3話 「神の力、無の力」
ゼウスの大きさから考えて、俺達のような素早さ重視の回避型ではないだろう。おそらくはコクトと同じように防御力重視型の攻撃範囲も広いと思われるが・・・
「『真紅なる業火よ。我が命の火を糧に偽りの生命となれ!』ファイヤーバード!」
先制攻撃はアキのファイヤバード・・・そうだなアキには悪いがここで見極めさせてもらうか。いや、おそらくはアキもそのつもりかな? 遠距離から適度な攻撃力を持った攻撃という意味では最適な攻撃だ。そして結果は・・・
「吸収!? いや、消滅か!?」
正直に言って原理はわからない。だが、アキの放ったファイヤバードが当たっていないというのはわかる。死神たちの防御法ともアシュラの防御法とも違う。・・・もっともレーチェルはさして驚いてもいないところを見ると想定内ということか。こういう判断には便利だな、レーチェル。
「ふん、所詮アキの攻撃はその程度ってことよ! ワタシの冷気はどうかしら!『青白く輝く世界は美しき死への誘い。氷の女王の吐息の中に汝を誘わん』ブルーブレス!」
火と氷の属性は対極にして同質。今度は完全にリデアは狙ってはいないだろうが対比にはちょうどいいかも・・・黒い影? 消失というよりは飲み込んだというところか? だが、闇が悪ではないとはいえ神々の王が闇属性などあり得るのか?
「アシュラ! コクト! ここは俺たちが!」
「ああ!」
「ふん、いいだろう」
遠距離攻撃が効かないのならば直接攻撃を仕掛けて見ればいいだけ。防御法がわからないならば暴いて見せればいいというだけだ!
やはり同じように発生した闇・・・だが、よく見ると闇属性の物とは違うな。そしてもしやあれは・・・!? 感付いたところで俺たち『2人』はゼウスの振るった杖にはじかれて距離を置かれてしまう。そして残ったアシュラの攻撃は・・・
「どうやらまともに当たれば普通に効くようだな」
そう淡々と本人が言う通りなのだろう。だが、あの防御法自体が厄介なことには変わらないか。遠距離攻撃は早々当たらないと思った方がいい。とはいえ収穫もあったな。
「ちょっと待ってよ! なんでレミーの攻撃は普通に当たっているのよ!」
「ム~? なんでだろ?」
そう本人はわかっていないようだが、おそらくそれが最大の収穫だ。おそらくあいつの属性は闇なんかじゃない・・・俺とアシュラが以前力を合わせた時に発生したあの状態を1人でやっているということだろうな。つまり光と闇の融合、ならばレミーの力も同じようなものだ。なぁ、レーチェル?
「そうね・・・リュウト君は気づいたみたいだし、解は与えてあげるわ。私が見たいのはそんなものじゃないしね」
俺が向けた視線だけで把握してそれを言い出すレーチェルは凄まじいが、それ以上に自分の能力を暴露されかけて慌てたように見えるゼウスを一睨みで黙らせるというのはどういうことなんだろうな? まして操られている相手を・・・まぁ、睨まれていない俺も十分に怖かったが
「アキちゃんから聞いてないかしら? 属性は全部で10・・・基本6属性(火・風・水・氷・地・雷)心理2属性(光・闇)そして天意2属性の天と『無』」
使用者がほとんどいない天意2属性、サタンや竜神剣の属性が天だったが無の方はまだ使用者には会ったことがない。そしておそらく・・・
「『無』とは光と闇の融合属性のことよ。効果はさっき見たとおりかしら? そしてレミー・・・あなたがいつか使わなければいけない力よ。この戦い、今使えるようにとまでは言わないわ。でもしっかりと使い方を覚えておきなさい」
あはは、さすがレーチェルというべきか? まさか天界での最終決戦を今後の闘いの為の特訓のごとく言ってくるとは思わなかったぞ。
「それにリュウト君もね・・・切り札を先に使って一気に勝つという方法もあるものよ」
おっと、こっちにも来たか。っていうかやっぱり気づいていたか。
「はぁ、それはさっさと使えってことか? そうだな、なんとも緊張感のない気もするが今回は一気に行かせてもらうぞ! 竜神剣、『第3封印』解除!」
「えっ? 第3?」
アキの驚く声が聞こえたが本来はこっちの方が正しいんだよなぁ・・・アシュラやらコクトみたいに冷静はわかるがレミーみたくわかっていないは少々さびしいものだ。
初めて使った第3封印の解除、あいも変わらず初めて使った封印解除はバチバチと俺の体を壊そうとする。それを抑えつけようとしてはいけない、それを小さくして受け止めるのでもない。そうではない、俺とリュムの心を一つにするんだ。一体となれば・・・その力は自然と俺のところに収まる!
「リュウト!」
「兄さん・・・大丈夫なの?」
聞こえる声・・・それは確かに力。守りたいと思う、だからこそリュムも俺に力を貸してくれる! 第3封印の解除・・・俺が成長したからか? それともここからがリュムの力の本番なのか? ざっと1000倍ほどの能力倍率、精神同意状態の俺限定では5000倍ほど、これで負けてちゃ言い訳できないよな?
「ああ、この力! 皆の思いを束ねて絶対に勝つぞ!」
大幅に大パワーアップ! しかしまだまだリュウトたちは未熟なのです。この程度ではお話にならない敵がうじゃうじゃと・・・
マリア「問題ないわよ、リュウト君だもん」
・・・まだこの世を彷徨っていたんですか、マリアさん。
マリア「どういう意味かしら~? 私はリュウト君が頑張っている限りは見守り続けるわよ! ああ、まさに姉の鏡ね」
自分で言わなければ素直にそう思えるのですが・・・ん? このパターンは昔もあったような?
メイ「リュウト殿を毎日のように心停止に追い込むような姉のどこが鏡だというのです? 姉の鏡とは私のようなものを言うのです」
ああ、まさかこんなところまで来てこの2人の姉バトルが再燃するとは・・・っていうかどっちもあまりいい姉とは・・・
マリア&メイ「何か言った(言いましたか)?」
あははは・・・と、とにかくリュウトの物語はまだ始まったばかり。本当の物語の開始はもうすぐです!
マリア「それが遺言とは・・・」
メイ「変わってますね?」
遺言なんかじゃない~~~~~~~!!!




