7話 「守るべき約束」
「・・・ううっ。」
アキとリデアに挟まれて俺が困窮していると聞こえた声。どうやら気が付いたみたいだな。
「気が付いたか?」
「ここは? ・・・そうか私は操られて・・・。」
ふむ、どうやら無事に正気に戻ったらしい。これならこの先も条件さえ満たせれば何とかなるかもしれないな。
「すまんな、操りの解除は初めてとはいえ・・・いや、それ以前だな。俺は無駄にキミを傷つけてしまった。」
「何を言う! 私が操られたのは私が弱かったが故、未熟であったが故だ。その上であなたたちに襲いかかった。その命を奪わんとした・・・命が助かっただけでこの上ない幸運と言えよう。」
怒りに囚われて過剰な攻撃を・・・今はレミーの治療でくっついているとはいえ、一時は天使の象徴の1つでもある羽を斬った者に対してすがすがしいまでの笑顔。本来の彼の心の清らかさを知ると同時にそれをあそこまで変える力の恐ろしさも知れる。
「竜神様、このようなことを言うのは恥と知りつつも願わせてください。どうか、ゼウス様をお助けに・・・。あの方は本来はとても偉大な方なのです。そう、あの方と同じ言葉を言ったあなたならばきっとお助けできるはずと私は信じております。」
彼に願われなくてもゼウスのもとに行くは俺たちの意思。そして可能な限り犠牲は出したくないのは俺の願いでもある。しかし・・・
「勿論出来る限りゼウスだけでなく他の天使や神も助けたいと思う。そんなことは願われるまでもないのだが・・・俺とゼウスが同じ言葉っていうのは何なんだ?」
「あ、ありがとうございます! 同じセリフというのは・・・私はたしかにセラフィムの1人です。しかしその中では一番未熟な下っ端、もっと下位の天使にも戦闘に限って言えば私よりも数段強いものも多々いるでしょう。そう、あなたの言う通り私はゼウス様から頂いた神剣の力を御することも使いこなすこともできない・・・ただその力に振り回されていただけのものなのです。」
俺の言葉に目を輝かせつつも、続く言葉は悔しそうに口に出す。俺には分かる・・・この天使は自分よりも上がいることが悔しいんじゃない。与えられた力を使いこなせていないこと、役立ちたいと思うものの役に立ちきれないことが悔しいんだと。それは俺によく似ている。そう、竜神の力を扱い切れていないのは俺なのだから。
「ゼウス様は私言われました。『お前はまだその力を使いこなせてはいない。その剣を御せぬうちは使用を禁ずる。扱えきれぬ力は周りのものばかりでなく、お前自身をも傷つけようからの。』と。私が操られながらもこの剣の使用を戸惑ったのは切り札という以外にも、この言葉があったからかもしれません。」
俺はゼウスを知らない。だが、その言葉からは厳しくも優しい・・・そんな人物が思い起こされる。そんな人物は俺も心底助けたいと思う。同時にこの茶番劇を裏から操りあざ笑う黒幕を心底許せないとも・・・だから
「ああ、俺の全力をもって助けると誓うよ。だから、今の詳しい状況を知っている限り教えてほしい。俺たちは、ここにいるコクトのおかげでゼウスの居城は知っているが、それ以外の情報はほとんど持っていない。そう、今現在ゼウスがその居城にいるかどうかさえも厳密にはわかっていないんだ。」
「勿論です! 私では皆様の戦力としてはお力になれませんが、こうやって間接的にでもゼウス様をお救いするお役にたてる。身に余る光栄です!」
その言葉に、表情に、感情に少なくても俺には嘘は感じられない。きっと、他のメンバーも同じなのだろう。だから何も言わないんじゃないかと俺は思う。・・・まぁ、1人ほど理解しているのかどうかさえも怪しいやつはいるが・・・。考えてみれば末端とはいえ、こいつは天使の最上級のセラフィム。で戦闘能力だけ見れば同じぐらい強いレミーが見習い天使・・・どれほど戦闘能力以外で損をしているのやらと思う。まぁ、レミーが他の天使たちの指揮をするっていうのはものすごく怖いから洗脳される前の神々の判断は正しかったのだろうけどな。
「ム~? リューくん、わたしの顔に何かついている?」
「いや、そんな理由だったらどんなによかったことか・・・。」
「?」
さてと、少々むなしさは感じるがこれで一歩前進! 次なる戦いはより実りのあるものにしたいな。俺は竜であり竜神。竜とは破壊者であり竜神は破壊神。だが、それでも俺は俺だ。俺が壊すものは限りない未来を脅かす者だけにしたい。それが例え身勝手なエゴによるものであったとしても・・・。そう、俺はまたもう一つ守るべき約束を背負うことができたのだから。
無事に切られた操りの糸と得られた情報。これでようやくリュウトたちの冒険は軌道に乗り出すのです!
アキ「ふむ、今まではろくに情報もない中手探りで動いていたからな。しかし、今回の戦いはなかなか複雑だな。いろんな勢力が・・・というか思惑でそれぞれ動いておる。」
そうですねぇ、操られているゼウス一味(=ほぼ天界)裏で操っている黒幕(単数かどうかも不明)解決しようと純粋に思っているリュウトたち、裏で情報を集めて状況によっては応援に行くつもりのメイたち、この状況をリュウトたちを鍛えることに利用するつもりのレーチェル、そして
アキ「な、何!? まだ勢力があるのか? それは私は知らんぞ!」
う~ん、勢力というか何を考えているのか現状不明な奴ら。今回の話にかかわってくるかどうかも不明でリュウトたちは存在も知らない・・・1人は知っているけど倒したと思っている奴らっていうとわかるかな?
アキ「・・・ルーンか。確かに目的次第では・・・いや、そぐわなくても興味本位で首を突っ込んできてもおかしくないやつらではあるな。」
そういうことです。さてではそろそろ次回予告を・・・
アキ「うむ、試されるものはお互いの信頼と絆? 今度の相手が指定してきたのはタッグ戦!? リュウトもあっさり受けるでない! 次章竜神伝説第4部5章『激闘! 信頼と絆のタッグ戦!』まぁよい、私のパートナーは・・・ってこれはいったいどういうこと!?」




