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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
3部9章『永遠を求めて』
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4話 「誰がために」

 

「とうとう、奴が動き出したみたいさねぇ?」


 彼女はいつもこうして唐突に後ろから現れる。フフフ、そんなところ嫌いじゃないけどね。


「ええ、そうね。でも、それがどうかしたのかしら?」


「おや? あの坊やはあんたのお気に入りじゃなかったのかねぇ? ・・・ルーン?」


 あら? 私『たち』の希望だったはずだったんだけどね? でも、たしかにそうかもしれないわね。


「だからよ、お気に入りだから今回は手を出さないの。フフフ、もっと美味しく実ったところを味わいたいのよ。」


 竜の坊や・・・こんなところで敗れるなんて勿論のこと、試練なんていうことさえも私は許さないわ。あなたが本当に私たちの希望となりえるなら・・・この程度は涼しい顔で乗り越えて見せなさい?




「はぁはぁ・・・ふぅふぅ。」


 息が切れる。これがリュウトやアシュラだったらこの程度の距離をこのぐらいの速さで走ってもなんともないんだろう。特にアシュラだったら全力疾走1日半なんて汗もかかないかも知れない。でも当然ながら私はクタクタ・・・でも足を止めるわけには行かないの!


「もう・・・とっくにばれてるよね?」


 そんな当たり前のことを自分で口に出す。ばれているんだから、休んでいる暇はないと・・・そう自分に言い聞かせながら。そう、私がいなくなったなんて言うのは当然で、私がどこに向かっているかだってリュウトやお姉ちゃんならとっくの昔に気づいているだろう。だったら、きっとリュウト本人が追いかけてきているはずで・・・。たぶん、リュウトは私が不老の力を得ることは反対する。だって・・・


「きっと、リュウトはそんな力を欲しくなかったって思っているから・・・。」


 つい口に出してしまう。口にするからこそ、自分の思いがはっきりわかるから。そう、レーチェルさんもリュウトも不老の力なんてきっと欲しくなかった。特にレーチェルさんは怨んでいるぐらいかもしれない。・・・それはきっと辛いことなんだろう。自分が知っている人がどんどん老いていって死んでいく。それなのに自分だけは老いることも死ぬことも出来ない。それはきっと拷問なんだと思う。


「だから・・・私もそこに行くの。リュウト1人を・・・そんなところに置いてなんて行けない。」


 今のままでは私はいつか死ぬ。・・・それは生き物としてあるべき自然な姿だけど、リュウトにはそれは訪れない。私がいなくなってもレミーやアシュラにママナたちはもうしばらくは一緒にいてくれる。レーチェルさんはいつまでも隣にいてくれるかもしれない。でも・・・傲慢かな? リュウトのことを本当に支えられるのは私だけだと思う。彼を戦いに明け暮れる孤独な地獄になんか行かせたくない。私が落ちる地獄は死後の地獄なんかじゃなく、リュウトの傍で生き続けるより過酷で幸せな地獄以外はないと思う。


「はぁはぁ・・・あとちょっと、きっと後ちょっとだから・・・。」


 走り続けた足はガクガクと震えて、今にも倒れそう。心に体がついて来れていないのは自分でも良くわかる。でも、きっともう少しで目的の森につけるから・・・。


「あ! つ、ついた・・・。」


 霞みだした目に映ったのは確かに森。動かない体に鞭打つように、ほとんど這う様にだったかもしれないけど私は森の中へと進んでいった。




 ところどころ漏れるアキの声。ううん、きっと自分に言い聞かせているのだろう声。でもね・・・


「アキ・・・それじゃあ駄目なんだよ。リュウトはそんなことは望んでない。あいつは・・・あいつが望んでいるのは」


 きっと、アキが向かっている先は、目的はアレなんだろう。でもね、リュウトが望んでいるのはアキと・・・私たちと笑っていられる未来なんだ。それが限りある有限の時間と知っているからリュウトはそれを大切に抱きしめている。リュウトは・・・私の自慢の弟は自分が苦しいからって大切な人にその苦しみを味わってもらいたいなんて思う奴じゃないよ?


「あ、あの森は・・・やっぱりアキはそこに向かってたんだね?」


 そうだとは思っていた。私も噂には聞いていた伝説の不老の森。ここから先は飛んではいけないかな? でも、今の疲弊したアキの足よりは私の足も早いだろうから大丈夫ね。


 勿論、隠密術はそのままに私はアキを追って森に入った。でも・・・アキは気づいていなかったみたいだけど、私が入ったとほぼ同時に森の入り口がつたで閉じたのが見えた。やっぱり、ここは普通の森じゃないよぉ。このぐらいならリュウトは無理やり入ってくるとは思うけど・・・普通に考えたら本来はもうリュウトなら追いついてきているはず。私も本当はここに来る前にリュウトを誘導するつもりだったし・・・一体何が起こっているの?


