1話 「帰郷」
「リュウトよ、このまま街道付近の出口に行く道でいいんだな。」
俺たちはアキを先頭にして迷いの森を抜けようとしていた。
「ああ、それで頼む。」
ここまで来る途中何度か魔物に襲われたが、心配していたほどにはアキの動きは悪くなく、俺の予想以上の速度で慣れてきているようだ。・・・それが良いことかどうかはおいておくとしてな。
「リュウト・・・一つ聞いてよいか? そなたは魔物を斬る度に辛そうな顔をする。いや、それ自体は非難せんが・・・そなたは何ゆえに戦うのだ・・・。」
あ、リュウトが黙り込んじゃった。私・・・聞いたらいけないこと聞いちゃったかな? そうよね、会ってまだ間もないのにそんな立ち入ったこと聞いちゃったら・・・そんな奴と一緒にいられないとか思われちゃうのかな。
「あ、いや・・・すまぬ。答えたくないのなら忘れてくれ。ちょっとした興味に過ぎんのだ。」
「ん? ああ、別に答えたくないわけじゃないさ。なんていうべきかなって考えてただけだ。言葉にしてしまえば大したことじゃないんだがな・・・どうせ寄るつもりだったし実際見てもらったほうがいいだろう。」
よ、よかった。嫌われたわけじゃないのね。・・・って仲間だからよ! 仲間に嫌われるなんてやだって言うだけなんだからね!・・・私、誰に言い訳してるんだろ。
ここは迷いの森の出口、街道付近の草原にある小さな孤児院。
キャキャと笑いながら二人の子供が転げまわっている。そこにやって来たのは
「おお! 相変わらず元気そうだな、ハナにケンタ!」
「あ! リュウト兄ちゃん! お帰りなさ~い!!」
「ねぇねぇリュウトお兄ちゃん?今度はどこに行ってたの?」
声をかけたリュウトに嬉しそうにじゃれる子供二人。
「聞いて驚くなよ~・・・。」
少々自慢げに話そうとしたリュウトだったんだけど、それを遮ったのはパッシーン! という良い音。
私にもリュウトにも気づかれることなく近づいてきた(初めは暗殺者かと思ったわ!)年のころ25歳ぐらいの女性がリュウトを思いっきりひっぱたいたのだ。
「リュウトく~ん! あなたって子はなんで毎回かってにいなくなるかな~? 私がどれだけ心配したと思ってるのかしら!」
どうやら敵ではないみたいね。まぁ、敵ならビンタはないか♪・・・それにしても随分親しそうだわ。私よりスタイルいいし・・・け、けして私のスタイルが悪いわけじゃないんだからね!
「せ、先生! それには深いわけが・・・!?」
「あ~あ、リュウト兄ちゃん、本当に懲りないよな。」
「マリアお姉ちゃんは先生って呼ばれるの嫌いだもんね。」
二人の子供たち(どうやらハナとケンタって名前みたいだけど)は呆れたように顔を見合わせる。そして当のマリアさんと言う人は・・・
「リュ~ウト~く~ん! 私の事はお姉ちゃんと呼べってあれほど言ったよね~? 私はまだあんたに先生呼ばわりされる歳じゃな~い!!」
い、怒り爆発って感じね。さっきのビンタも痛そうだったけど、今度は往復になってるし。
「ねぇケンタ、今回はどこまで行くと思う?」
「う~ん、マリア姉ちゃんの機嫌からいってAコースかなぁ?」
「私は今日こそマリアお姉ちゃんのSコースが見れるかなって思うんだけど?」
Aコース? Sコースって何?? って子供たちに聞こうとしたら・・・
「「おお~!!!」」
わ、私はあんまり詳しくないんだけど・・・あれって『スリーパーホールド』って奴? 完璧に決まっちゃってるような・・・でそこから『サソリ固め』って!
「わ~! 出た~~!! マリア姉ちゃんの必殺『ジャーマン・スープレックス』!!」
ええ~! だ、だってここ草原とはいえ、けっこう硬い地面だよ? リュウトまったく受身取れていないよ?
「ちょ、ちょっと待て! あれはいくらなんでもやりすぎ・・・」
「あれ? お姉ちゃん、初めまして~!」
元気に機嫌よく答える女の子。
「あ、初めまして・・・ではない! あれではリュウトが・・・。」
「大丈夫だよ~! リュウト兄ちゃんは丈夫だから。いつもこんな感じだよ?」
丈夫だからって・・・こんな日常を送っているから丈夫になったんじゃないのかな?
結局リュウトVSマリア戦は開始10分後リュウトが完全KOされて終了するのだった。
え~、メイに負けず劣らず破天荒なマリア姉さんです^^
マリア「可愛い姉弟のスキンシップじゃない♪」
あれをスキンシップと認めたら現実の世界では死人が出ます(汗)しかし、考えてみれば姉ばかりになってしまってる。
マリア「ん? 兄だっているじゃない。ほら・・・」
あ~! それは駄目! 次回の話なんだから!!!
マリア「じゃあこっちは?」
そっちはもっと駄目~~!! それはずっとずっ~~と先の話です~~><
マリア「あはは^^ 作者くんも面白いね~♪」
勘弁してください・・・。




