7話 「死を打ち破れ!」
「汝ら・・・我ら死神3人に勝てると思っておるのか?」
「何が3人よ。こっちは6人・・・倍いるのよ! まぁ、本当はワタシ1人でもいいんだけど・・・み、みんなもなかなか強いしね。い、一応よ! 一応!」
タナトスの言葉に即座に反応したのはリデア。兄さんとしてはもう少し素直になってほしいところだが、その言には納得する。3人に恐れる必要なんて全くない、それが
「まったく・・・いくら僕が戦いが嫌いって言っても死神を舐めないでほしいよ。・・・甘き死しの眠りに誘ってあげようか?」
「あいにく、私は相手の実力を過小評価はしない主義でな。だが、それを差し引いても勝つのは我らだ・・・死神? それがなんのプラス評価になろうものか。こちらには竜神もおるぞ?」
ヒュプノスの言に反応したのはアキ。そこで俺を引き合いに出されるのは恥ずかしいが、確かにアキはそういう奴だ。焦り始めるとぐだぐだになる弱点はあるが人一倍冷静に戦況を見つめて動いているのはアキだった。
「あたいの眼を封じたからっていい気にならないでほしいわ。あたいが司るのは運命の死・・・死から逃げられるもんなんてどこにもいやしないのさ」
「ふん、運命? 下らぬな。 オレはこの身1つで戦い生き抜いてきた。貴様に運命とやらが見えているのかは知らんが、それが真実とて打ち破ってやろう。・・・この場にいるのはそういう連中ばかりだと知れ」
「悪いが未来も過去も運命などという言葉で誤魔化すつもりはない。過去の過ちは俺の責、ならば過ちを償うためにも俺の剣で未来で切り裂いて見せよう!」
ケールの言葉に反応したのはアシュラとコクト。誰よりも純粋に強さを信じるアシュラ、自分自身の過ちに苦悩するコクト。どちらも運命なんて言葉に従う奴じゃない・・・そして皆の言葉はどれもらしい言葉であり、また俺自身にも当てはまる言葉なんだ。
「うふふ、あなたたちの力・・・わたしに通用するかしらぁ?」
「これが俺たちだ! そしてあまり時間もないでな、一気に行かせてもらう!」
堕天使レミーが妖艶に笑い、俺が気合を込めると同時に弾けるように空気が動く。初手を撃ったのは勿論・・・
「ふっ、貴様にこれが受けられるか! 修羅・・・烈風斬!!」
竜神剣で強化されているアシュラは俺も認識出来ない速度で突撃する。いつもの瘴気が発生していないことを考えるとあれでもまだ本気ではないのだろうから恐ろしいな。
「ふむ、技を殺されぬために威力が大事だというのならばこれじゃ! 『我が思いの形は常に一つ・・・汝の力を借りて、ここに現出させん!』ドラゴンソウル!!」
小技も増えてますます技巧派になったアキだが、元々の大威力の火力もけして衰えてはいない。いや、堕天使レミーが未知数だが、彼女を除けば依然アキが俺たちの攻撃力ナンバー1だろうな。
「っ!? おのれ! 『死の闇よ! 我に集いて愚か者に死を与えよ!』」
タナトスの詠唱と共に現れた巨大な闇が無数の鎌を形成して俺たちに襲い掛かる。だが、それを警戒するものはいない。
「『大いなる地の力よ、我が友たちを守る壁となれ!』グランドウォール! ふっ、死の力だろうと闇だろうと俺がいる限り傷つけさせはせん!」
俺同様に剣士、いや騎士を名乗っているコクトには不満はあるかもしれないがコクトの地の力は守りに特化している。そしてあいつが守ってくれることをみな信じているからこそ攻撃に専念できる!