「きゃあ!?」


 突然の悲鳴に私は、はっ! と顔を上げる。悲鳴をあげた主、アキが無数のつたに巻き取られて森の奥に運ばれていく!? ってなんで炎で燃やさないのよ! あっ、そういえばアキはこういう突発的な事態に弱かったっけ? まして今は疲労困憊状態だから・・・。


「こ、この! アキを離せぇ~! え? えっ!? うわぁぁぁぁああ!」


 わ、私まで捕まっちゃったよぉ~!? りゅ、リュウト~! た、助けて~~~!!




 ・・・う、ううん? わ、私はどうしたのかしら?


 たしか不老の森を目指して・・・ううん、森には確か着いたはず。それでどうしたんだっけ?


「・・・アキ? 気がついた?」


 ・・・ママナ? ママナがつたに絡まっている? う~ん、なんていうのかな?


「ママナ? そのような遊びをする歳ではそなたはもうなかろう?」


「何言っているのよぉ~~!! 私はアキを心配してついてきて、捕まったの! アキだっておんなじ格好しているんだよぉ!」


 ・・・えっ? えっと、自分の姿をしげしげと見る。たしかにつたが絡まっているわね? っていうか首も動かしにくいような??


「ええ~~!? なんで? なんで!? 私、捕まっているの~!?」


「ブ~! ようやく、事態を把握・・・はまだしてないみたいだね。とりあえず落ち着いてよぉ~。リュウトと一緒ならもっと冷静なのに私じゃ安心できないのぉ~。」


 そ、そりゃリュウトは強いだけでなくて色々安心できる要素があって・・・ふう、ひとまず落ち着こう。今更無駄で無意味かもしれないけど、言葉遣いまで素になっちゃっているし。


「す、すまぬな。しかし、これは一体どうことじゃ? このつるは以前、見たような魔界の植物ではない。このように生き物を襲うなんて考えられんのじゃが?」


「ブ~、そんなの私には分からないよぉ~。ねぇ、魔界の植物っていうのも私は知らないけどさぁ、急に落ち着かないで炎で焼いちゃってよぉ?」


 ・・・ママナ、簡単に言わないでよ。そんな都合よくつるだけ焼けるならもうやっているよ?


「すまぬが私の魔法コントロールではそのような加減は出来ぬ。・・・森ごと焼き尽くしてよいならやってみるが。」


「・・・いいわけないでしょ~~!! そんなことやられたら私たちまで焼け死んじゃうよ~! はぁ、これはリュウトが来てくれるまで待つしかないか。」


 うん、普通に考えたらそうだと思う。以前使った範囲濃縮型のエクスプロージョンでも私はもちろんの事、これだけ近いとママナも・・・。でも待っているだけだと私の目的が果たせない。きっと、リュウトは私が不老の力を持つことを許してくれない・・・。




 はぁ、これはまだあきらめてないって感じだよぉ~。でも、アキのいうとおり不可思議な事態なのは間違いないし・・・リュウト、お願い! 情けない姉だけど、早く助けに来て。まだ、なにか・・・とんでもないことが起きる気がするの。


今回はアキ&ママナチーム。そして久々に登場のルーンと謎の人物です!


アキ「う・・・む。ルーンは元々登場回数は少ないほうゆえ問題なかろうが・・・私がこう・・・・その・・・しているのは珍しいな。」


はぁ、はっきり言って暴走ですね!


アキ「はっきり言うでない! そ、それにこれもリュウトのことを思ってなのだぞ!」


まぁ、たしかにそうなんですが・・・と、これは今言うわけにはいきませんね。


アキ「ムッ? なにやら気になる言い回しだな?」


メイ「その前に女王様? 私に何か言うことはございませんか?」


アキ「メ、メイ!? そ、そのだな・・・。これもリュウトの・・・」


メイ「ええ、わかっていますとも。私が女王様を思って色々するのと変りませんよね? 作者殿? ちょっとお席をはずしていただけませんか?(ニッコリ)」


は、はい! すぐに席をはずします!! どうぞ、ごゆっくり!


アキ「こ、こら! 待て! その、待ちなさい! 嫌あああぁぁぁ!!」


・・・ふぅ、あとがきで僕以外の者が犠牲になるって実は初? 第一号がアキで加害者がメイって言うのは2人の関係を如実に表してるな。さて、囚われのアキ・ママナの身に何が起きる! そしてリュウトたちは間に合うのか!? 次回もよろしくお願いします!


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