6話 「レーチェルの加護」
「我の力とその剣の力が同質だと?」
タナトスの暗い声が響く。そう、死という概念ではないとはいえ竜神剣とタナトス・・・死神の力は同じものであるはず。だからこそ、共通の弱点を持っている。
「竜神剣は斬るという能力・・・だが、あらゆる物が斬れるわけではない。あくまで俺のエネルギーを消費して斬り裂けるものだけだ。お前の能力は死・・・俺たちを直接その能力で殺せぬように、強い力の込められている技までは殺せない。つまり・・・」
「なんのことはない。手加減をせずに思いっきり攻撃をすればいいというだけのことだ」
俺の言葉をアシュラが継ぐ。そして事実その通りなのだろう。俺たちのメンバーは守りよりも攻撃に特化した連中ばかりだ・・・コクトを除けばな。そして
「さてと・・・さすがにそろそろ温存なんて言ってられる状況じゃなくなってきたか・・・久々にいくぞ! リュム!!」
「良かろう・・・我が力、存分にふるえ・・・」
「竜神剣・・・第一封印解除!!」
竜神剣の第一封印・・・その力は俺たち能力を大幅に上げる。その代わりの俺のエネルギーも大幅に削っていくんだけどな。
「っ!? それほどの力を隠していたか! だが・・・」
「さぁ、一気に・・・!? いや、俺から離れろ!!」
突如感じた悪寒にとっさに叫ぶ。もっとも全員俺が叫ぶ前には行動を開始していたようだけどな。
「へぇ? あたいの気配を察知するなんてやるわね。それに、この壁を張ったキミもね」
突然、現れた薄気味悪い幽鬼の攻撃を防いだのは俺ではなく・・・俺たちの周りに土の壁を張ったコクトだ。
「サポートを任せろと言って手前な・・・この程度のことが出来ねば沽券にかかわる」
「そう・・・でもね、無駄よ」
そう彼女が呟き、手を掲げるだけで土の壁はさらさらと崩れ落ちていく。
「フフ、あたいはケール。運命の死を司る悪霊・・・あたいの眼には死にかかわるものはすべて見える。どんな小さな傷もそれは弱点となり、1度ついた傷は治ったように見えても残り続ける。歴戦の勇者らしい貴方たちはさどかし多くの古傷を・・・!?」
見るものをこわばらせるその笑みで俺たちを舐めるように見・・・そして自身の表情をこわばらせる。一体何があった?
「そ、そんな!? ありえない・・・傷が傷が全くない? いえ、この戦いでついた傷は確かにある・・・なのになんでこれまでの戦いの傷が見えないの!」
傷がない? それはあり得ないだろう? 俺もアシュラも・・・いや、ここにいる連中全員体中に相当な傷を受けてきているはずだが?
「フフフ、その秘密はわたしが教えてあげるわ」
心底楽しそうな笑みを浮かべて前線に出てきたのは堕天使レミー。向かい合う二人の女・・・というような華やかさはないか。堕天使レミーだけならば妖艶とはいえるが
「リュウトたちの怪我はね、ちょっと前にレーチェルが治しちゃったのよ」
「な、何を馬鹿な! いくらって治したって言っても・・・」
「あら? 貴方たちも知っているんじゃない? レーチェルの実力は? 彼女の治療をそこいらの治療と同じにしない方がいいわ。あれはね、治しているんじゃないの。怪我をしたっていう事実そのものを消している・・・だから治療を受ける前の傷は受けたという事実ごと消失しているというわけよ」
あっさりと告げられる事実・・・とてつもなく、そして信じがたい話ではあるがあのレーチェルのこととなるとあっさり信じられるというのがまた恐ろしい。
だが、それ以上に思うこと・・・。普通なら偶然と思うところかもしれない。だが、この戦いの直前に俺たちを眠らせてまで治療をしていったレーチェル。まるで彼女の手の上で踊らされているような気さえもするな。無論、レーチェルのことは信じてはいるが・・・彼女はどこまで知っていて何を考えているのだろうか。
「リュウト・・・下らん考えは後にしておけ。奴もそうそう簡単に尻尾は出すまい。それに・・・貴様のその状態は長時間持たんのだろう?」
おっと、確かにアシュラの言う通りだな。今はレーチェルは味方・・・それだけわかっていれば十分だ。
「そうだな・・・なら! 今度こそ、俺たちらしく勝ちに行こうぜ! みんな!!」
今回はちょっと短めでしたが・・・結構重要な事実が
リデア「いまさらあの女が何していようが驚かないわよ」
いえ、もう少しぐらい反応してくれるとうれしいのですが・・・
リデア「反応するほど意外性のある行動ってあるのかしら、あの女に。なにやっても『レーチェルだから・・・』で終わっちゃう奴でしょうに。」
ムムム・・・それならいっその事・・・
リデア「止めときなさいってば! 世界を滅ぼしたって今更驚かないわよ!」
!?
リデア「ちょっとあんた本気でやる気だったの? こ、こら! 逃げるな! も、もう! そこのあんたたち次も必ず見なさいよ! や、約束なんだからね!! こら~~! 作者! どこ行ったのよ~~!!」




