1話 「タッグバトル!?」
セラフィムから得るべき情報を得て、俺たちはゼウスの居城を目指して進軍する。だが、足取りが軽くなったのは情報を得たからばかりではないだろう。
『レミー・・・とかと言ったか? すまぬな、キミには随分とひどいことを言ってしまったようだ。生まれがどのようなものであってもキミは立派な天使だ。例え、厳密には天使と認められぬとしても我らの仲間であることには何ら変わらない。』
去り際にセラフィムが言った言葉。天使とて生き物だ、すべての天使と分かり合えるなんて言うのは楽観が過ぎる。だが、ちゃんとわかってくれる者もいる。祈るような気持ちで(特にレミーとコクトはそうだろう)願っていた当たり前な事実が叶ったこと。ただそれだけのことがどれだけ大きいことか!
「よかったな、レミー。」
「リューくん・・・うん、ありがとう♪」
世界は変えられるのだと思える瞬間。ただし、変えるのは俺たちじゃない。無論、力や暴力であって良いはずがない。明日がより良い日であるようにと祈る1人1人が変えていく。・・・さて、俺たちもその1人として今できることをやっていこう! 黒幕が何を考えているかは知らんが、洗脳・操りによる変革なんて俺たちは認められない!
「コクト・・・ここは?」
コクトの案内でやってきたのは、とある神殿。ここがゼウスの居城ならば楽でいいのだが、そんな感じには見えないな。
「ゼウスは天界の主だ。そう簡単には会えるようにはなっていない。まずはここを越えねばな。」
「ム~? だったら上を飛んで行こうよ~!」
俺たちの返事も待たず、神殿の上空を飛んで行こうとするレミーを俺とコクトは慌てて止める。確かに中に入れば戦いは避けられないだろうが飛んでいくわけにはもっといかない。
「ム~! なんで~~!?」
「あんたねぇ、このぐらい気が付きなさいよ。」
呆れたように、いや、心底呆れた口調で言いながらリデアは神殿の上空に小石を投げる。すると・・・
「えっ!? な、なに??」
小石が空中で何かにあたったかと思った途端に、ぼろぼろに崩れ落ちていく。まぁ、予想通りではあるけどな。
「とまぁ、こんな具合に結界が張ってあるのさ。竜神剣で無理やり切り裂くっていう手も本来はあるんだが、このクラスの結界を斬れるほど俺の能力はまだ高くないんだ」
竜神剣は概念上あらゆるものを切り裂くことができる。結界とて例外ではないはずなんだが、より強い力を秘めたものほど斬る為に消耗する俺の力も大きくなる。どの道、結界を斬れば中にいる奴らも気が付いて出てくるだろうから余計な力は使わないに越したことはない。
「ふん、さっさと中に入るぞ。」
付き合ってられんと言わんばかりに神殿の中に入っていくアシュラ。あいつ1人に行動をさせるのはレミーとは別の意味で(相手が)心配だ。というわけで、俺たちは慌てて後を追うことになるのだった。
「ここは・・・闘技場?」
がらんとした神殿の中を抜けていくとたどり着いたのは闘技場のような場所。中に入るための審査を本来はすると思われる場所も途中にあったが、そこ似は誰もいなかったことを考えると・・・
「よくぞ来た! ここより先に行きたければ我らに勝利してみろ!」
やっぱりか!? まぁ、こんな闘技場が設置されているくらいだ。元々こんな趣旨だったのかもしれないが・・・
「一応言っておくが、ここは本来公式試合を行うための場所だ。まれに悪意あるものが乗り込んできたときにここで戦うらしいが、本来はこんな使い方をする場所ではないぞ。」
・・・なるほど、修正ありがとな、コクト。となると操られたことによって変化したか、俺たちが彼らにとっては悪意あるものなのかってことか。いずれにしても戦いは避けられないか! 向こうは4人、俺たちは6人、人数的には俺たちの方が有利だが、向こうもこんなことを任されているんだからそれなりの強さだろう。できれば、その操りの糸を斬りたい以上は数の有利に安著出来る場面ではないな。
「おっと、しばしまたれい。我らは4人、貴様らは6人。そこで、2対2のタッグバトルを申し込む。貴様が3チームで我ら2チームに勝てば先に通してやろう! それとも貴様らは数の有利とやらで無理やりここを押しとおるような卑怯・・・いや、臆病者たちかな?」
あからさまな挑発・・・ん? 待てよ・・・
「そのような安い挑発に乗るような私たちと思ったか? 卑怯者と思われようが、臆病者と思われようが別にかまわん。ここをとお・・・」
「いや、アキ・・・ここは奴らの申し出を受けよう。」
「なっ!? どういうことだ! リュウト!?」
きっぱりと否定しようとしていたアキが俺の言葉に目を丸くして詰め寄る。まぁ、普通ならアキの言うことの方が正しいんだが、今の俺たちの状況を考えるとあえて敵の策に乗ってやった方が有利かもしれない。・・・特にこの先の戦いのことを考えるならばな。
「悪い。今は詳しく説明できないけどな、ここは向こうの策に乗った方が先で楽できそうだ。」
「・・・わかった。そなたがそういうのなら信じよう。だが、後で説明はしてもらうぞ!」
「ああ、わかった。」
そして、ありがとうな。
「ん~、よくわからないけど2人で戦えばいいんだよね? じゃあ1番手はわたしだよ~! 勿論パートナーはアー・・・」
「兄ちゃんだよな! 行くぞ、レミー!」
「え? ちょ、ちょっと! お兄ちゃ~ん!!」
普通にアシュラを指名しようとしていたレミーを妨害して、コクトがレミーの手を引いていく。まぁ、コクトの気持ちもわからんでもないがな。・・・リデアもいつか俺の手から離れていくんだろか? ・・・ってそんな場合じゃない!
しかし、よくアシュラが黙っていたな? 自分が相手をするほどの価値がないと判断したか、それとも・・・まぁいい、まずは仲間として2人の勝利を信じるだけだ!
と言うわけでこの章はタッグバトルです。今まで1対1や1対多、多対多はありましたが2対2って実は2回だけなんですよね。
アキ「私たちの戦いは試合ではないからな。可能な限り有利な手を打つが当然。わざわざ敵の数に合わせてやる必要などはない。」
ごもっともです。今回はリュウトになにやら理由があるようですが・・・おっと、次回はついに彼女がリュウトたちの前に初お目見えです!
アキ「ムッ? 誰のことだ?」
作中に登場したことがあるキャラでリュウト一行が出会ってないキャラは3人だけ! その中でこのタイミング、この状況下で出てきそうなキャラといえば大体お分かりになるかと。
アキ「・・・なるほど、彼女か。もっとも、知っているといえば知っているのだがな。そう、表の人格は知りすぎているぐらいに・・・」
あはは、まぁそこらへんで勘弁してください。というわけで次回も見てもらえるとうれしいです! ではまた!!




