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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
4部8章『光と闇のロンド』
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3話 「新しい家族」

「あ、お姉ちゃん、お帰りなさ~い! あれ? そっちのお姉ちゃんは?」


 リリィが連れてこられたのはどことなく神殿を思わせる古ぼけた塔。そこに住むということがどれだけ力を持っていようと彼女、ルナが隠れ住まなければいけない立場なのだということを示しているようだ。


「この子は新しいあんたのお姉ちゃんさね。さ、お互い自己紹介だよ」


「新しいお姉ちゃん? 私、リリカだよ~、よろしくね~!」


「え、えっと・・・あたしはリリィ。よろしくね、リリカちゃん」


 純粋に新しい家族が出来たことを喜ぶリリカと少し遠慮がちなリリィ。状況を考えれば当然な気もするが未来を知っていると違和感もあるな、この光景は。


「ねぇねぇ、お姉ちゃん・・・あ、えっと~リリィお姉ちゃん、ご本読んで♪ ご本!」


「え、ああ、うん。これでいいのかな?」


 明るいリリカとそれに引っ張られている気がするリリィだが、おそらくルナさんはそれを狙っているのだろうな。それがわかるがゆえに・・・先が予想できるがゆえに辛いなんてな。


「ふふ、仲良くしておくれさね。人生どこで何があるかわからないものさね。でも1人でなければ生きていけるものさね」




「ま、魔法ですか?」


 翌日にリリィがルナから告げられた言葉にリリィは驚愕の声を上げる。それはそうだろう、魔力が多いだけでリリィは不幸になった。だというのに魔法を教えるなんて言われても嬉しくはないだろう。


「あんたの気持ちはわかるさね。でもね、どこでどんな力が必要になるかなんて誰にもわからないさね。イザって時に力ないことを嘆かないで済むように、手に入れられる力は手に入れておいた方がいいさね」


 ああ、その言葉は俺の言葉でもある。いつかアキに語ったことがある、力が必要な時にその力がないことで涙を流すことはしたくないのだと。だからルナの気持ちはわかる、そうわかるんだ。


「でも、その力が不幸を呼ぶことも・・・」


「そうさね、確かにあるかもしれないさね。でも、あんたのその力は消すことはできないものさね。満足に使えないばかりか、暴発しちまうかもしれないじゃ不幸以外呼びはしないさね。けどね、自由に使えればそれはあんたに幸せももたらすかもしれないさね。守りたいものを守ることができるかもしれないさね。ないものをあるようにするには限界があるけどね、あるものを隠すのを力次第じゃ簡単なことなのさね」


 実際にはルナの言うほど力を隠すというのは簡単なことではない。だが、使えることで起きる不幸よりも使えないことで起きる不幸の方がずっと多いのだろう。俺だって・・・あの時今と同じ力があれば姉さんたちを助けられたかもしれない。そんなもしもは無意味だけどな。


「あたしにそんな力が・・・不幸から誰かを守れるかもしれない力?」


「無理にとは言わないさね。ただ覚えたければいつでも教えてあげるさね・・・だからよく考えておくれさ」


 彼女のためを思えば教えておいた方が絶対にいい。だが、それを強制しようとは思わない。・・・その瞳は間違いなく慈愛にあふれている。良い人だな、ルナさん。




「ルナさん! あたしに・・・あたしに魔法を教えてください!」


 リリィがこの一言を言ったのはそれから数日後のこと。無理強いはしないの言葉通り、ルナさんはあのあとそれについて口出しはしなかった。本人が悩み決めること、本人が知りたくないというのならそれでいいと本当に思っていたのだろう。


「本当にいいんさね?」


 確認の言葉にこくんとうなずいたリリィ。・・・そうだな、力を得るというのは1本道だ。得てしまった力はどれほど後悔しても容易には捨てられない・・・手に入れるときの何百倍もの苦労が必要なものだ。もっとも、俺は後悔はあっても捨てたいと思ってことはないぞ?




 それからさらに数日後


「え~い! ファイヤーボール!」


 リリィの放った魔力が小さいながらに炎を形作る。アキのに見慣れているせいか(範囲無制限なら世界を焼き尽くせるアキのが異常なのだが)非常に小さな力に見える。リリィはここから始まった・・・いや、これぐらいの力しかもっていなかったにもかかわらず化け物と迫害されたわけか。


「そう、それでいいさね。その感覚を忘れるんじゃないさね。まずは弱くてもいい、力を魔法の体系に沿って発動させることが安定のカギさね」


「はい! ルナさん!」


 こうやってリリィの訓練は続き、もちろん家族としての暖かい日々もあって・・・幸せであっただろう日々は過ぎて行った。


 そして・・・

幸せがあるから不幸がある。良い時を知っているから悪い時がより辛い・・・そういうことなのです。


レーチェル「ま、そういう考えもあるわね。でも逆もしかりよ・・・辛さを知っているから幸福を感じる。私やリュウト君のようにね」


たしかにあなたやリュウトは辛さを知っているから今が幸せの口ですね。リデアやレミー、アキなんかもそうですが


レーチェル「そうね、まぁ力のあるものが幸せっていうのはそう簡単に得られないってことよ。こんな力誰かのために使わなければただの暴力だもの」


そのただの暴力を拷問という形で振り回しているのはあなたでは?


レーチェル「ちょっと・・・私の愛のお仕置きを拷問と一緒にしないでほしいわ・・・そうね、あなたにもたっぷりと私の愛を教えてあげるわ」


いえ、結構です。けっこう・・・だって言っているのに~~~!! いやだ~~!(ズルズルと引きずられて退場)

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