7話 「貫くもの、それはただ1つの」
ぴたりと背中合わせになる背中・・・こんなことをやったのは初めてなのに妙に懐かしくなるのはどうしてなんだろうな、アシュラ
「思えば出会ってからもうだいぶたつのにこうやって2人で戦うのは初めてだったな」
「ふん、下らん。戦いなど楽しいかつまらんかの2択しかない」
あはは、お前ならばそう言うかもな。俺は楽しいなどと思った闘いはない・・・そう、本気で楽しげに戦うお前との戦いぐらいだよ。そしてこんな安心できる戦いもまた初めてかもしれないな。
そうだな、それは守るための戦いじゃないからだろうな。お前との戦いならば、そしてお前とコンビを組んでの・・・全力でぶっ倒れるまで戦えそうだ!
「竜神流・・・風竜斬! まとめてふきとべ!」
未だに俺の単独での最高威力技を守っている風竜斬・・・邪竜神戦の時に比べればだいぶ威力向上をし、今の竜神剣の属性偏在モードのおかげでさらに威力が跳ね上がっているが、あの当時のように一撃で力尽きるほどの消耗率ではなくなりつつある。
「ふん、ばてても知らんぞ」
「その時はお前に頼るさ」
広範囲に及ぶ技がないゆえに一体多の戦いを苦手にしているようなイメージにも見られがちなアシュラだが、その圧倒的なスタミナは実は乱戦でこそ真価を発揮する。こいつほど有り余る体力を使った全力戦闘を続けられる奴を俺は他に知らない。
「勝手な奴だ」
「お互い様さ」
相手の実力はおそらく俺より少し上な程度だろう。アシュラが本気ならばとっくに、そして俺が竜神剣の力を使えばやはりとっくにだろう。だが、容易にそれをするわけにはいかない・・・そして
「後方にいる奴・・・どの程度の実力だと思う?」
「竜神剣を使った貴様と同程度・・・あれば楽しめるというところか」
楽しげにクククと笑うアシュラだが、実際にその程度はおそらくあるという見立てだろう。幸いなのは操られている弊害なのか攻撃事態がやや淡白であること・・・これならば実力差が大きくないならば十分に戦える。
「竜神流剣術・・・無風!」
だからこそ、こういった技が効果を発揮する。つまり思考自体が操られているから浅いということ。風を動かさないだけで、予備動作がないだけで反応が数段落ちる。
「修羅・・・瞬波閃!」
突撃というよりは横回転の飛び込みっていう感じだろうか? いずれにせよ高速の突撃と回転の飛び込みはアシュラの武器が爪であることと相まって強力な武器となるわけか。だが
「下らんが、厄介だな」
「ああ、同感だ」
奴らには個がない。だから躊躇なく自分を盾に出来る・・・その動きは俺に似ているが違う。決定的に違う! 自分を守る意思どころか仲間も守る意思さえもない。ただ、こいつらは冷たく勝利しか見ていない。そうだ、こいつらは操られている奴ら全体で1人なんだ。本来の人格を模倣するだけの操り人形。あまりに下らなく、あまりに無情で、言葉にならくて・・・そして厄介だ。
「リュウト・・・ここは一気に倒してしまわんか」
一気に? ・・・そういうことか。その策、乗ったぞ! アシュラ!!
「「修羅・・・W烈風斬!」」
マモン戦以来久しぶりに使ったこの技だが、相変わらず負担が大きい技だ・・・もっとも、今回はダメージを与えることが目的じゃない。他の奴らが烈風斬を追って空へとまとめて飛びあがって来た事が肝心だ!
「決めて見せろよ、リュウト! サンダー!」
「任せておけ! 竜神剣、モードチェンジ雷! そして雷竜爪閃!」
竜神剣は全属性を持つ剣・・・したがって相方は選ばない。アシュラの雷を受けた竜神剣はその特性、拡散の力を大きく受けた雷の飛ぶ斬撃となる。そして
「1匹に当たれば次々に放電・感電していくか・・・他に仲間がいるときには使いにくい技だな」
結局俺たちの持ち技の中で安全な広域技はアキの『スターループ』頼りというのは変わらなさそうだ。竜神剣の斬る対称選びも発散と組み合わせるとどこまで有効かわからんし・・・
「まぁ、とりあえずは勝負あり・・・第一関門突破と言ったところか」
「この程度のことを関門と言うべきではないな・・・邪魔な障害物にすぎん」
お前にとってはそうかもしれんがな・・・さすがにそれは哀れすぎる気がするぞ。そして
「あいつらも追いついてきたようだし、あちらさんもようやく重い腰を上げたみたいだ。・・・こんなくだらない戦いはさっさと終わらせなくちゃな」
本心からそう思う。誰一人戦いたいと思うものはいない。・・・せいぜいアシュラぐらいか? まぁ、それはいいとして、利益を得るものは裏で全てを操っている奴だけなど怒りを通りこうして馬鹿馬鹿しささえも覚える。だからさっさと終わらせないとな。
「うふふふ、兄さん? 覚悟はできているかしら?」
「出来てないと言っても関係ないがのう?」
・・・えっと、リデアにアキ? なんで俺は睨まれているんだ? おい、アシュラ・・・待て! 逃げるんじゃない! いや、誰でもいいからどうなっているのか教えてくれ~~~!!
さて、この章もだいぶ終わりが近くなってきて・・・今回のゲストはお久しぶりのマリア嬢です!
マリア「なんで私の出番がこうも少ないのよ!」
死んでいるのに出番があるだけましだと思いますが・・・そもそも普段はリュウトにも見つからないステルスでいるのが最大の原因では?
マリア「う、でもあの子の邪魔にもなりたくないしね~。結構苦労して身につけた能力なんだから」
まぁ、生前から当たり前のように気配隠しをやっていた人ですから幽霊になったら完全な存在末梢が出来ても不思議ではないのですが・・・
マリア「そうそう、結構使い魔とかは普通に出来る能力みたいよ。この世界に対する影響力のコントロールって奴」
そこら辺は追々本編にも出てくる力ですね・・・さて、今回はあまり語ることも多くなしで、マリアさんに一言貰ってお別れです!
マリア「ん~、じゃあ一言! 誰でもいいからずばっと決めて幸せになりなさいよ! あ、お姉ちゃんを相手に選んでもいいわよ?」
死んでいる人がなにを言いますか・・・と言ったところでお開きです~♪




