3話 「1人ではなく」
「行くぞ! リュム! 竜神剣第一封印解除!!」
竜の坊やの声が響く。当然あの坊やにもあたしがそれを待っていたことはわかっているはずさね。そうと知ってなお封印を解除してきた坊やは勇気も・・・戦術面も合格と言っていいだろうさね。だが、それだけで勝てるほど甘くないさね、あいつは!
「修羅・・・烈風斬!」
前方に威圧的な気を吐きだす竜の坊やを置いての気配を殺した背後からの攻撃。彼の目的は楽しむことだったわね、だからこそ戦闘開始前の不意打ちは絶対にしない。同時に戦闘が始まれば何でもアリ・・・ふふ、なかなかいい心がけさね。もっともまだ力不足は否めない様さね!
「甘いさね! どんな威力があろうと当たらない攻撃に意味はないよ!」
「ふん、甘いのは・・・貴様だ!」
おや? 当たらないのは承知の上ってかい? なるほどなるほど・・・これはそこそこにいい線いっているかもしれないさね。今はまだ頼りない・・・まさに『未来の希望』ってかい? ルーン。
「今度の炎を先のものと同じと思うでないぞ・・・『我が思いの形は常に一つ・・・汝の力を借りて、ここに現出させん!』ドラゴンソウル!!」
「逃げ道などの残しはしないぞ! ノックアップ!」
さっきまでの炎とはレベルの違う火・・・なるほど、確かに竜神剣と言うのはなかなかの力を持っているさね。そして基本技と言えども確実に使いこなせば侮れない。半悪魔の坊やの冷静さは褒めてあげてもいいさね。
「りーちゃん!」
「言われなくてもわかっているわよ! それとりーちゃんって呼ぶんじゃない!!」
先ほどノックアップで作られた土の壁のさらに外に水と冷気で作られた氷の壁・・・ね。竜の嬢ちゃんの氷属性だけで作るよりも確かに強力になるさね。で、竜の坊や? まさかここで何もしないということはないでしょうね?
「この状況で俺まで挑発するような顔・・・安心しろ! 特大の一撃をくれてやる!! 竜神流・・・スタースクリュー・タイプA!」
ほう? なるほど竜巻であたしを拘束すると同時にエルフの嬢ちゃんの炎をあおって大きくしようって訳さね? 即席で作ったコンビネーションにしては十分すぎる・・・いや、6人全員が自分のやるべきことを分かっているということさね。あの女が目指した対策であり、ルーンが希望を託すほどの連中・・・。だが、まだあたしは総合的な合格点は出してやれないさね!!
「1つ、手品を見せてあげるさね! 火のはこんな使い方もあるってこと、覚えておくことさ!」
火と風は親和属性・・・それはなにも合わせるという意味だけじゃないさね。急激な熱の発生はそのまま空気の壁を作り出す・・・火の力は火に対する防御にも優れる風を生み出せるのさね!
「まぁ、坊やたちにしてはよくやったというべきさね。さ、このレベルじゃまだ勝てないってわかったさね? いい加減竜神剣のレベルを・・・!?」
ち、違う!? これは・・・まだ攻撃が続いているっていうのさね!?
「竜神流・・・スタースクリュー・タイプB!!」
タイプAの逆・・・竜巻の細くなっている先端を前にした技!? そうかい、Aが範囲と拘束に長けた技ならBは威力と貫通力に長けている!?
「ふふ、これは参ったさね。あれだけの攻撃をおとりにしてあたしに一撃を与えに来るとはね」
本気で相対してるならともかく、今の状態であれの直撃を受けたら危なかったかもしれないさね。まさか、軽々とあたしの肩をえぐってくるとは・・・体に受けようものなら徐々に太くなる竜巻に抉り取られて最後はバラバラに・・・なかなかえぐい技を使ってくるじゃないさね、竜の坊や。
「悪いが、俺たちはあんたを過小評価する気はない。これぐらいの手は打たせてもらうさ」
そうさね、あたしの想像を超える確かにいい手だったさ。けれど、恐ろしいのはむしろそれを全員が理解していたということ・・・フフ、これは面白いさね。ルーン悪いけど、ほんの少しだけ遊ばせてもらうさね!
!? リリィの気質が変わった!? 今までは遊び半分・・・いや、1割にも満たない力で戦っていたのだろうが、少しは本気になったということか。
「さて、竜の坊や? あたしの体をここまで燃え上らせてくれたんだ、責任は取ってくれるんだろうねぇ?」
ぞくりと寒気を感じさせる笑み。色気なんかに今更惑わされるつもりはないが、この圧倒的な威圧感は堪えるな・・・もっともどんな相手だろうと負けるつもりはない! 勝てなくとも、守るためには負けられないんだ!!
「ちょっと! かってに仕掛けてきてその言いぐさは気に入らないわ! こ、これでもワタシ『だけ』の兄さんなんだから!!」
「・・・リデア、リュウトはそなただけのものではない。むしろ私だけのものだと主張したいところだが、今はそんな場合ではないな。リリィとやら、そなたが何者でどれほどの力を持っていようとも、私はリュウトを失うわけにはいかんのだ!」
そうだな・・・今までも力及ばぬ相手を思いで打ち破ってきたことは何度もあった。それが綱渡りの連続の・・・奇跡と言ってもいいかもしれないものはわかっている。だが、諦めていいことなど一つもないということだけは事実なんだ。おそらく特別モードでもまだ足りない・・・ならば一度としてまともに使ったことのないあの状態の全力を使えばいい。もう、あの力を開けるカギはわかっている!!
「さぁ、お前が見たがっている全力を見せてやる! 行くぞ! リュム!! 竜神剣、第2封印解除!!」
俺たちの全力、俺たちの思いのすべてにかけて・・・この戦い、生き残って見せる!!
リュウトの思いはいつだって勝つことではなく守ること。だからこその強さと言うのもあるのです。
ルーン「そうね、同時に弱さもあるわね」
って、今回のゲストはあなたですか・・・
ルーン「相方ばかりに目立たせるわけにもいかないわ。メインは私のはずよね?」
べ、別にどっちがメインと言うわけでも・・・先に出てきたのがあなたと言うだけで・・・
ルーン「メインは私よねぇ?」
は、はひ・・・そ、そうです。(こ、怖い・・・作者を脅しにかかるなんて・・・いや、ここでは日常茶飯事だったか。)
ルーン「ふふ、良い子ね? さぁ、読者の坊や・嬢ちゃんたちも竜の坊やがあの子を満足させられるか見ていてあげて頂戴。まだ、こんなところで止まってもらっちゃ困るのよ、私・・・」




