1話 「重なり始めたピース」
「ゼウスの居城・・・いや神殿に妙なひずみが?」
ママナたちが何の情報もない中ゼウスのいる神殿にたどり着いて内部をしっかり探索しているというのも驚いたが、特にマークもされていなく彼女たちの隠密の技を考えたらその程度は出来てもおかしくはない。というよりもそんなことを口に出そうものなら『私だって役に立つんだよ~』ってブ~と頬を膨らませるのだろう。
そして、そんな情報よりもはるかに驚くべきがこのひずみの情報。これが結界だというのならば当然だとも思うが・・・
「自分の神殿の中にひずみとな・・・まさか!?」
ひずみというのは不安定さに他ならない。何をするにしても安定しているならばひずみが生まれるはずもない。ならば、それは本来は自分とはかかわりのない場所に作るべきものなのだが、どうやらアキには心当たりがあるようだな。
「というよりもそんな近くにひずみを作るなんてそれしか考えられないわよ! 普通は絶対にやらない、考えることさえもしない最悪のことよ!」
リデアさえも表情を固くする。おそらくアシュラやコクトもわかっているところを見ると・・・わかってないのは俺とレミーだけか!?
「うん、おかあ・・・コーリンさんも同じことを言ってた。そういうよりも魔法のことに詳しいものならば気が付くのが当たり前だから、気づかれること自体が計画の内だろうって言ってたけど」
とママナが続けて・・・ん? たしか俺が勉強を習いに行っているエルフ族の長老がまずないが故覚える必要もない事って感じでそんな風なことを言っていたことがあったような。
「ひょっとして・・・自爆用の結界って奴か?」
俺の言葉にうなずき返された多くの顔。1人例外だがそれは当然として、通常の結界と違い、限界以上の力を込めるがゆえに意味がある自爆結界。あれならばひずみが生れるのはある意味当然。
「つまり待ち伏せをしているってことね」
「いや、相打ちを狙っていることを臭わせて牽制しておるのじゃろう。・・・操られているものならば自爆に抵抗もあるまい」
リデアの言葉を修正するのはアキ。確かに操られているならば自分の命にこだわるはずもなし・・・か。そしてあの手の結界は術者が起爆するだけでなく、誘爆することもある。真の黒幕が爆破に出ることもあり、また俺たちが誘爆を恐れて力を使いきれないことも同時に考えているのやも知れないな。
「・・・とここまでが表向きの理由じゃろうな」
まぁ、そりゃアキは気が付くよなぁ・・・今までの状況を考えたら自爆して終わりにしようと黒幕が考えるわけがない。おそらく黒幕は『支配』そのものを求めてる。その本当の目的はまだ不明だが、自分の支配領域を壊す真似をするはずがない。
「アキ、仮に自爆が成功したとしてどの程度の被害が出ると思う?」
「そうじゃの~、ゼウスの能力がわからんゆえに正確なことは言えぬが先ほどの闘神よりも強いと仮定し、私たちの力も吸収するように作られておるじゃろうから全力で封じにかかっても天界は吹き飛ぶとみた方がいいじゃろうな。ということは必然的に2つのことがわかるのう」
気に入らない話だがそうだな。一つは俺がさっき思ったこと。そしてもう一つは・・・
「当然操っている黒幕は天界にはいないでしょうね。爆発させるのが主目的でないとはいえ万が一を考えたらそんな危険な場所には当然いないでしょうね」
「ふん、臆病者がどこにいようと興味はない。今すべきことはそんなことではあるまい?」
そうだな、アシュラの言う通りというのは乱暴であろうが、今討論をしていても仕方がないか。
「ママナ、案内してもらえるか?」
「もっちろんだよ! ちゃんと、安全なルートも探してあるんだから!」
・・・?
「どうしたのじゃ? リュウト?」
「い、いや・・・何でもない。じゃあ行くとするか!」
笑顔で言ったママナの何かが引っ掛かったような気がしたのだが、その違和感がわからずにアキの問いに誤魔化してしまったことを・・・まさかあんな形で後悔することになるとはこの時の俺は思っても見なかったのだ。
今回の話はまずは導入・・・ということで短めで軽くと言ったところですね。
リデア「ふん、前回の話といい、今回の話といい・・・本当はあの女が黒幕なんじゃないの?」
・・・まぁある意味においては黒幕はあの人かもなぁ。今回のではなくて、全体のというべきだけど
リデア「やっぱり・・・あの女ならその位はやると思ったわ。でも、わからないわね・・・今回は随分といろんな勢力が入り混じっているみたいだし」
まさにそうですね。そして、それぞれの勢力に思惑があり、それぞれの勢力が自分の目的のために行動をしているわけです。いくつの勢力が存在し、誰がどこに所属をし、そして何を狙っているのか・・・皆さんも是非予想してみてください。
リデア「特に怪しい動きをしている3人の女を予想して見なさい。彼女たちの最終目標はこの部だけでなくて、全体にかかわるとんでもなく大きな目的みたいよ」




