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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
3部8章『レミー奮闘記』
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3話 「堕天使レミー」

 

 ゆらりと揺れるように立ち上がったレミー。彼女であって彼女でないもの・・・その一番怖い能力は高い自然治癒力。本来致命傷だったはずの怪我はもう痕跡さえもないほどに治っている。


「さて、あなたとは久しぶりね・・・っていうべきかしら?」


 虚ろだった目に僅かながらに意思が宿って・・・さすがに私相手じゃ本能で戦うってわけにはいかないでしょう?


「またあなたなのぉ~、レーチェル。事故って訳でもなさそぉだし、私を故意に呼び出してどうするつもりかしら?」


 けだるげな声、妖艶な表情、純白から漆黒に染まったその翼。知らない者だったら彼女をレミーと判断はけしてしないわね。・・・でもそれでも彼女はレミーだわ。2重人格ですらない。彼女の悪魔の血、もしもレミーが闇に染まったらどうなるか、その結果の現れに過ぎないのだから。


「そうね、今回はあなたの実力を知るためよ。レミーのためにもね・・・。」


「はぁ、まだあの子にわたしの力を取り込ませる気? 所詮IFの世界の住人のわたしに生命だとか人権だとか言う気はないけどぉ、あの子にはわたしの力は荷が重いと思うわよぉ~?」


 そうでしょうね、あなたの力は闇そのもの。特性的に言えば邪竜神の力に近いかもしれない。もっとも全盛期のあいつほどの強さはないけれど・・・今のリュウトくんやアシュラくんなんて相手にならないほどの力が彼女にはあるわね。


「ええ、そのとおりでしょう。それでもなお、その力はあの子に必要な力よ。」


「ふ~ん、もしわたしがあなたたちに全面協力をしたとしても?」


 別に意外なことではないわ。彼女はレミーのIF、つまり彼女はレミー自身でもある。コクトくんへの兄としての思慕、リュウトくんへの信頼と好意、アシュラくんへの愛、他の人たちへの仲間意識・・・そういった感情面は多かれ少なかれ彼女もレミーを引き継いでいる。それでも


「駄目よ、あなたが表に出るための条件はなかなか難しいでしょう? それに私たちが戦わなければならない敵はあなたの力だけでは足りないのよ。」


 この子、堕天使レミーの出現条件は1つは今回のケース、レミーに命の危機が迫ること。ただし、闇の瘴気に侵されていない事が条件だったり怪我や状況の度合いがランダムだったり戦場で狙ってやるには危険すぎる。他にもレミーが強い恨みや怒りを感じることとかいくつかケースがあるんだけど、どれもレミーが故意に使えるとは言えないわ。そして


「そう、あなたはレミーとわたしの力を融合させる気なのねぇ。両方の力を使えればさらに有用性が上がるし~、それに・・・」


「あなたもわかっているようね。あなたの力は闇、レミーの力は光。本来相容れないはずの2つの属性の融合が生むものは・・・無の属性よ。」


 融合属性の無。数ある融合属性の中でもただ一つ10大属性、それも天意属性に数えられるのには理由がある。唯一4つの基本技が存在すること。そしてレミーのように特殊な生まれを持つものが融合しないまでも自身の属性として持つものがいるから・・・。


「ふ~ん? まぁいいわ。でもね、わたしは久しぶりに出てきたの。このまま遊びに行かせて貰うわぁ~。」


「それを私が許すと思う? まぁ、私に勝てるほどの力を見せたら今日一日ぐらいは認めてあげるわよ。」


「自分で呼び出したくせに勝手ねぇ~? わたしとしてもレーチェルには感謝してるし、死なない程度に相手させてもらうわ!」


 あら? 私に勝つ気なんだ? そう・・・ふふ、力の差って言うものを見せてあげるわ! まだ、あなたたちに負ける気は私にはないわよ。




「フフ、いくらあなたでも空からの攻撃は効くでしょう?」


 堕天使レミーがその漆黒の羽を使って空高く飛ぶ。そうね、たしかに自由に飛べる羽があるなら上空からの攻撃は有効だわ。それは彼女がレミーよりも頭を使っている証拠ね。・・・あの子は自分が空を飛べることさえも普段は忘れているから。でもね、相手が私っていうことを考えるとどうなのかしらね?


「甘いわ。水の力だってね・・・空を飛ぶことは出来るのよ!」


 水の力を・・・水蒸気を噴出することでの飛行。リュウトくんの風の力での飛行と似た様な技ね。風よりはコントロールが難しいけど・・・私の技術はリュウトくんの比じゃないわよ!


