8話 「炎まといし」
1人で勝手に戦っている・・・ようなアシュラ。でも本当は私にもわかっている。彼が前線で目立てば目立つほどに当然私に対するマークは薄くなる。
「不用意にかたまるような奴にはこうじゃ! 『フレイム!』」
肉弾攻撃主体のアシュラに対しては固まった方が対処しやすい。そしてそれはそのまま私にとっての好機となる。いえ、それ以前にああやって自分が目立つことで私に対する攻撃を減らしているのかもしれない。マジシャンである私は他のメンバーに比べて明らかに体力はないのだから・・・。フフ、アシュラは絶対に認めないでしょうけどね。
「ふん、何をしている? そのように散開してはオレに個別撃破してくれと言わんばかりだぞ?」
離れればアシュラが、固まれば私が・・・案外私たち2人は相性がいいということね。まぁ、極端な遠距離型と近距離型のコンビなんだから敵としては対処がとりにくいってことかな? リデアのことさえなければこんなコンビネーションをリュウトとできたのにな・・・ってそんな場合じゃないか。
「真紅なる業火よ。我が命の火を糧に偽りの生命となれ!・・・『ファイヤーバード!』」
8匹の火の鳥をはじめとする多数の火が飛び交う戦場。ほんのちょっとアシュラがいやそうな顔をしたのは彼が火を弱点としているからかしら? でも直接狙われたのならともかく、この程度の火が周りにあるだけでどうこうなる貴方じゃないでしょう? 弱いって言ったって私の『ドラゴンソウル』の予熱を苦にしてない時点で1億度程度なら問題ないのでしょうし。
「ふん、貴様とコンビを組むと面倒でかなわん。」
「おや? この程度の火で泣き言をいうとは『闇の牙』らしくはないのでないか?」
お互いにかわされる軽口。どちらも勝利を微塵も疑っていない。そう・・・私たちはまだこんなところでは負けられない。私もリュウトと同じ、仲間の為ならもう死ぬのは怖くない。でもそれはここでは到底ありえない。
「お、おのれ・・・! 我らと戦いながらそのような軽口を叩くとは! 愚弄しおって!!」
愚弄・・・ねぇ? アシュラも呆れたような顔をしているけど、そんな発言をする時点で戦いなれていない・・・いえ、こういう命がけの苦しい戦いをしてこなかった証拠よね?
これがリュウトだったら怒る前に反撃の策の一つでも実行している。彼は劣勢すぎる戦いを戦いぬき、生き抜いてきた人だから。そして私も・・・きっとアシュラもかってはそうだったのかな? だからほんのちょっとのアイコンタクト、これだけで十分すぎる。
「ふん、戯言を言うならあの世でさえずれ。修羅・・・烈風斬!!」
私の考えを即座に理解して・・・いえ、アシュラも初めからそう考えていたのかな? ともかく先制を仕掛けてくれる。私やレミーは後衛、敵陣のまっただ中で戦うようなことはできない。一番危険な事は前衛がやってくれる、だからその命を預かる私たちにはそれを生かす義務と責任がある!
「星の子の祈りを受けて、大いなる光よ、万の敵を打ち倒す戦輪となれ! 『スターループ』!」
この技は元々は多くの格下の敵をまとめて安全に倒すために作った技だけど、多くの輪を細かくコントロールすることができる技にはこんな使い方もある。・・・そう、こんな使い方が!
