4話 「届かぬ刃」
「さぁ、お前が見たがっている全力を見せてやる! 行くぞ! リュム!! 竜神剣、第2封印解除!!」
ズシンと体に来る衝撃。今までこの第2封印は属性を集める目的以外には使ったことがない。それはあまりに大きすぎる竜神剣からのフィードバックが俺の体に著しい負担を与えるからだ。おそらく・・・どんなに長くても5分までは持たないだろうな。
「なるほど、聞いていたよりは一段階進歩したようさね。竜の坊や・・・なかなかやると言っておいてやるさね」
「そんなに言われるほど大した条件じゃなかったのさ、こいつの第2封印の解き方はな」
そう、まったく大したことじゃなかった。その条件は信頼すること。リュムを・・・ではない。仲間をだ。
守る・・・それだけでは駄目だったんだ。時に守られるということ、信頼するとは両方の思いを知らなければできない。だからこそ皮肉なものだな、あんな経験が解放に役立ったというのだから。
「そんなことはどうでもいいさね。大切なことは坊やが・・・いや、坊やたちが強くなったということさね」
たのしげにそう笑うリリィ。いや、実際に楽しいんだろうな。それは一見、アシュラを思わせるが決定的に違う。
「ふ、ふん・・・あんたもアシュラの同類ってわけ!?」
そう問いかけるリデアは強気なようにも見えるが、震える声を聞く限り気づいているのだろう。
「同じ? あたしがあの坊やとかい? あっはは、そりゃ勘違いもいいとこさね。あたしはあの坊やみたいに勝てるかどうかわからない戦いを楽しむ趣味はないさね。ただ・・・必ず勝てる戦いなら相手が強い方が楽しいってもんさね」
たのしげな笑みをにやつく笑いに変えてきたのは間違いなく精神的な圧迫をかけるためだろう。そうとわかってなお冷や汗が止まらないのはきっと理解してしまっているからだ。リリィの言にはほんのわずかな嘘も誇張もないと・・・
「ほらほら、何を固まっているんさね。竜の坊やはそんなに長くその状態を維持できないはずさね・・・じっと立ってタイムアップはお互いに詰まらないさね」
・・・確かにそうだな。この力を使った以上はゆっくりしている時間はない。ならば・・・僅かなアイコンタクト、ただそれだけでいい。
「行くぞ! 竜神流・・・刹那!」
毎度おなじみの感のある高速の突撃技。突撃というのは案外対処法の限られた技だ。そしてこいつならばおそらくは・・・
「あっはっは! 坊やが先陣を切ってくるとはねぇ、そういう思い切ったところ嫌いじゃないさね・・・!?」
思った通り、自信があるがゆえに真正面から受けようとした。だからこそ、俺が横に避けたのは意外だっただろう?
「突撃はリュウトだけの得意技と思うな!」
俺の背後から突っ込んできたのは勿論アシュラ・・・!?
「坊やも忘れるんじゃないさね。言ったはずだよ、魔女が物理攻撃が出来ないと思うな・・・ってね!」
確かに虚をついたはずの攻撃はリリィとアシュラの攻撃がお互いに同時にヒットする形になった。だが、受けたダメージは・・・
「リデア!!」
「わ、わかっているわよ! タイムフリーズ!!」
リデアのタイムフリーズで得た時間を使ってアシュラをリリィの傍から引き離す。しかし、こんなことがあり得るというのか?・・・あのアシュラが一撃で気を失うなんて
「ほらほら、よそ見なんてしている暇はないさね!」
タイムフリーズの持続時間が過ぎたとたんに驚きもせずに次の攻撃に移るリリィ。回復に移る暇もないのか!?
「あ、アーくん!? い、今、回復に!!」
「駄目だ! 来るなレミー!!」
しまった! レミーは元々回復役・・・そしてだからこそ周りの消耗具合には敏感だ。気づかれる前に声をかけるべきだった。
「っ!? 大いなる土の力よ、我を守る盾となれ! グランドシールド!」
土の力は最大の防御力を誇るパーティの盾。ましてコクトならレミーの防御に手を抜くことは絶対にありえない。だというのに
「あははは、全然駄目さね! そんな防御じゃ話にならないさね!」
そう笑うリリィの言葉通りにまとめて吹き飛ばされた二人。見た感じは息はあるように見えるが、回復の時間どころか確かめに行く時間さえもない。
「アキ! リデア! 一気に決めるぞ!」
「むっ? というとあの技か? 確かにこの状況を変えるとなれば仕方あるまい」
「気に入らないわ・・・でも兄さんの顔を立ててあげるわ。い、一応なんだからね!!」
・・・こんなときにまで張り合わないでくれよ。と言いたいところだが、そんな暇もありはしない。これで勝てなければ・・・いや、今考えてもしょうがないか。
「『我が思いの形は常に一つ・・・汝の力を借りて、ここに現出させん!』ドラゴンソウル!!」
「『青白く輝く世界は美しき死への誘い。氷の女王の吐息の中に汝を誘わん』ブルーブレス!」
炎の竜と青白い吐息・・・2つの相反する力は俺の剣、すべての属性を総べる竜神剣の元で一つになる! 行くぞ! これが俺たちの切り札の一つだ!!
「竜神流・・・氷炎風竜斬!!」
これが通用しなかったら・・・いや、必ず! 必ず勝つ!!
「・・・なかなか。でもまだまだ甘いさね!」
そして何気なく振り払ったリリィの杖に俺たちの全力はろうそくの火のごとく吹き飛ばされた・・・。
まさに最強の敵を地で行くリリィ! 今までに一撃で昏倒するアシュラなんていう戦いがあったでしょうか!?
レミー「ム~、わたしが全然活躍してないよ~!」
お、久しぶりの天使モードのレミーです。まぁ、レミーは今は堕天使化してからが勝負だから・・・
レミー「ム~! わたしが本体なんだよ!! 元々向こうがおまけなのに・・・」
まぁ、そこらへんはおいおい・・・さて、今回もきっと出てくる彼女・・・リリィにどこまで迫れるのか! 次回をお楽しみに!
レミー「わたしのことも忘れないでよね~!」




