3話 「まずは準備」
ここはエルファリア。今回は時間を僅かに時間を巻き戻して見よう。これはアキとアシュラが天界に出て行ってすぐのこと。
「ではメイさん、本題と入りましょうか。」
ニッコリと笑ったのは勿論コーリンさん。やっぱりこの人は私とある意味同じタイプということね。
「さすがですね。お気づきになられるとは・・・。」
「あら、気づかせる言い方をなされたではありませんか? アシュラ様の戦力だけを欲っしられていたのなら、『お2人でお越しください』なんて態々言わないのではないでしょうか?」
そうね、この人はアシュラくんの付き人。何も言わなくてもアシュラくんが来るならついてくるでしょうし、そもそもあの話だけならコーリンさんに来てもらう必要はないものね。
「ええ、その通りですね。ですが・・・その前にお茶を入れるとしましょう。ハーブティーでよろしいですか?」
カチャ・・・と音を立ててカップが置かれる。コーリンさんならばもっと美味しくいれてくれるのでしょうけど、それなりにいい葉っぱを使ったお茶の香りは気持ちを落ち着かせてくれる。
「コーリン殿・・・此度の騒動、どう思いますか?」
私の言葉に少し驚いたように、そしてしばし考え込んでコーリンさんはこう告げる。
「そうですね、おそらくメイさんも同意見かと思いますが、作為的なものを感じます。少々の出来事ならばあのレーチェルさんがご自分で解決するでしょう。そしてご自分の周りで大規模の計画が進行していて、それにまったく気が付かない方だとも思えません。」
その通りね。まず間違いなく今回の事件はかなり危険な状況であるといえ、そしてその前兆を彼女は気が付いていたはず。にも拘わらず私たちの誰一人にすら連絡が事前に入っていない。
「では、レーチェル殿の仕業だとお思いですか?」
この言葉にはコーリンさんはすぐに軽く首を振る。
「いえ、それはないでしょう。あの方は確かに悪戯好きですし、私たち・・・特にリュウトさんとアキさんには色々おやりになりますが、無関係の者を多く巻き込むような悪戯をやるような方ではありません。それにあの方の悪戯にはいつも何らかの意図が隠されています。そう、まるで平和に甘んじることに対して警告するような、より強くなるように誘導するようなです。」
「その通りですね。ではやはり、私たちの見解は一致しているようですね。」
そう、ここまでは議論でも何でもないわ。ただお互いの認識のずれがないかを確認していただけ。でもこれを省略すると思わぬ危機を招く危険性もあるとても大事な話し合いでもある。
「ええ、私もメイさんならお気づきになっているとは思いましたが、間違っていないようでよかったですわ。レーチェルさんは今回・・・いえ、おそらく今回の出来事の裏にあることを警戒していると思います。」
「レーチェル殿自身が悪戯好きというのは間違いないですが、多くはその為に私たちを強くしようと意図が存在した。ならば今回のことも彼女は最低限の手伝い以外はしないとみるべきでしょう。ならば、そこにこそ私たちの活躍の場があるということですわ。」
お互いにこくりと頷き合う。戦いを征するもの・・・それは常に力であるとは限らない。私たちはあの子たちの力が100%有効に使える場を作り出してあげることが役割。
「では私の役割は隠密術を使っての情報収集ということですね。では早速・・・」
「あ、ちょっとお待ちになってください。その任務・・・彼女も連れて行ってあげてもらえませんか?」
私がかけた声。当然、コーリンさんも私が言う彼女が誰の事なのかはわかっているはず。だからこそ、その目が不安に揺れる。彼女にとっては一番危険にされしたくない人でしょうから。
「彼女はリュウト殿の姉を自認していますから・・・きっと何も知らされず、何もしなかったなんて許せないことだと思います。交渉はコーリン殿にお任せします。もし、連れて行きたくないとお思いになるのでしたら諦めるように説得なさってください。ただ・・・あなたの口から今回の出来事だけは伝えてあげていただきたいのです。」
そう、どっちかと言えばこっちの方が本題。コーリンさんのことだから何も言わなくてもアシュラくんの為に情報収集ぐらいはやったでしょうし、私としても彼女の判断力ならば妙な勘違いはないと信じている。まぁ、それでも確認をしておくに越したことはないし、連絡方法の確立も大事なことではあるけど・・・彼女の悲しい顔は見たくないからね。
「メイさんにはわかっておられるのですよね?」
「ええ、あれで気が付かないのは本人と・・・レミー殿ぐらいなものでしょう。」
リュウトくんの姉ってことは私にとっては妹みたいなものかしら? ということはコーリンさんは義理の母だったりするのかしらね? 他にもレミーちゃんがリュウト君の妹だとコクトくんとかそのうちアシュラくんも加わりそうだし・・・うふふ、パーティーみな家族っていうのもいいものね。パーティーのお姉さんというのも大変だけどいいものだわ。
「あの子も・・・もう大人なんでしょうか?」
「それを決めるのは私たちではないと存じます。けれど・・・時がたっても変わらないものだってあると思います。」
『そうですね』一言そういいながら笑って彼女は出ていきました。・・・さて、私も次の一手といきましょうか!
リュウトたちと肩を並べて戦う力はなくとも(メイは普通にありそうなんですが><)共に戦うことはできるという話です。
メイ「歴史に名を残すのは常に英雄です。しかし、その足元には彼らを支えた無名の者たちがたくさんいる。・・・今更言うまでもない話ですね。」
まぁ、リュウトの場合望んで手に入れた名前ではないですけどね。
メイ「だからこそ、なんでしょうね。リュウト殿はそれでも英雄の名前を捨てません。それは自分だけの名前ではないから、その名前を捨てることは自分を支えた多くの者たちの努力も捨てることだとわかっておいでだからでしょう。」
たしかにリュウトはそういう奴ですね。しかし・・・メイの名前はきっと残るぞ? あれだけ怖がられ・・・ヒッ!?
メイ「フフフ、最近はそうイメージもようやく薄まってきましたのに・・・反省してください。」
・・・ ・・・
メイ「あら? やりすぎてしまいましたか? まぁ、そのうち復活するでしょう。では次回はあの親子のお話ですよ。」