「くっ!? ば、馬鹿なこんな輪で我らの動きを封じ込めるだと!?」
アシュラの突撃に正面からぶつかり合える力がない以上は彼らは四散するしかない。でも、その動きを阻害するように『スターループ』が展開されていたら? 彼らにはもう逃げ場はない。
「ふん、よくやった・・・と一応言ってやろう。」
逃げ場を失った敵に綺麗に技を決めたアシュラだけど、その口調は苦々しげね。まぁ、それもそうか・・・あの一撃で致命傷になっていない。またしてもアシュラの嫌いなしつこいだけの彼流に言えば『つまらない面倒なだけの戦い』なのだから。そして彼らを一撃のもとに倒そうとするならば、それは・・・
「何を躊躇する? 貴様とて気が付いているだろう? オレたちが使える最高威力の攻撃がなんであるのか程度は。・・・この先の前哨戦だ、楽しき戦いは望めなかったが実験台程度にはなってもらうとしよう。」
「アシュラ・・・」
本当にいいの? そう聞きたかった。でも当のアシュラがそう決めたのなら・・・これが出来ればこの先の戦の益になるのは事実だから・・・私に異論を唱える余地なんてないよね。
「わかった・・・加減はできんゆえに恨むでないぞ。我が思いの形は常に一つ・・・汝の力を借りて、ここに現出させん! 『ドラゴンソウル!!』」
まともに当たれば魔王さえも一撃の下で焼き尽くす私のオリジナル魔法である『ドラゴンソウル』。ううん、あの時よりももっと今は強力になっている。そして勿論、私が狙ったのは敵である彼らではなくて・・・。
「なっ!? 仲間を撃つだと!? ま、まさか・・・いや、あの火力で出来るはずが・・・」
そう、私が撃った対象はアシュラ。勿論、狙いはリュウトとよくやるアレだけど、リュウトが竜神剣で受けるのに対してアシュラは自分自身の肉体で受ける。火柱のようにしか見えないアシュラにわたしの心配も募る・・・募っていたんだけど。
「くっくっく、確かにオレは火は少々弱いがな・・・この程度の火にどうにかなるほどではない!」
ああもあっさりと火力を爪に集められるというのも悔しいものがあるなぁ。アシュラといえば、ほんのちょっと毛皮から焦げ臭い匂いがしているぐらいだし。そりゃ、火力はあっても敵意はこもってはいない火ではあるけどさぁ・・・ドラゴンソウルならば確実に10兆度は優に超えているはずなんだけどなぁ
「貴様は何を呆けているのだ?」
えっ? え!? あはは、いろいろ考え後としている間に勝負はついちゃってたみたい。でも、やっぱりアシュラは戦いに関しては頼れる。でも彼が目指しているのは勝利ではないのだと思う。何が何でも勝つ・・・ある意味リュウトがそうであるように彼が思っているならば、私たちと戦った時もリュウトと魔界で戦った時も彼の勝ちだったと思う。アシュラの求める『楽しい戦い』と勝利の狭間・・・いつか知らないといけない気がする。
「ふん、貴様も色々と余計なことを考える奴だ。・・・奴のようにな。リュウト! 操りの糸とやらを斬るならさっさとしろ! それともオレが止めを刺してやろうか?」
「ちょ、ちょっと待て! 今、斬るから早まった真似をするなよ?」
アシュラの言葉にリュウトが慌てて出てくる。治療を途中で中断させられた格好になったリデアがむくれているけど、あの様子ならリュウトは大丈夫そう。私もちょっと安心ね。
ん? なんだろう? このあたりに漂う甘い香りは・・・ふぁ~、なんだか眠くなって・・・ZZzz
快勝のアシュラ&アキペア。まぁ遠近の高攻撃力ペアですからね、ネックは回復が出来るのがいないぐらいで。
アキ「うむ、しかし私はまだしもアシュラは回復が必要な事態などまずないから問題あるまい。・・・そなたが作っているというゲームでは別なようだが。」
そ、それはそうでしょう? ゲームで回復が不要なぐらい強いキャラで出したらバランスも何もないじゃないですか! そこらへんは一応調整してあります(汗)
アキ「うむ、まぁそれは良しとしておこう。私のことでもなし・・・ところでこの章はまだ続くようだな? しかも私があっさりと眠らせれているようだが?」
ええ、もう1話分の話しが存在します。眠りの香は以前にも出てきたことありますよね?
アキ「なるほど、あの人の仕業か。ならばあっさりと眠らされても仕方ない。では、次回は彼女が何をするのかを楽しみにしておいてくれ!」
あ~! 勝手に終わらせないで~~~!! しかも彼女ってばらしてるし! って幕が下りてる!? なんで作者よりキャラの方に権限があr