「ふぅ、その壁は厄介だね。でもね・・・壁では防げないものもあるんだよ? 『甘き香りよ、二度と覚めぬ深い眠りに彼らを誘え』死の香・・・」
「おっと、この手の技は以前にもくらっていてな・・・2度受けるのは俺の沽券にもかかわるんだ。相手が香りならば俺の風の壁で封じてやる! ウィンドフィールド!!」
濃厚な死の香りを風の力でバラバラに分解する。そういえばウィンドフィールドは久しぶりに使ったな。こんなんだから力の使い方が下手だとかって言われるのだろうな。
「ふん、兄さんたち! 凌がれているとはいえ相手は防戦になって来ているよ! 流れはこっちさ、次はあたいの番! デスフレイム! 死の炎の中で踊りな!」
「舐めないでほしいわ! 相手が炎ならワタシの出番よ! 『ダイヤモンドダスト』! 炎ごと凍りなさい! そして」
考えてみれば俺たちは6人で6つの基本属性のすべてを網羅しているんだよな。リデアが凍らせた炎、だがあいつの役割はそれだけじゃない!
「『タイムフリーズ』! 兄さん! 後は頼んだわよ!!」
リデアの奥の手、時を止める『タイムフリーズ』。持続性がないのとリデア自身の消耗の大きさから使いながらの激しい行動はできない。だが、時の停止が効かない俺がいるとなると途端にその意味が変わる!
「任せておけ! 竜神流・・・風竜斬!!」
少しでもリデアの負担を少なくするために速攻で撃った俺の必殺魔法剣! 止めには至らなくても・・・
「馬鹿な・・・一体いつの間に」
「あたいの眼で見れなかった?」
「くっ、死を運ぶ僕たちが死ぬなんてありえないはずなのに・・・」
けして軽いダメージにはならない。いや、これはだからこその危険だったのかもな。
「何? これは・・・」
闇? いや、もっと異質なものが3人の死神から噴き出している。まさか、あいつらが傷ついたことで制御できなくなった死が暴走している?
「みんな! 離れ・・・」
ま、間に合わない? これは俺が盾になって止まるものなのか? ・・・いや、考えている暇もないな。ここは・・・
「ふふ、最後にちょっと詰めを間違えたみたいだけど、死神相手には上出来よぉ。ここはわたしがなんとかしてあ・げ・る♪」
レミー? いや、堕天使のレミーか。って、いくらおまえでも・・・!?
「ふふふ、死神さん・・・よく覚えておくことねぇ。わたしの闇は漆黒の闇。たかが死ごときでわたしの闇を包めるはずがないわ」
全てを飲み込みそうな死そのものをその漆黒の羽を使って俺たちの方へ行かないように受け止めながら堕天使レミーは妖艶に笑う。そして徐々に死は収まりを見せ・・・完全に消えた時には死神たちはどこにも存在していなかった。
「レミー・・・いや、堕天使レミー・・・か。あいつらはどうしたんだ?」
「残念ながら、彼らをどこかにやったのはわたしじゃないわぁ。彼らを転移させたのはレーチェル・・・どうせ、彼らを使って何か考えているんでしょ」
レーチェルか・・・まぁ、万が一にもあの3人にどうにかされるとは思えんし・・・いいの・・・かな?
???
「あんたのお気に入り・・・上手くやっているようさね」
「そういうあなたも気にしているようだけどね」
「そうさねぇ・・・確かにそうかもしれないさねぇ。一度会ってくるとしようさ」
「お手柔らかにね・・・今のあの子たちじゃあなたが本気でかかったら・・・あら、もう行っちゃったか。まぁ、わかっているでしょう・・・」
さて、今回のテーマは勇気・・・これは2人にかかっているのですが
アキ「うむ、そこらへんはわかりやすいな。だが、本当にどこにでも出てくるなレーチェル殿は」
まぁ、この物語を裏で操る数人の内の1人ですからね。
アキ「で、次章はその内の1人が出てくるというわけか・・・」
あははは・・・では次回予告を・・・
アキ「誤魔化したな。まぁ、良しとしよう。立ちふさがるはルーンを思わせる妖艶な魔女! またしても私のライバル登場か!? 次回竜神伝説第4部7章『伝説を継ぐ魔女』まだまだ私たちの冒険は止まらぬぞ! 応援よろしくなのじゃ!」




