4話 「パートナーは?」
「がっはっは! こうもたやすくあいつらが倒されるとは思わなかったな。」
「本当ですね。でも、あの不吉な女はもう戦えないようですわ、兄上。」
仲間が倒されたというのにあの態度・・・いや、そもそもどこまで正気を保っているかもわからない相手に言ってもしょうがないか。
「さて、じゃあお相手してもらおうか。」
「あら? 貴方ですの? リーダーというものはもっとどっしり構えて最後に出てくるものですよ。」
・・・なるほどな。この程度の情報はすでに伝わっているってことか。もっとも、そう障害になるようなことではないが。
「ここでお前たちを倒せば終わり・・・ならリーダーとして体を張らないとな。それにリーダーがもっとも強いとは限らないぞ?」
そう、俺たちの中で一番強いのは俺でなくてあいつだからな。
「ふむ、その意気やよしと言っておこう。で、もう一人は誰だ? まさか、一人で戦うとは言うまいな?」
本当なら言いたい所なんだがな・・・俺一人がつらい思いをするならそっちの方がいい。アキは嫌がるにしてもだ。
だが、今回に関してはそうもいかない。そして残りの3人、アキ、アシュラ、リデア・・・の誰であっても戦力的には問題ないが、俺が選ぶ相手は決まっている。
「無論、リュウトのパートナーはこのわた・・・」
「リデア、頼む。」
「!? りゅ、リュウト!? な、何故、私では・・・」
当然のように前に出てきたアキが目を丸く見開いて抗議する。対するリデアはこちらも当然というように俺の手を取る。・・・僅かに震えていたような気がしたのは気のせいか?
「おい! 戦う前に話す時間ぐらいはくれるんだろ?」
一応対戦相手に聞いておく。まぁ、拒否されたなら戦いながらでも話すがな。
「がっはっは! 好きなだけ話せ! 今生の別れ程度は好きにさせてやろう。」
「まぁ、さすが兄上。お優しいのですね。」
・・・まぁいいか。楽に話す時間を手に入れたことには変わらない。
「ということでリデア、悪いがアキと話す時間をくれ。・・・アキはこっちに来てくれないか。」
俺の手を放そうとしないリデアを何とかなだめ、アキを少し離れた所に呼ぶ。・・・この話はリデアに聞かれると少し困るんでな。
「リュウト・・・なんで私をパートナーにしてくれないの?」
うっ!! さっきまでの女王としてのきつめの目線も辛いが、この涙目はもっと辛い。
「悪い、初めに言ったタッグバトルを受けた理由って奴でな。この場でリデアに教えておきたいことがあるんだよ。内容的にも性格的にも口で言うよりも体験させた方がいいことなんでな。」
「・・・わかった。今回はこれで引くけど! 必ず、後で教えてよ?」
最初に今は言えないとも言っておいたからだろう。アキはあっさりとひいて・・・念を押して行った。ここら辺の聡明さと堅実さは女王としての部分なんだろうなぁ。
「・・・兄さん、話は終わった?」
「ああ、またせたな。」
「ふん、まぁいいわ。このワタシを選んだっていう聡明さに免じて許してあげる。フフ、ワタシの手にかかればあんな奴らなんていちころよ。」
・・・やっぱりか。リデア、今まではそれでよかったのかもしれない。そしてキミの実力ならば、この戦い程度ならばそれでも何とかなるのかもしれない。だが・・・この先の戦いはそれじゃあダメなんだ。おそらく・・・いや、絶対そんなことでは通用しない相手がこの先には控えているだろうからな。
「・・・行くぞ、リデア。」
だが、それは言葉ではきっと伝わらない。彼女はずっと・・・一人で生きてきた。そうさせてしまったのは俺なのだから。
「えっ? ちょ、ちょっと兄さん!?」
お互いの戦闘準備が整ったならば、それが戦いのゴング。これでも不意うちの類がない分だけ実戦としては破格のフェアプレーと言える。
「ふん、確かに速い。いや、実力は2人とも俺たちと互角以上かもしれんな。」
「ええ、ですが私と兄上のコンビを倒すにはまだまだ不足ですね。」
・・・そうだろうな。だからこそ・・・ちょうどいいのさ。
剣と剣がぶつかる寸前に半歩タイミングをずらす。これが1対1ならば・・・もしくはコンビを組んでいたのがアキやアシュラならば相手の力を逃がすフェイントとして機能していただろう。
「えっ!? ちょ、ちょっと! 何、変な動きしているのよ!」
だが、リデアは違う。俺の動きの意図なんて考えて行動してはいない。だから、俺が不意に動けばそれがリズムの崩れになる。
「くっ!」
もし、俺が素直に行動していたならば開いていたはずのスペース。そして現実には俺がまだいた場所に飛び込んできたリデアに押されるように俺は前に出る。当然・・・そんな動きではそれは相手の格好の餌食だ。
「わ、ワタシは悪くないわよ!? に、兄さんが急に動きを変えるから・・・。」
俺の肩から溢れる鮮血を見たリデアが何とも複雑そうな顔をしてそういう。どうやらまだ足りていないかな? 遠くでアキが息をのむ音が聞こえたが・・・今回は大目に見てほしい。こんな役回りは俺以外の誰にもさせられないし、この先の戦いでこんなこともしてられない。余裕がある今のうちに消化しておかないとな。
「がっはっは! これは楽勝だな。」
「ええ、兄上。」
そうだろうな。だが、悪いが・・・リデアのための、ひいては俺たちのための礎になってくれ。勿論、助けるつもりではいるけど・・・な。
「リデア、気を取り直していくぞ!」
「ふ、ふん! 兄さんこそワタシの足を引っ張ることはもうやめてよね!」
さ~て、リデアはいつ気が付いてくれるかな? これで贖罪になるとは思えんが・・・兄としてやってやれる最初のこと。キミにも知ってほしいんだ、仲間の何たるかを。
さて、リュウトがパートナーに選んだのはリデア! その理由は・・・もうお分かりですよね?
リュウト「肝心のリデアはまだなんだけどな。」
おっと、主役なのになかなかあとがきには出てこないリュウトが!?
リュウト「本編で目立っているんだ。ここぐらいは他の連中に譲るさ。」
その余裕の発言は・・・アキなんてもう一人の主役なのによく出てきているのに。まぁ、彼女に余裕がないのはこいつの所為だけど。
リュウト「な、なんでだ!? 俺はちゃんとアキ『も』大切にしているぞ!?」
それが問題だということに気が付いていないからでしょうね。さて、次回はリュウトが体を張って教えること・・・リデアに届くでしょうか? わざと傷つくのも大変だな、リュウト。
リュウト「な、何のことだ? って急に終わらせるな~~~!! こほん、次回も必ず見てくれよな。俺たちの力の源はキミの応援なのだから! じゃあな!」




