2話 「新たなる2つの力」
「貴様ら・・・そこら辺にしておけ。もうそろそろ来るぞ」
理由ははっきりわからないが、結構痛い力でアキとリデアに殴られていたのをアシュラが止めてくれる。珍しいことだと思ったが、単純に戦いの邪魔になるからなんだろうな~。
俺の探知範囲には入っていないが、そう来るまでに時間がかかるとも思えない。周りを見ると緩んでいた顔が全員引きしまっている・・・まぁ、レミーはいつも道理だが、あいつはあれが普通だからしょうがない。
「さて、じゃあ気合入れて突破しないと・・・な!?」
感じた気配に・・・そして見えた光景に寒気がする。それはきっと感知していたアシュラとのほほんとしたレミー以外は皆同じだっただろう。なにせ、文字通り空を埋め尽くすほどの数の天使と神々・・・そうか、さっき全力を見せてしまったからな。一気に最優先警戒対象に上がってしまったというわけか。
「我らが王ゼウス様は貴様ら竜神を秩序を壊す異分子と認定した。この戦いこそが天界の全勢力をもったラグナロクであると仰せられたのだ」
仰々しく言葉を発するのはおそらくかなり地位の高い神・・・それも闘神なんだろうな。だが、考えようによってはここを乗り切れば他に障害はないともいえる。悪い方ばかりに考えていてもしょうがないか。
「悪いがここをラグナロクなどにする意思は俺達にはないな。俺たちの目的はゼウス・・・いや、その背後から全てを操る黒幕だ。こんなところで倒れてやるわけにはいかない!」
そうだ、確かに上級であろう天使と闘神の大群は極めて強敵だろう。だが、こちらもあきらめるわけにはいかんからな。ましてリーダーである俺がな。
「自身は出てこずに指示を出す。政治としては正しい、戦略としても正しかろう。だが、それは相手が私たちである以上は致命的な間違いだと教えてやろう!」
「いい? 最強の神はいつだって竜神よ。なにせ、ワタシがサポートしているんだから! ・・・そ、それにワタシの兄さんだしね。さすがにレーチェルにはまだ勝てないでしょうけど」
アキがリデアが不敵な笑みを見せる。リデアがこうやって強がりを言うのはいつものこと、そしてアキはああ見えて歴戦の猛者だ・・・この手の演技程度はするだろう。
そして残りの3人は特に何も考えていないの1人と戦う気満々の2人か。特にアシュラにとっては数が多いは特に脅威ではないと考えるだろうからなぁ。
さて、そろそろお互いに言うべきこともない。あとは爆発するのを待っているお互いの闘気の口火を誰が切るか・・・か。ならば俺の新しい力を試してみるかな? おそらくこれがリデアの言っていた俺の竜としての能力。手に込めるはイメージの力、思い描くは・・・
「さぁ、行かせてもらうぞ! 竜神流・・・『飛翔結界陣!』」
構成したのは結界、そして中に放り込んだのはかつて一度見た弾性率が1を超える石『飛翔石』だ。俺の新しい力は物質の生成の力・・・いや、厳密には見たことがある原子・分子をコピーする力か。色々と制約はありそうだが、とりあえず物質を作れるというのはいろんな場面で役に立ちそうだ。アキの目がなんかキラーンと光ったのは見なかったことにしよう。
「フフ、それぐらいはやってくれないとね! ワタシも行くわよ! 『青白く輝く世界は美しき死への誘い。氷の女王の吐息の中に汝を誘わん』ブルーブレス!」
「今回はえらく意見が合うではないか? 『星の子の祈りを受けて、大いなる光よ、万の敵を打ち倒す戦輪となれ!』 スターループ!」
なんなんだろうな? さっきからえらいテンションが高いというか? とりあえず俺がそれなりの人数を閉じ込めた結界内で飛翔石を反射させる新技『飛翔結界陣』を撃ったのを見てはじかれたのように動いたのはこの2人。実際にこれだけで結構な数の敵が減ったのも事実。そして
「さぁ、オレを楽しませる奴はどこにいる?」
「は~い、わたしもやっちゃうよ~」
「レミーを傷付けさせはせん!」
そしてこいつら・・・はまぁいつもどうりと言えばどうりなんだがな。だが、実際問題不利なのは俺達だ・・・長時間の変わらない戦闘が出来るのはアシュラだけ。特に俺の竜神剣の力は数分しか持続が出来ない。そしてここにいる天使や神の中には明らかに竜神剣の強化無しでは俺よりも上手が相当数いるのも事実。
おそらくアシュラが少々突っ込み過ぎな位に前に出ているのはその所為だろう。前に一人で出れば当然アシュラに攻撃が集まる・・・その分、俺たちの負担が減るというわけか。らしくもない気遣いをして・・・。いや、ある意味あいつらしいのか。
「ム~、わたしだってできるもん! ウォーターランダムショット!」
・・・ちょっと待て! それは!!
「ちょっと! レミー、ワタシたちにまで当てる気かしら!!」
これだけ強敵ぞろいの大群を相手にして、なんで初の被害が乱射された味方の攻撃の誤爆なんだろうな? まぁ、確かに敵にも当たっているけどさぁ。というよりも背後から直撃食らって文句を言わないコクトとアシュラがさすがだというべきなのか?
「そうだな・・・元々不利なのはこっちだ。正攻法ではなくて勝負をしてみるか!」
竜神剣の力を使えないのはあくまでも『封印の解除』だ。そして竜神剣は天の力・・・全ての属性が普段は内部で打ち消し合って均衡を保っているというのがわかった。ならば、その均衡を故意に崩してやればどうなるのか・・・試す価値ぐらいはありそうだな。
「行くぞ、竜神剣・・・モードチェンジ『風』!」
風の力を強くする・・・普段は緑の刀身がより深い緑に代わって強い風を感じる? いや、違うこれは・・・
9章に入ってさらに強くなったリュウト! 実はどっちの能力もかなり優秀な新能力なのです!
アキ「特に私にとってはコピー能力はありがたいな」
・・・えっと、それはたぶん戦術的な話じゃないですよね?
アキ「何を言う! エルフの国の経済的な戦術の話だぞ! 貴金属や宝石、食糧がいくらでも作れるというのがどれだけのメリットがあるか!」
・・・やりようによってはとんでもない大パニックを引き起こしそうな気もしますが・・・まぁ、そこら辺は置いとくとして今回の戦いはなかなかに大変な戦いなのです。続く話にもご注目を!
アキ「ふふ、2度も負けるものか・・・私たちはともに幸せにならねばならんのだからな!」




