1話 「嵐と嵐の合間に」
ここは? 見慣れたはずの陽光がいやに眩しく感じて・・・俺は確かリリィの世界に囚われていたはずなのだが、その先の記憶はない。
正直俺だけであの世界から抜け出れるとは思えないからレーチェルあたりが助けてくれたのかもな。いや、どっちでもいいことだ。少なくてもレーチェルはそれをどうこう言うことはあるまい。そして、俺がやるべきことは・・・
「リュウト!! 大丈夫なのか!?」
とりあえずは涙目で突撃してきたこの女の子・・・いや、愛しい恋人って奴を出迎えてやらないとな。
「ああ、大丈夫だ。心配かけて悪かった」
かる~く言ったはずなんだが、じわ~とアキの目がより涙目になって・・・おいおい、俺はそれに弱いんだから勘弁してくれよ。
「本当に! 本当に!! 心配したんだから!! あなたはいつもどうして自分ばっかり傷つこうとするの? どうして私にばかり心配を・・・」
心配のかけ度から言ったらアキもそう変わらないとは思うのだが、そんなことを言えるような雰囲気じゃ・・・ん?
「おいおい、リデアまでどうしたっていうんだ?」
アキの突撃は予想していたが、こっちはちょっと予想外だったんでよろけかけたが、さすがに兄としては情けない姿は見せられない。しかしリデアは俺のことをあまりいい感情持ってなかったはずなんだけどな?
「ホント! ホントに馬鹿よ、兄さんは!! あ、あなたでもワタシにとっては探し続けた兄さんなんだから! だから・・・だから! ワタシの傍からかってにいなくなっちゃ駄目なんだから!!」
・・・どうも俺はこういうことには鈍いようだな。リデアがあれだけ真剣に、悲壮感さえもあるほどに俺を探していたことを知っているはずだったのだが。『かってにいなくなるな』か、2人の姉ばかりか妹にまで言われちまうとは
「本当にすまなかった。俺はちゃんとみんなの傍にいるから・・・しかし全員無事でよかったよ」
この2人が特に目立っているが、無論ほかのメンバーもいる。レミーはすっかり元の天使バージョンに戻ってニコニコ笑っているし、コクトはそんなレミーの傍についている。アシュラは近くの木に寄りかかって憮然としているな・・・まぁ、あいつの場合は負けたのが気に入らないのだろう。ああいう圧倒的な負けは少なかっただろうからな。
「さてと、どうやら怪我らしい怪我も全員ないみたいだし・・・行くか!」
気合を入れなおして先に進むことを示唆する。けして今の状況から逃げるためじゃないぞ? ・・・ん? どうしたレミー? 俺の、いや俺の周りの匂いなんて嗅いで?
「ム~? なんかリューくんから女の人の匂いするよ? でもどっかで嗅いだことある気がするよ~」
レミー? なんだかわからないがすごい勢いで不吉なフラグが成立した気がするんだがな? そしてお前の嗅覚はどういう構造をしているんだ? 本能で行動しているとは思っていたが、まさか嗅覚まで野生の獣並みだったとは・・・
「いや、それはリリィの匂いじゃないのか? さっきまで戦っていたわけだし・・・」
というよりも俺はなんでこんな言い訳をしなければいけないんだ? やましいことはした覚えはないんだが・・・というよりもレミーはどんな意図で・・・いや、意図なんてこいつにあるわけがないか。
「ム~? 違う気がするの~。これはレーチェル様? それにルーンの匂いもする気がする」
状況的にレーチェルは確かに来ていても不思議ではないんだが。しかしルーン? あいつは倒したぞ? いや、生きていても不思議では・・・その前に
「ちょっとまて? アキにリデアも! 別に俺はそんな睨まれるようなことはしていないぞ!?」
「へぇ~、そうなんだ? じゃあなんで兄さんはこんなに汗かいているのかしら?」
お前たちのその視線の所為だ! そんな目で睨まれたら冷や汗の一つもかく! ・・・と声を大にして言えたらどれだけ楽なんだろう。どうして言えないのかはよくわからないのだが、言うなと何かが言っているような気がする。
「そうじゃの~。それにルーン? あの女、私からリュウトのファーストキスを奪っておいて、まだうろちょろしておったか」
怖い、本気で怖いぞ、アキ? キミの嫉妬深いところは知っているし、それは嬉しいところでもあるんだが、とりあえず今の顔は本気で怖かった。あはは、どうして俺はこういうピンチが多いのだろう。
「あはは、コクト、アシュラ、たす・・・」
「オレに頼るな」
「自分のつけぐらい自分で払ってくれ」
一応助けを頼んでみたがあっさりと裏切られた。っていうか自分のつけってなんだ!? 俺はそんなものを残した覚えはないぃぃぃ!!
「リュウト~?」
「兄さん~?」
あはは、俺たちはいま敵地にいるんだぞ? わかっているよな? これからさらなる強敵が出てくるはずで・・・少しでも体力は温存しなければいけないはずで・・・早い話が誰か助けてくれ~~~~!!
というわけで次回からの戦いを前にした平和な一時です。どこら辺が平和かって意見もあるかもしれませんが
マリア「まぁ、これもある意味リュウト君が望んだ未来って奴だからね~。う~ん、私も参加したいかも」
あなたにまで参加されたらリュウトは本気で過労死しかねませんって! ・・・まさか、リュウトを自分のところに引き寄せようと
マリア「しているわけないでしょ! 私にとってもリュウト君は可愛い弟よ。あの子ならば普通に私のこと見えそうだから幽霊と付き合うのもおつなもんでしょ」
まぁ、あれでも一応は神ですからね。幽霊ぐらいは見えるでしょうけど・・・だからといってリュウトはあなたとは付き合わないと・・・いえ、何でもありません。
マリア「フフ、そういう態度を取っておけば私も何もしないわよ♪ さ、次回からは再びリュウト君たちと天使や神たちとの戦いよ。ちゃんと応援しないと祟っちゃうからね!」
マリアの言うことはともかく、これからもリュウトたちの冒険の応援よろしくお願いしますね~!




