1話 「合流」
「さて・・・どうするべきかな?」
リーダーとしては何とも頼りない。というよりは絶対に言ってはいけない部類のセリフだと思うが、そんなセリフが出てくるほど今の状況は手の打ちようがない。
「ム~、ゼウスのところに行くんじゃないの~?」
うん、確かにその通りなんだけどな・・・はぁ、レミーに期待するだけ無駄なのかな?
「そなたという奴は・・・その居場所がわからんのだとさっきから言っておろうが!!」
とりあえず毎回アキが突っ込んでくれるから・・・いや、成長が限りなく望めないから無意味なのだろうか?
「はぁ、まあいい。そうだな、とりあえずこっちの方向に行ってみるか。」
誰も情報を持っていない。かといってここで黙って待っていて情報が入る・・・なんて甘いことがあるわけがない。ならば、わからずとも動くしかない。そして、そんなあやふやな提案をし、決断を下すのは仮にもリーダーを名乗っている俺以外にできるわけもないからな。
「そんな闇雲に動いても・・・いや、この場合は仕方あるまいか。それに、完全に闇雲と言うわけでもなさそうだな。」
「そういうことだ。もっとも行く方向に関しては、ほとんど闇雲とイコールに近いけどな。」
にやりとアキに不敵に笑う。別に自信があるわけじゃない。ないからこそ、こういう態度を見せなければ彼女は不安がるだろう。・・・なぁ、なんで顔を赤らめるんだ?
「ム~、わっからないよ~。」
「ふん、先ほどの攻撃がこちらから撃たれたから・・・というところだろう。」
相変わらずわかっていないレミー。いや、理解しようとしている点を褒めるべきなのだろうか? そしてなんだかんだと言いながらしっかりとレミーに説明をしてやっているアシュラ。この2人は本当にいいコンビだな。・・・コクトあたりは否定しそうだが。いや、アシュラ自身もかな?
そう、俺が行こうと指し示した方向は、あの名前も知らない神の心臓を射抜いた矢が飛んできた方向だ。それは単に射やすい地形だったというだけかもしれない。仮にそっちの方向からやってきたのだとしても、そこにゼウスがいる保証どころか射った奴が今もいる保証さえもない。それどころか、こんな僅かな情報とさえも言えない情報にも飛びつく俺たちの状況を利用しての罠・・・という危険性だってあるわけだ。普通なら参考になどできるような情報では全くないのだが
「ム~、難しいことはわからないよ~。でもまずは行動! だよね!」
結論がレミーと同じってところが若干不安にさせるが、その通りだな。まずは動くということ。それが仮に罠であったとしても状況を動かさないと始まらないからな。
「そういうことだ。さ、じゃあ行くとしようか!」
行けども行けども変化のない道。無論、風景ぐらいは多少は変わるが・・・そんなものは何の意味もない。
たぶん何も考えていないレミーと心臓に毛どころか神経がダイヤモンドで出来ているんじゃないかと思うアシュラは平気な顔で歩いているが、アキは見ていて可哀想に思えるほどに不安な顔をしている。・・・ん? この気配は
「リュウト、本当に大丈夫だろうか? いや、そなたも不安なことも確証なんてないこともわかっているのだが・・・」
「いや、どうやら向こうから情報が来てくれたらしいぞ。」
俺が気配を感知した・・・ということはとっくに気が付いていただろうアシュラは別にして、他の2人はわからないという顔をしていたが。
「あ~! この気配はお兄ちゃんだ~!」
と先にレミーが気づく。まぁ、探知能力はレミーの方が上だから当然だろう。繋がりもアキとコクトはそう強くないしな。それにしても嬉しそうな顔だ。それもそうか、おそらくレーチェルと一緒だろうから無事・・・とは思っていたが実際の安否は不明だったのだから。とまぁ、そんなことを思っている間に
「レミー! 無事か!!」
「うん! お兄ちゃんも無事みたいだね!」
いやいやいや! 気持ちはわかるが、俺たちの存在を綺麗にスルーして行かないでくれるか? まぁ、コクトらしいといえばらしいが。
「ふん、下らん。そんなことよりもさっさと知っている事を話せ。」
「アシュラ・・・貴様もいたのか! ふん、貴様なんぞにレミーはやらんぞ。」
「何度も言っているだろう? 俺はそんなものいらん!」
・・・本当に何で(いや、理由は知っているけど)この二人は顔を合わすたびに喧嘩をするかな。普段ならほっといてもいいんだが、今はさすがに
「すまぬが、コクト。今はそのようなことをやっている場合ではなくてな。知っていることがあったら教えてほしい。」
「・・・アキさんにまでそう言われては。と言っても俺も・・・そしてレーチェル様もそこまで事態を把握しているというわけではない。わかっているのはゼウスが天界の司令官で天界の結界を歪めているということ。そのゼウスも何者かに操られていること。ゼウスを倒さねば黒幕を見つけることも皆を開放することも難しいと言うこと・・・この程度だな。」
この程度とコクトは言うが、今の俺たちには十分すぎる情報だな。明確な行動の指針ができるということ。これ以上に頼もしいことはない。後は
「なぁ、肝心のゼウスの居場所はわかるか?」
「お前たち・・・居場所もわからずに移動していたのか? 方向はあっていたから、わかっているものだとばかり思っていたが。」
そのセリフはどっちかと言えばお前の妹に言ってやってくれないか? まぁ、コクトも一瞬レミーを見たから、そう思ってはいるのだろうが。気が付かないのは本人ばかりか。
「まぁいい。とりあえず道案内は任せてくれ。」
と言って率先して先に立って歩き始めたコクト。本当に道がわかるって頼もしいことなんだな。
まずは順当にコクトと合流です!
リュウト「コクトをこんなにも頼もしいと思ったんは初めてだな。」
ん~、結構彼も強いんですけどね(汗)
リュウト「それはわかっているさ。実際に戦ったこともあるしな。ただ、アシュラという反則的な奴もいるし、コクトの能力は俺と同じで他に代わりのできない絶対不可欠な能力かと言われると違うからな。」
なるほど、レミーの回復やアキの魔法みたくなくてはならないものじゃないと。防御力も・・・アシュラがいますしねぇ
リュウト「まぁ、防御強化の能力はありがたいんだけどな。それ以上に道がわからないという状況からの脱却がありがたかったというわけさ。」
ようするに迷子は怖いというお話でした。常に誰かに聞ける環境があるとはかぎりませんから、読者の皆様は知らない場所に行くときはご注意を!
リュウト「今更お前に言われなくてもだと思うがな。」
確かに^^ さて、コクト合流で道の不安はなくなりましたが、このまま問題なくゼウスのところまで・・・ってわけにはもちろん行きません!
リュウト「たまにはそんな展開もほしいものだけどな。はぁ、トラブルの天使がいる限り無理ってか?」
まぁ、今回は彼女の所為じゃないですけどね。さすがにこれまで特異体質(?)で済ませたら可哀想かも・・・。では皆さん、次回もよろしくお願いします!




