2話 「それぞれの思い」
俺たちは天界のレーチェル神殿に行く為にエルファリア宮殿の転移陣に・・・行くとアキにばれるのでちょっと遠回りをして別の転移陣を使った。なお、あっちこっちに転移陣がありながら天界に行ける者が少ないのは使えるものを天界の方で制限しているかららしい・・・
「さて、ついたぞ。」
見る影もなく荒れ果てたレーチェル神殿。ついたことなど言うまでもないことを口に出さずにいられなかったのは俺の中の不安の表れだろうか。一体ここで何が起きている?
「うん! じゃあレッツゴ~だよ~!」
・・・レミーには不安という言葉はないのだろうか?
荒果てた神殿の中を進む。だが、レミーのいうみーちゃんや他の天使はおろかレーチェルの姿さえも見えない。
「ム~、レーチェル様・・・みーちゃん・・・どこ行っちゃったの?」
悲しげな表情を見せるレミー・・・そうだな、レミーは置いていかれる事がなによりも嫌いだった。コクト・・・俺たちがしっかり支えてやらないとな。
「いや、応戦していたのはレーチェルなんだろ? はっきり言って、俺はそのみーちゃんって子の実力は知らないが、あのレーチェルが負けるどころか傷一つでも負う状況って言うのが俺には想像ができない。」
ニコニコと笑ったり、怒って見せたり気さくなお姉さんといった感じのレーチェルだが、時折見せる鋭い視線には冷や汗が流れたものだ。俺とて彼女の実力はわからない・・・だが、俺などよりも遥かに強いってことは間違いないと思う。
「そうだよね! でも・・・そうするとどこに行ったんだろう。」
一瞬、明るい顔をして後すぐに首を傾げるレミー・・・少しは頭を使うようになったようで嬉しい限りだ。まぁ、レーチェルの安全は保障するが、みーちゃんたちの安全はレーチェルの性格上保障しきれないって言うのは・・・言わない方が良いだろうな。
「そうだな、ここにはレーチェルどころか倒れている天使の一人さえもいない。レーチェルがどこかに運んだ・・・と見るべきだろうな。」
勿論敵対する側のものが証拠の隠滅を図っている可能性もあるが、さすがにレーチェルがそれを易々と許すとは思えない。敵の戦力を削る、情報を得る・・・操りを解く実験・・・本気でしてそうで怖いな。まぁ、様々な理由から相手側に回収はさせそうもない。となると・・・
「レーチェルがここにいないのは自分たちだけで何とかしろってことなんだろうな。さっき見てきたレミーの家にも誰もいなかったよな?」
「うん、お兄ちゃん・・・いなかった。」
「たぶん、コクトもレーチェルと行動を共にしているんだろうな。最近、何かやっているって前にレミーも言っていただろ?(3部8章5話参照)レーチェルが一緒に居るなら(俺たちよりは)安全さ。」
「うん!」
お気楽といわれようが単純といわれようがやっぱりこの笑顔が一番似合うと思ってしまう辺り俺も大概に甘いのだろうな。しかし、手がかりがなくなってしまったな。
「さて、どうしようか? こういったときにアキがいると助かるんだけどな。」
何だかんだいって冷静で知識もあり、決断力に優れたアキは行動指針ではこれ以上なく頼れる。本当に近くにいないとありがたみが良くわかるな。
「ム~、置いて行ったのはリューくんだよ~。きっと、あーちゃんすっごく怒っているよ~!」
なんか想像ができてしまうな・・・。なにかご機嫌取りのプレゼントでも考えておいた方が良いのだろうか?
「そ、そうかもな。だが、その前に今は盛大にくしゃみでもしてそうだな・・・。」
その頃のエルファリア
「クシュン! クシュン! ハックシュン!!」
「女王様? またお風邪でもひきましたか?」
急に出たくしゃみの3連発にお姉ちゃんが心配そうに声をかけてくる。でも、最近はちゃんと体調も整えているし、体の不調も感じられないからたぶん・・・
「いや、リュウトあたりが噂話でもしているのだろう。・・・そういえば、リュウトが来んな? いつもならそろそろ顔を見せに来る頃なのじゃが?」
「そういえば、今日は遅いですね? 何事もなければよいのですが?」
お姉ちゃんも気づいていたとは思うけどね。だって、時々時計を見ながら首を傾げてたし。結構、細かいことにこだわるお姉ちゃんはいつもと違うことが気に入らないのかな? まぁ、こういうときは
「ふむ、では今何をやっているか調べてみるとしよう。こういったときにファンクラブの存在はありがたい・・・えっ!?」
ピッピッといじった端末。てっきり鍛錬中とかこっちに向かってくる途中とかっていう会報が入っていると思ったのに・・・最終の会報は
「こ、これは一体どういうことじゃ!」
「ど、どうかなさいましたか!?」
アキが執務中にあんな声をあげるのは珍しい。いえ、対象がリュウトくんってことを・・・考えてもただ事じゃないわね。私の質問に答える前に端末を渡してきたアキ。自分で見ろってこと?
