13話 「二人の旅立ち」
朝日が昇る。あるものにとってはいつもどうりの旅立ちの朝。あるものにとっては初めての旅立ちの朝。そこにいかなる理由があろうとも、全てのものに平等に朝日は今日も昇る。
「メイさんの話では朝になれば森の案内人が来るって言ってたけど・・・」
宮殿の入り口で待っているのだが、一向に姿が見えない。まぁ、まだ時間的に早いってだけかもしれないな。
「すまん! リュウト待たせたかの?」
ん? 向こうからパタパタと走ってくるのはアキか? わざわざ見送りに来てくれるとは・・・嬉しいな。いや、本来は俺の方から顔を出すべきだったのか。
「悪いな、俺の方から顔を出しに行くべきだったな」
「何を言っているのだ? ここで落ち合う約束だったはずじゃが?」
それは案内人との話で・・・えっ?
「まさか、アキが案内人なのか?」
・・・案内人? お姉ちゃんは一体どんな説明したのよ~!!・・・あの人のことだから私がこうしてあたふたするのを楽しんでるのね・・・。
「そうだな・・・ただし迷いの森ではなく、邪竜神の居場所まで案内してやろう」
もう! なんで私がこんな調整をしなくちゃいけないのよ?
「えっと・・・つまり俺の旅を手伝ってくれるということか!?」
「言ったであろう?我らエルフは竜神の最大の協力者だとな」
「し、しかし・・・」
やっぱり私じゃ足手まとい?・・・リュウトには必要ないのかな?
「何も女王が危険を犯さなくてもいいんじゃないか?」
あ、そっちの心配だったのね。
「女王だからこそだ。・・・私は民たちを守らなければいけない。そなたと共に災いを払う事こそ私のすべきことだ」
一晩かけて私が考えた言い訳・・・もっともらしいでしょ?
「ごめんな・・・俺が余計なことを言ってしまったからだよな。だから責任は取る! アキは必ず俺が守るよ」
なんか凄く複雑な気分。守ってくれるって言うのは嬉しいけど、私もリュウトを守りたいの。それに・・・リュウトが竜神だってわかったのはけして余計なことではない!
「そのようなことをいうな。私たちはこれより仲間だろう?そなたが私を守るように私もそなたを守って見せよう。それとも・・・私では不満か?」
不満に決まっているよね?・・・痛いってわかっていてあえて聞く言葉。
「不満? そんなものはないさ。・・・むしろ俺の方がアキに頼りないって言われないようにしないとな。ありがとう、アキ・・・」
・・・リュウト、そんな言葉をかけられたら泣いちゃうじゃない。
「そ、そんなことより私を見て言うことは無いか?」
涙を隠すためとはいえ、ちょっと変な言い回しだったかしら? き、気にはなっているんだけど・・・。
「ん? ああ! そういえば髪を切ったのか? 旅には邪魔だもんな!」
・・・それだけ? この髪型リュウトと同じなんだよ? しかも旅には邪魔!? 女の子の髪だってわかっている?
「ほ、他にはないのか!? 例えば服とか!」
例えばも何もないけど・・・リュウトはそれぐらい言わないと気づかないわ。
「服?・・・まぁ、可愛いかな? 似合ってるよ」
・・・可愛いかな『?』。そこで疑問系なの? しかもリュウトとあった時の服だってまったく気づいてないし!
「はぁ・・・もうよい。早く行くぞ」
リュウトにこの手のことを期待する方が間違っていたみたい・・・。
「?? まぁ、いいか。・・・さぁ! アキ・・・必ず生きて帰るぞ!」
!・・・そうね、これがリュウトだもんね。うん! 決めた・・・私の思いが何であるのかはまだちょっと保留。でも・・・絶対リュウトはここに連れて帰るんだから!
「無論だ! 必ず二人で『ここ』に帰ってこようぞ!」
約束だよ?リュウト!
え~、リュウトの鈍さ加減がクローズアップされてます。
リュウト「そこまで言われるほど鈍くはないだろ?」
アキを前にしてそのセリフをいえるのか?
リュウト「・・・」
アキが出てきてから出番を奪われぎみの主人公さん? 実はあとがきは初登場だし^^
リュウト「まぁ、相手がヒロインなら仕方がないんじゃないか?」
一応ヒロインと認識してる・・・わけじゃないな。あくまであとがきトーク限定か・・・アキ、先は長そうだぞ~!




