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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
4部7章『伝説の魔女を継ぐ者』
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5話 「妹だから」

「な、馬鹿な!?」


 渾身の力を込めて放った俺たち3人の合体魔法剣・・・まさに切り札そのものである氷炎風竜斬をこうまで簡単に防がれるとは思わなかった。はっきり言って、止めには至らなくてもそれなりのダメージは想定していたんだ。


「甘い、甘すぎるのさね! 確かに自分より上の相手に最大の技をぶつけようというのは悪くないさね。でも、それの効果を想定した時点で坊やの負け。そして、破られた程度で動きを止める嬢ちゃんたちはさらに落第さね!」


 ? ・・・あっ!? しまった!! さっきのは・・・防御じゃない!?


「・・・えっ?」


「きゃあ! わ、ワタシとしたことが・・・」


 とっさの事態に動けなかったアキとリデアにお互いの攻撃の余波が届き・・・彼女らをなぎ倒していく。


「アキ! リデア! 大丈夫か!?」


 返事はない。最悪の状況に心拍数が上がるのが自分で分かる。だが、


「呼吸はある・・・気を失っているだけか」


 慌てて近寄った彼女たちは確かに息はあった。とりあえず安著の息を吐くと同時に感じる悪寒に振り向きざまに剣を振る。


「ふふ、正解さね。でもね、竜の坊や・・・あんたに安著の息を吐く余裕なんてないさね。残ったのは坊やだけ、坊やが倒れればゲームオーバーさね」




 分かたれたもの それは光と闇。本来は入り混じっているべきものが、その強さによって混じり合うこともできず分断された。


 彼女は光、わたしは闇。普段は彼女の光が強すぎてわたしは表に出てはいられない。だからわたしは彼女の光が弱まった時に世界に闇を振りまくの。わたしが存在してもいいように・・・わたしの存在を認めてくれる人たちをそっと優しい闇で守ってあげるために。


 わたしの意識が浮上する・・・体の支配権を手に入れると同時にその証として黒く染まった羽が宙を舞う。状況はわかっている、厳しい状況だけれども逃げるわけにはいかないわね。きっと・・・あの子もそうするだろうから


「悪いな、どれほど不利だろうとこれが俺のスタンスなんだ」


「あはは、まぁ悪くないさね。野生の動物と同じ闘争本能・・・自身の不利は絶対に明かさない。面白いさね!・・・!?」


 リリィが飛んできた闇の矢に一瞬だけ顔色を変える。さすがのあなたもこれは予想外だったかしら?


「ふふ、そのゲーム・・・わたしも入れてもらえないかしら?」


「堕天使の嬢ちゃんかい? あいにくあんたはお呼びじゃないのさね!」


 わたしに対してバチバチと威嚇してくるのは勿論リリィ。はっきり言ってリリィの闇はわたしとは質が違う。もっと人工的な、ドロドロと濁った闇ね。それが彼女自身の物ではないとしても。


「残念だけど・・・負けられないのはわたしも同じなのよ。ファントムアロー!」


 降り注ぐ幻影の矢・・・そして、やっぱりあなたは戦いに関しては天才かも知れない。この技はレミーが使った不完全なの一回しか見ていないはずだというのに・・・。


「なるほどねぇ、やっぱりあんたたちの強さはそれの様さね。相談などせずとも分かり合える・・・弱さとそしてあたしには心底羨ましい強さを併せ持っている。でもね・・・まだまだあんたたちはひよっこさね!」


 そ、そんな! リリィは降り注ぐ幻影の矢をまるで気にすることもなく空気の層に隠れたリュウトだけをその炎で狙い撃ってきた!?


「あの状態から避けるのは厳しい・・・ならば多少のダメージは覚悟して次の手をうつ。戦いとはそういうものさね」


 よくいうわよ・・・わたしのファントムアローを受けてあの程度のダメージなんてね。あれじゃまるでレーチェル。いえ、たぶん同レベルぐらいの能力は持っているんでしょうね。これは・・・勝ち目がないかも。


「堕天使レミー・・・でいいんだよな?」


「あらぁ~、なにかしら? リュウト」


 全身を焼かれて本当は息をするのもつらいはずなのに、そんなことはおくびにも出さずにリュウトは言う。きっと、彼のことだからとてつもなくふざけたことを言う気なのでしょうね。


「お前にだってわかっているだろう? この勝負に勝ち目はない・・・だからお前はみんなを連れて逃げろ。時間稼ぎぐらいなら俺がする。どうやらこいつの目的の大部分は俺のようだからな」


「・・・ふざけないでちょうだい。逃げるのならわたしでなくてあなたのはずでしょ? わたしのような闇なんて死んでも・・・」


 そう、誰も困らないはず。そしてリュウト・・・あなたは多くの人に必要とされている。だから犠牲になるのなら・・・


「それこそ、ふざけるな・・・だ。こういう時に逃げるリーダーに誰が付いてくる? それにお前も妹だ・・・妹を犠牲に生き延びる兄などいるものか。ついでに言えば死ぬ気もないぞ・・・この程度で死んでたらレーチェルに笑われちまう」


 明らかな強がり・・・だというのに


「頼む・・・俺の代わりにみんなを守ってくれ。無論、お前自身も・・・」


 だというのに・・・どうしてわたしは何も言えないの? わたしのいる場所は冷たい闇のはずなのに・・・ここはこんなにも暖かい。


「・・・わかったわ。でも絶対に生き残ること、それが条件よ」


「ああ、わかった。約束は守る」


 あなたは本当に強い光を持つ人・・・そして誰よりも闇に近い場所にいる人。適わないわね・・・。


「じゃあ次に仕掛けたら一気に頼むぞ・・・まぁ、この様子を見る限り大丈夫だろうけどな」


 そうね・・・明らかにわたしたちが逃げようとしていることに気づいて見逃すつもりだわ。だから成功自体はする。あとは・・・


「よし・・・行け!」


 だから必ず生きて帰ってくること・・・わたしにこんな思いを教えてしまったのだから。

堕天使レミーさえも通用せず・・・ということで次回がこの章の最終局面になります。


メイ「まさかレーチェル殿並みの相手とは・・・リュウト殿でも厳しいのでは?」


実力から行けば惨敗でしょうね。ちなみに言うと、あくまで堕天使レミーの見立てですから正確な実力差はわかりません。どちらもずっと高レベルだってだけですから。


メイ「どちらにしてもただでは終われそうもないですね。頼りの綱はレーチェル殿か・・・」


もう1人の・・・ですね。では次回もよろしくお願いいたします!

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