「えっと・・・『竜神様情報・・・天使のレミー様となにやら深刻そうなお話をされた後、転移陣にて天界へ行かれた模様。現在ロスト中』・・・こ、これは!?」
「天界でなにやらとんでもないことが起きてそうじゃの。そして、リュウトはそれを私たちに伝えずに・・・フフフ、私はこれより天界に行くぞ!」
たしかにアキの考えているとおりなんでしょう。でもね、今回ばかりは賛成できないわ。
「駄目です!」
「な、何故じゃ!? 普段は・・・」
「普段はいつもリュウト殿が一緒にいたからです! お1人だけで何が起きているかもわからない天界に行くなどとんでもない!」
そう、そんな危険なことは絶対にさせられない。リュウトくんがいればきっと守ってくれると信頼もしてる。でも、アキ1人で何かあったらどうするの?
「女王様、私は少々席をはずしますがその隙に抜け出るなどないようお願いいたします。」
「わ、わかった・・・。」
一応念のために見張りもつけておきましょう。そして・・・1人で行かせるのが危ないのなら頼れる人に協力をお願いをすればいいのよ。フフ、こういったサポートは私と彼女の仕事だからね。
再びレーチェル神殿
カラッ・・・背後で何かが崩れ転がる音が響く。バッと振り返ると、そこにいたのは一人の天使。一見したところ操られているようには見えないが、レミーの話したみーちゃんの状況から考えて油断は出来ない。
「あら、いつまで立っても帰ってこない連中を回収しに来たら、いるのはあなたたちだけ? う~ん、あなた・・・最近ちょっと話題になった竜神って奴かしら? それに天使に擬態した悪魔!」
・・・俺のことはどうでも良いが、後半のおそらくレミーのことを言っているセリフは許せないな。そしてもう一つ・・・
「簡単に敵側に操られている奴が言うセリフじゃないだろう? 少なくてもレミーはお前よりは天使をやっていると思うぞ。」
悲しそうに目を伏せたレミーを抱きしめてやりながら俺は言い返す。そうだ、こいつは『帰ってこない連中』を『回収』しにきたといった。間違いなく操られ組みだな・・・もっとも敵の規模がわからない以上無事なのがレミーだけ・・・ってことになっていても不思議ではないのだが。
「フフ、操られているのではないわ。真実に目覚めたのよ・・・。私たちに協力しないというなら残念だけど死んでちょうだい。あなたたち程度なら大した損失でもないわ。ましてお情けで見習いになったような天使もどきなんてね。」
目の前の天使はポンと手を合わせると・・・現れた魔法陣から巨大な双頭の犬が出てきた!?
「くっ、こいつはまさか!?」
「あら、知っているみたいね? こいつの名前は魔犬『オルトロス』・・・権天使たる私の僕よ。さぁ、これで2対2、あなたたちに勝ち目はないわ。」
「ム~? ・・・権天使って何?」
正直レミーの発言にはガクッと来た。なんで天使のお前が天使の階級知らないんだよ。
「あ、あのなぁ、お前から見れば5階級上の天使の階級だろうに・・・。」
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※作者注 天使の階級は下から順に
見習い天使(レミーはここ)
準天使(みーちゃんことミミはここ)
下級天使
・・・ここまでが『竜神伝説』オリジナルです。この先は伝承上の順位で 日本名『複数名/単数名』で表記します。
天使『アンゲロイ/アンゲロス』
大天使『アルヒアンゲロス/アルヒアンゲロス』
権天使『アルヒャイ/アルケー』
能天使『エクスシアイ/エクスシア』
力天使『デュミナス』
主天使『ドミニオンズ/ドミニオン』
座天使『スローンズ/スローネ』
智天使『ケルビム/ケルブ』
熾天使『セラフィム/セラフ』となっています。
以上、どうでもいい話でした!
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「ム~? そうなんだ?」
・・・レミーが天使もどきと言われるのもなんとなくわかる気がするな。人格や強さは申し分ないのに、この知識のなさは致命的かも知れん。
「・・・貴様ら、私を舐めているのか? こんなところでコントをやろうとは・・・」
いや、別にコントをやっていたわけではないのだがな。さてと・・・
「準備はいいか? レミー?」
「もっちろんだよ~! リューくん、いっくよ~!」
先ずは前哨戦。ここで勝てなければ話にならないということだな。そして、なんとしてでも情報を手に入れないとな。
さて、リュウト&レミーというちょっと珍しいコンビでのタッグ戦に次回はなりそうですね。そして置いてかれたアキはどうする!
アキ「無論追いかけるに決まっておろうが!」
・・・来てたんですね。しかし、メイは反対の立場のようですが?
アキ「ムッ、わ、私が女王だ! イザとなれば、その・・・」
まぁ、実質的なトップは・・・ですからねぇ。しかし、彼女もただ見ているつもりはないみたいですね。
アキ「誰かに連絡を取っていたようじゃな? 一体誰じゃ?」
サポートを自負する彼女ですよ^^ まぁ、普通に考えれば彼女、ひねってみればもう1人いるかもしれませんが、連絡して戦力になる奴を味方に出来そうな人物というと・・・
アキ「おお! なるほど! たしかに奴が協力してくれれば頼もしい。フフフ、待っておれリュウトよ。すぐに私を置いていったことを後悔させてやろうぞ。」
・・・すでに後悔してそうですね(汗)さて、まだまだ謎が山積みの第4部。次回もよろしくお願いしますね~!




