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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
4部3章『裏方の戦い』
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5話 「非情な優しさ」

 

 コーリンさんが出て行ってすぐ、私は一人エルファリア宮殿執務室で彼を待っていた。そしてコンコンとノックされるドア。間違いなく彼ね。


「お待たせいたしました。ヤマト=ルオールです。」


「入って来てください。」


 予想通りの人物。彼が自分で言った通りヤマトくんが私の声を聞いて入ってくる。フフ、初めて会ったときはオドオドしていたものだけど随分たくましくなったものだわ。・・・いえ、そういえばこの子は本来普通のものは立ち入り禁止区域(女王であるアキの部屋がある区画)にあるリュウトくんの部屋に無断で行っていたのだから度胸は初めからあったのかもしれないわね。


「・・・? あの、メイ様? 女王様はどちらに?」


「あなたを呼んだのは私ですよ? とはいえ、確かに女王様がおられないのは疑問でしょう。では、まずはそこから説明します。」




「ということです。ここまでは理解できましたか?」


 私の話を驚きの顔で聞いていたヤマトくんだけど、話が終わると真剣な顔でうなずいた。どうやら、これが単純な話ではないってことぐらいはわかっているようね。


「メイ様、それで私は何をやればいいのでしょう? 一介の兵にすぎない私に個別にこのような重大な話を・・・なんてわけではないのでしょう?」


「勿論そうです。あなたにはこれから天界へと行ってもらいます。そこで、できればリュウト殿や女王様と合流。出来ないまでも情報を私にこの通信機で送って来てください。」


 有無を言わさず私は彼に通信機を渡す。本当は彼がリュウトくんの弟子とはいえ、まだこんなことをやらせるのは早すぎるでしょう。そして優しすぎるリュウトくんは絶対にやらせないでしょう。・・・だからこそ、私が代りに出す試練です。


「現状、天界で何が起こっているのか・・・それは全くわかりません。かなり大事、それも世界の一大事になりえる・・・という予想はできますが、それを証明するものがないのです。となれば、女王様と私の両方がこの国を離れるわけにはいかない。・・・あとはわかりますね。」


 私の立場は表向きはメイド長ですが、実際は政治に関しては女王であるアキとほぼ同権に近いということは周知の事実。つまり、アキがいない今は権力が私に一点集中しているということ。大臣も議院も私まで天界に行くことを認めはしないでしょう。そう、それなりの理由と確固たる証拠がなければ。


「わかりました。つまり、メイ様が師匠や女王様を助けに行けるだけの証拠を集めてこい・・・というわけですね。」


「そういうことです。理解が早くて助かりますわ。・・・いいですか? あなたはあくまでも情報員です。戦い勝つことではなく、生き残り私に伝えることを最優先とすること。それはたとえリュウト殿や女王様のお命が危ない状況下であったとしてでもです。わかりましたね。」


 私の意図は理解してくれたらしいけど、続く言葉に目を丸くして


「な、何故です!? 師匠や女王様のお命ほど大事なものは・・・」


「役割を知りなさい。そして自惚れないことです。リュウト殿や女王様・・・そしてあのお二人と共に行動をする人たちに何とかできない事態をあなたがどうするというのです? 自分の役割さえも果たせずに出来もしないことをやろうとして死ぬ。それは無駄死に以下ですよ。」


 私の言葉はまさに鋭いナイフのごとく彼の心を切り裂いたのでしょう。私の言葉に嘘はない・・・それが逆に彼の心を傷つけることは知っている。それでも、これ以上を認めるわけにはいかない。だって・・・


「・・・わかりました。私はただ情報をメイ様にお伝えする。それだけをやればいいのですね?」


 唇をかみしめ、自分の力のなさに震えながらも彼はそういった。その態度は建前上の上下関係はないとはいえ、実質的なことを考えるとあまりいいとは言えないわ。でも・・・その悔しさがきっと彼を強くする。・・・そう私もまた、そうやって強くなったのだから。


「ええ、そのとおりです。では、転移陣に案内いたします。ついてきてください。」


 立ち入り禁止区画のさらに奥深く、厳重に鍵のかけられた部屋にその転移陣はある。そこまで厳重なのはこの転移陣が特殊だから。つまり他の転移陣と違い・・・誰でも使うことのできる陣なのです(他の転移陣は天界側で使える者を制限している)


「では、くれぐれもご自分のやることをお忘れなく。・・・お気をつけて。」


「はい、では行ってまいります。」


 私は光に包まれて消えて行った彼を見送って、一つため息をつく。これで情報源は2つになった。たしかに情報源というのは複数存在したほうが効率がよく、また照らし合わせることで主観を除いた客観的なものが見えやすくもなる。・・・でも、それだけならば彼に頼らなくてもよかったのよ。


「気が付かれなくてよかったわ。・・・なんで私がアキにそう言わなかったのかを。」


 そう、アキもまた天界にいるのだから、彼女からも貰おうと思えば貰える。あえてそれをしなかった理由・・・サプライズ? いえ、さすがにこんな事態でそんな演出をしようとは思わないわ。レーチェルさんと違ってね。


 確かに敵をだますなら・・・という意図も多少はあるけど、それ以上に大事なのは彼に戦場を知ってもらうこと。短いながらもリュウトくんに師事しているだけあってエルファリアの兵の中では一番優秀な彼。この先にも彼に本当に役立ってもらわなければいけない場面は増えるでしょう。その時のため、死ぬ危険が極めて高いとわかって出す試練。リュウトくんなら絶対に許さないでしょう、でもこれはきっと彼のためでもある。厳しく鞭うち、恨まれる非情の女役は私にぴったりでしょう?


 さぁ、私が今できることはこれで全部。あとはお願いね・・・みんな。


さて、もうお分かりだと思いますが、この章自体がフラグを乱発するために作られている章です。


ヤマト「え~っと、コクトさんの参戦フラグ、リデアさんの参戦フラグ、さらにお二人の過去にコーリンさんやママナさんの影の動き・・・そして僕ですか?」


そういうことです。それにメイやレーチェル自身も動いていますよね。こういった動きを受けて、早くも壁にぶち当たっているリュウトたちの冒険がどう動くのか!? ということです。では今回は早々に次回予告を。


ヤマト「あ、はい! 行くべき情報を失い途方に暮れる師匠たちに合流した黒騎士! さらにあの子も出てきて大騒ぎ? 竜神伝説第4部4章『新たなる目覚めの時!』すごい・・・まだこんな力が隠されていたんですね。」


では次章もよろしくお願いします!!

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