楼は俺の十八番、自分の幻影というか姿を別の場所に移して自分自身は隠れているぐらいは訳がない。気配隠しの能力も増幅されているしな。
「修羅・・・雷鳴撃!」
そして目立つ対象がいれば目立たないものはさらに目立たない。アシュラの気配隠しは俺よりもさらに圧倒的に上・・・そうそう簡単に見つかるはずもない。
「わたしも行くよ~、イリュージョンアロー♪」
「俺も忘れてもらっては困るな! グランドクラッシュ!」
レミーとコクトの兄妹も方や能天気に方や真面目に一撃を与えている・・・順調すぎるほどに順調だ。だからこそ・・・怖いな。
「悪いが、長引かせると危なそうだ・・・一気に決めさせてもらうぞ! 竜神流・・・風竜斬!!」
相手・・・というよりもレーチェルが何を考えているのかわからない以上は早めに勝負をつけてしまおう。その方が・・・ん?
「なんだこれ・・・この感覚・・・以前もあった・・・よう・・・な・・・」
なんだこれは? 意識が薄くなる?
「やっぱり干渉してきたわね? 貴方にとっても様子見なんでしょうけど・・・リュウト君はそんなに弱くないわよ。そしてリュウト君、今度は私の手助けなしに乗り越えて見せなさい」
レーチェルの声がどこか遠くに聞こえた気がした・・・
えっ? いったい何が起きたの? リュウトの動きが完全に止まって、ゼウスの仕業かとも思ったけど行動を見ているとゼウスもわかっていないように見えるし・・・むしろわかっているのはレーチェルさん?
「レーチェル殿、どういうことだ!? 説明してもらおう!」
「アキちゃん、そうな場合じゃないんじゃないかしら? もうわかっているでしょ、今のあなたたちの敵はゼウスと・・・リュウト君よ。リュウト君の強化は変わらない、いえ、さらに大きくなっている。でも、アキちゃんたちの強化は切れているわよね? その意味が分かっていないとは言わせないわよ」
初めはにこにこと話していたレーチェルさんだったけど、途中から声も表情も真面目に、怖いほどの気迫をぶつけてきた。確かにわかっている、リュウトが私たちへの力の供給を断っているということは今のリュウトに私たちを仲間という意識はないということ。ううん、ゼウスの方も強化されていないからこれは三つ巴?
「ちょ、ちょっとワタシは納得しないわよ! ちゃんと説明を・・・!?」
リデアに向けられた一撃、竜爪閃でもエアブレイドでもないただの剣を振ったことでのカマイタチだけど・・・とっさにコクトが彼女を引かなければ首が落ちていたでしょうね。それで竜族の彼女が死ぬかは別としてリュウトは本気で狙ってきた。でも、いつものリュウトだったらもう少し次への一手があっても・・・
「嘘・・・兄さん、本気でワタシを?」
「いや、本気も何もないのじゃろう。今のリュウトは本能だけで動いておるのじゃろうからの」
たぶんそれで正解だと思う。レーチェルさんも見直したって顔で見ているし・・・っていうか気づかないと思われていたのかな? それならば今のリュウトでも何とかできるかもしれない。ううん、何とかしないといけない。
戦略的に考えれば、下手に動かないでゼウスとリュウトで削り合ってもらうのがいい。でも、それじゃダメ・・・どっちが勝ったとしても絶対に駄目。リュウトが勝っても本当のリュウトが消えちゃう気がするから。
「リデア、先ずはリュウトを抑えるぞ。無論、ゼウスを倒しつつな・・・」
「あ、うん。それはいいけど・・・あれはいいの?」
なんか普段のリデアらしくもない口調に指示された方・・・リュウトの方をもう一度見て見ると
「アシュラ~~!! レミーも! いったい何をやっておるのじゃ~~~!!」
嬉々としてリュウトとゼウス相手に乱打戦をやっているアシュラ・・・もっともさすがのアシュラといえども少々押され気味だけど・・・と、わけもわからずにとりあえず矢を連打しているレミー。いえ、全力でやらないといけないことはわかるけど! 別に本気で行くことはいいことなんだけど! お願いだから独断専行だけはしないで~~!!
ということで2度目の暴走中のリュウトです。そして、今回はレーチェルは傍観するつもりのようですね。
メイ「そして私はどうしたのでしょうか? 最終戦には出てくるはずでは?」
次回をお待ちください><
メイ「・・・まぁいいでしょう。そして、リュウト殿が傷ついたらどうなるか・・・お分かりですよね?」
ですから、作者を公然と脅さないでください>< さて、リュウトの状態ですが8章をお読みになると細かいことはわかるでしょう。そう、今回レーチェルが動こうとしない理由もです。
メイ「それを信じると致しましょう。現状ではあの方には手を出せない状況ですし・・・」
そういうことですね。ということで楽勝モードから大ピンチに入りかけた最終章も是非お楽しみください。




