2話 「分断」
天使たちを追跡してやっていたのはとある神殿。中は異様なほどの静けさに包まれている。・・・おかしい。誘いこまれたかどうかはまだわからないが、内部に侵入して気づかれていないとは思えない。
「・・・」
その雰囲気を察して自然と無口になる俺たち。・・・1人だけしゃべってはいないが無邪気にスキップなんてやっている奴もいるが気にしないことにする。
ガタン! 突然響いた音! 俺たちはとっさに飛びのこうとして地面がないことに気づく。これは落とし穴か!?
「ふええええ~!? また落ちるの~!?」
ただ1人声が落下していくのはレミー・・・。飛膜があるアシュラは勿論のこと、俺は風の力で、アキも火の噴出で飛行している(勢い余って天井に頭をぶつけたようだが)というのに一番飛行に適した羽をもっているレミーだけが何故落ちるのだろうな?
「ちっ!?」
落下していったレミーを確認した瞬間に落とし穴に飛び込んでいく影。さすがに素早いな・・・いや、落ちたのがレミーだったからだろうか?
「いたたた・・・ってレミー! 大丈夫!?」
出力調整の下手さがこんなところでもあだとなって、結構な勢いで天井に頭をぶつけて悶絶していたアキだが、レミーが落ちたことに気づいて慌てて覗き込みに来る。・・・しかし、下には明かりがないようでまったく底が見えないし返事も返ってこない。
「仕方がない。俺たちも降りるぞ! なっ!?」
折角仲間を分けずにここまで来ておいて分断されてちゃ意味がないと降りる提案をする。アキもうなずいてくれたが、次の瞬間には顔が凍りつく。それもそうだろう、落とし穴が閉じる様子を見たらな・・・。
「くっ・・・無理やり壊すって言う手もあるが、下がどうなっているかわからない以上は危険だな。まぁ、アシュラがついているんだ、たぶん大丈夫だろう。予定は思いきり狂わされたが俺たちは俺たちで行動するとしよう。」
思ったよりも深い縦穴。どれほど深かろうと落ちる分には問題ないが・・・この漆黒の闇。さすがのオレも光がまったくないのでは見ることは出来ん。もっとも気配や風の動きで周りの状況程度はわかるゆえに不便はさほどないがな。
「レミー・・・貴様は何をやっている?」
どうやら、まったく飛ぶこともせず頭から落下したらしいレミーは頭からを地面(というよりもそこそこに固い床というべきか?)にうずめてもがいている様だ。
「ちっ! 手間をかけさせおって。」
どうやら自力で出れないらしいレミーのそばに歩いていき・・・力ずくで引っ張り出す。
「ぷは~! ありがとう、アーくん! ム~、ここ暗いよ~。」
オレやリュウトのように目に頼らない認識はレミーは出来ないようだが・・・そもそも光属性のこいつなら
「貴様ら光属性のものなら明かりをつけること程度は造作もないことだと聞くが?」
以前リュウトの奴が子供でも使える明かりをつける魔法『ライト』さえも俺は使えなかったと自嘲気味に話していたことがあったはず・・・。
「あっ、そっか~! 『ライト~』だよ~!」
こいつはどうして飛べることといい、自分が出来ることを忘れられるのだろうか? ともあれ妙に間延びした声で使われた魔法は辺りを照らし・・・迷宮か。ふん、面白いことになるやも知れぬな。
「ム~、わたしたちここに落ちてきたんだよねぇ? う~、天井見えないよ~。あっ! そうか! 飛んでいけば戻れるよね!」
珍しく自分が飛べることを思い出したらしいレミーだが、今回は無駄だな。いや・・・無駄な状況下だからこそ思い出したのだろうか? 何とも面白い奴だ。
「先ほどその落ちた穴が閉じた音がした。ただ飛んだだけでは出られぬな。・・・ふん、無理やり壊してやっても良いのだが、崩れでもしたら面倒だ。先ずはこちらの探索といくぞ。くっくっく、それなりに面白い奴が潜んでいるかも知れん。」
「ム~? 面白い??」
わからないと言う顔で唸っているのは言うまでも無くレミー。こんなことをいちいち教えるのも面倒だ。とりあえず視線だけ向けてやる。これで気づかんようなら後は知らん。
「ム~? ってアレ? ほ、ホネがいっぱい!? ひょっとしてみんなここから出られずにお腹が空いて?」
「ふん、貴様の目は節穴か? 餓死したというのならばもう少しここらに脱出を試みた跡がありそうなものだ。そして、骨にまで達する大きな怪我をしたと思われるものがかなりの数いる。ここに何かがいる・・・と見るべきだろうな。」
ふん、オレの感知網に引っかかっているのは雑魚共ばかり。だが、この手の迷宮は障害物の多さゆえに感知はしづらいもの。実力者ならばオレの感知から逃れていても不思議ではない。また雑魚に擬態する姑息な奴や自身は弱くとも強き者を召喚するサモナーなどもいる・・・くっくっく、何でもいい。オレを楽しませるだけの戦いが出来るものが潜んでいることを願うとしよう。
「ム~? よくわからないけどアーくん楽しそう! ってことはきっと良いことだよね! じゃレッツゴ~なの~!」
と、おそらく何も考えていない奴が明るく歩き出す。ふん、敵を呼び寄せる呼び水には最適かも知れん。とはいえ、こいつに任せていたら確実に迷うだろうゆえ道だけはオレが把握しておかねばならんな。・・・こいつなら迷ったことにさえも気がつかんかも知れぬが。
「ア~く~ん! ほらほら、早く行くよ~。探検に出発~♪」
・・・少々やかましいのは我慢するとしよう。くっ、こういうときは普段こいつの相手をしているリュウトのありがたみがわかるな。・・・いっそ、ここに置いて行くとするか?
「ア~く~ん!」
「貴様は黙って歩けんのか。」
「それじゃあ詰まんないよ~。」
頭の痛い空間に戦いの宴が開かれるのはもう間もなくのこと・・・。
結局リュウト&アキペアとアシュラ&レミーペアに分断されたリュウトたち! おまけにアシュラたちは迷宮です! 彼らは無事に出てこれるのか!
レーチェル「それは大丈夫でしょう? アシュラくんは最悪場合は例の闇で魔界の拠点(=アシュラの館)に一回帰れば良いんだし。」
・・・いや、たしかにそうなんですが、緊迫感を壊すような発言は止めてくれると嬉しいかな~と。
レーチエル「そんなものレミーがいる時点でこなごなに砕け散っているでしょう?」
・・・はい、再生不能なまでに(泣)
レーチェル「だったら良いじゃない♪ さて、次回は引き続きアシュラくんたち? はぁ、私が派遣したあの子はもうしばらくでてこなさそうね。まぁ、いいわ・・・レミーも一応私の弟子みたいなものだからね、応援してあげてちょうだい。じゃあね!」
はっ! 泣いている間にかってに終わらされている~~~!?