「っ!? ・・・ホント、レーチェルってなんでも有りなのねぇ。でもね、それでも空で有利なのはわ・た・し。シャドーアロー! あなたでも闇は跳ね返せないでしょう?」


 レミーの光の矢シャイニングアローに対する闇の矢シャドーアローってわけね。レミーよりも威力が高いのは闇の特性としても連射速度は彼女の技量かしら。でもね・・・


「あなたはどこを見ているのかしら?」


 背後からそっと彼女の頬を撫でる。その表情が一瞬だけ驚愕に見開かれ、そして


「ダークボール!!」


 闇の基本技の一つ、ダークボール。けれど体から飛び出してくる闇のボールの多さは彼女の実力の現われね。うんうん、なかなか良い感じだわ。無数のボールはそれぞれが衝突をし、方向を変え、加速減速と不規則に動く。そして私・・・の幻影にも当たったみたいね。


「げ、幻影!?」


「あらあら、私が幻影使いだってことあなたはよく知っているはずだけど?」


 彼女はレミーのように単純なわけでも、挑発に乗って憤ってくれるタイプでもない。でもね、それならそれで嵌める手段っていうのもあるのよ。実と思わせて虚、虚と思わせて実。実の中に虚を混ぜ、虚の中に実を隠す。さぁ、考えなさい? 全てを疑い、身動きが出来なくなるまで・・・


「しょうがないわね・・・死んでも怨まないでよ! ファントムアロー!」


 彼女の必殺技、ファントムアロー・・・レミーのイリュージョンアローの連発であるこの技は防御も回避も不能。転移だって虚構の狭間に存在するこの矢を無効にして避けることは出来ないわね。でもねぇ・・・単純な方法があるのよね。


「えっ!?・・・な、何故? 確かに当たったはずなのに・・・なんで効いてないのよぉ!?」


「効いてないことはないわ。なかなかに痛かったわよ? うん、合格点あげちゃうわ♪ でもね、これはあなたと同じよ。『ケアバブル』見えないかしら? この薄い泡の膜が? この技はね、この中にいるものの治癒力を高めるのよ。よほどの攻撃力を持っていない限り、この中にいる私にはダメージは残らないわ。」


 あまり表情が変らない堕天使レミーだけど、これにはちょっと悔しそうね。『リフレクト』と違って常時発動してるのにはちょっとコストが高いけど、私の強さの秘密の一つではあるわね。そして


「じゃあ、そろそろ私からも攻撃を・・・いいえ、終わらせてもらうわ。『ミラーフィールド』!」


 私の声と共に彼女を囲むように現れた無数の鏡。さすがの彼女にも焦りが見えるわね。壊そうと試みてるようだけど・・・


「無駄よ。その鏡は私の防御にも使うぐらいだもの。あなたの実力じゃあ、まだ壊せないわ。でね、見た目どおり鏡なのよ・・・この中に光を入れたらどうなるかしら?」


 彼女の顔がさっと青ざめる。私はね、幻影使いであると同時に水と光を使った世界でも数少ない・・・ひょっとしたら唯一かもしれない鏡使いでもあるのよ。


「さ、あなたの言葉を返すわ。殺しはしないわよ、呼び出しておいて悪いけど今日のところは帰ってもらうわ。」


 1本、たった1本の光を中に差し込んであげればそれでいい。鏡に反射し、増幅され、彼女を貫いた光がまた跳ね返って彼女に当たる。1本の光は今や無数の光の檻になる。 数瞬後、膝から崩れ落ちた彼女を見てから技を解除・・・うん、元のレミーに戻っているわね。しっかし面白いわね~、レミーが危機になると堕天使レミーが、堕天使レミーがピンチになるとレミーが出てくるんだから♪ ま、封印状態の戦術レベル10%、能力20%で圧勝かぁ。思ったよりは出来るって評価にしておきましょうか。



ついに本格的に出てきましたレミーの堕天使モード! レーチェルにいいようにあしらわれていますが、作中でも言われているように今のリュウトやアシュラよりもずっと強いです。どのぐらいかというと2人がかりでも瞬殺されるぐらい・・・。


堕天使レミー「フフフ、だというのに相手がレーチェルだったから見せ場がなかったじゃない。責任を取ってもらおうかしら?」


せ、責任って!?(汗)


堕天使レミー「あら、決まっているじゃな~い。少しわたしのストレス解消に付き合ってもらうわ。大丈夫・・・レミーほどじゃないけど、わたしも回復は使えるから。死ぬ前には開放してあ・げ・る・・・つもりだから。」


い、いやだぁ~~~!! れ、レーチェル! た、たすけ・・・なんで笑顔で手を振っているんだ~~~!!!


レーチェル「ってことで作者くんには用が出来たようだから今回はここまで! 次回のレミーは何をしてくれるのかお楽しみに。・・・私は不安だけどね。」

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