2話 「マリア」
「あはは~、ごめんね~、みっともないところを見せちゃったわ。」
そう言って朗らかに笑うマリアさん。
「せんせ・・・姉さんがみっともないのはいつもの事だろ?」
普段と違い軽口を叩くリュウト・・・ううん、こっちが普段の姿なのかな?・・・をパコンとこれまた良い音をさせてマリアさんが叩く。
「ホントにごめんね~、この馬鹿がさ~・・・。」
マリアさんに案内されたのは小さな木造の家の中。勿論、私がいた宮殿と比較するのが間違いなんだろうけどね。でも、とても気持ちの良い家だと思う。・・・リュウトもここで育ったのかな?
「えっとね、もう聞いたかもしれないけど私の名前はマリア、マリア=ストルよ。ここの孤児院のお・ね・え・ちゃん・ね。」
あはは・・・よっぽど先生って言われるのが嫌なんだろうな~。あっと、私も名乗らないと
「私の名はアキ=シルフォードだ。アキと呼んでくれれば良い。」
ここはもうエルフの国じゃない。私も女王として旅をしてるわけじゃない。だから私はアキ=シルフォード・・・エルファリアはつけない。
「うん、アキさんね。アキさんは・・・エルフよね? 私はじめて見たわ~! しっかし、あの庭で木の棒を振り回して遊んでいたリュウトくんが剣士? おまけにこんな可愛い彼女を連れて帰ってくるなんてね~。」
・・・彼女!? 私が・・・リュウトの彼女?・・・あ、でも・・・リュウトとは寿命だって違うし、私が大人になる前には・・・あ、でも竜神になったわけだから伝承どうりなら・・・って私は何を考えてるのよ~~!!
「あのな~、遊んでたんじゃなくて訓練してたんだって・・・。だいたいアキは彼女じゃなくて旅の仲間・・・。」
「え~! そうなの?そうなの?? 私てっきりとうとうリュウトくんにも春が来たものかと!」
・・・何故だろう。あっさりと彼女じゃなくて旅の仲間だって言ったリュウトも、その発言を聞いて嬉しそうに見えるマリアさんも腹が立つんだけど・・・。
「うむ・・・まぁ、彼女と言ってもいいだろう。」
「なんだぁ~、やっぱりそうなんじゃない。リュウトくん、恥ずかしいからってそんなこと言ったらアキさんに悪いぞ!」
そんなマリアさんを無視するようにリュウトは私の耳元で小声で話しかけてきた。
「おい、どういうつもりだ?」
「いちいち説明する方が面倒だからな。それに・・・そのほうがそなたの秘密を聞き出せそうじゃ。」
期待についつい私の声も嬉しそうになってしまう。
「こら~! お姉ちゃんをのけ者にして内緒話しない~! で、何々! 何を話してたの?」
「マリア殿ならばリュウトの秘密を一杯知ってそうだと・・・。その、彼女としては知りたいものだ。」
「おっけ~! い~っぱい話しちゃうぞ~!」
「・・・勘弁してくれ。」
・・・駄目。
「う~ん、何から話そうかな~。」
まさに話したくてうずうず・・・って感じのマリアさんだわ。
「リュウトはこの孤児院で育ったのか?」
そう、私が先ず知りたいのはそこね。
「そうよ、リュウトくんが10歳ぐらいの時かな? リュウトくんは記憶を失っててね、私が面倒を見てあげたんだよ~。」
記憶を?・・・じゃあ、もしかして
「ではリュウトと名づけたのはマリア殿なのか?」
「あ、それは違うわ。ほら、リュウトくん! 例のアレ見せてあげなさい!」
ヤレヤレって感じでリュウトが見せたのは、(今までは服に隠れて気づかなかったけど)リュウトが首から下げていた綺麗に半分に割れたペンダントだった。しかし、随分と変わった模様をしている。
「これはね、当時のリュウトくんの唯一の持ち物。裏を見るとね、ほらここにリュウトって書いてあるでしょ?」
確かにかいてある。だが、読めるのはリュウト=アル・・・までね。その下に書かれているのは『リデア』?
「どう見ても下に書いてある名前は女の子の名前だもんね。たぶん妹なんだろうけど・・・リュウトくんがお兄さんね~、可哀想な子だわ、うん。」
不貞腐れるリュウトは無視して・・・
「マリア殿、このペンダントではリュウト=アル・・・までしかわからないのだが。」
「うん、『アルブレス』ってのは私が考えてあげたのよ。まぁ、今から思えばちょっと変だったかなって思うけどね♪」
「それを本人の前で言うかよ・・・。」
リュウトはとことん無視よ!
「なるほど・・・他に何か面白い話はあるか?」
「あるわよ~! 例えば~、この子がいつまでおねしょしてたかとかね♪いや~、いくら10歳までの記憶がないからって15になってするかね~?」
「あれは姉さんの所為だろ! 水に悪戯で睡眠薬と利尿剤なんていれるのはあんたぐらいだ!!」
え~、今回は大暴露会でした^^ でも結構後々大事になる伏線も張ってありますよ♪
リュウト「俺・・・一応主役なんだよな? 最近、酷い目にあってばかりじゃないか?」
ここのところずっとアキ視点で物語が進んでるしなぁ。まぁ・・・強くなるのはもっと先の話だからね。しばらくは・・・諦めてくれ。
マリア「弟は姉の前では弱いものよ! 運命だと思って諦めなさい!」
姉とかって言う前にマリア姉が強すぎる気もするけど・・・。メイも強いから正しいのだろうか??
アキ「アレも特別指定にして欲しいものだぞ・・・。」
うん・・・まぁ、まともな人はこの作品にはいないってことかな? あははは(汗)




