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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
3部7章『優しさと非情』
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4話 「正義の在処」

 

「ちっ!? 化け物の仲間は悪魔というわけか。だがな、こいつはてめぇらを殺す為の道具だ! まとめてくたばりやがれ!」


 ただ1人・・・いや、一団全てだから1人ではないか・・・わかっていないのは盗賊頭。ここにいる悪魔は並みの悪魔などとは一線をかく存在だということ。そして、なによりもお前の頼っているそれは・・・


「ふん、ガラクタが・・・」


 無造作にアシュラがゴーレムもどきの腕をもぎ取る。まさに力技、こんな奴に技も技術もいらないとばかりに力だけで・・・それも相当に手加減してだ。


「なっ!? て、てめぇ!! ・・・ば、馬鹿な!?」


 喚く盗賊頭を無視してゴーレムもどきの足をアシュラは払う。・・・なぁ、それ俺の方に倒れてきているのは気のせいか?


「・・・アシュラ、配慮が足りんぞ! やはり貴様のような奴にレミーをやることは出来んな。」


 俺の方に倒れてきたゴーレムもどきをさらに逆方向に殴り飛ばしたのはいつもどおりの黒ずくめの騎士・・・コクトだ。


「ふん、何の為に貴様がいるのだ。ましてレミーをやらん? 誰があんな奴を欲しいといった。勝手に送りつけてみろ、オレの方から返品させてもらう。」


「な、なんだと!?」


 相変わらずの兄馬鹿と相変わらず素直じゃない奴の間で頭の痛い会話が交わされているが・・・まぁ、戦いにおけるチームワークは悪くないんだよな、こいつら。


「悪魔共め・・・なめやがって! こいつの秘密兵器、受けやがれ!」


 ゴーレムもどきの胸部が開く? ・・・あれは銃とか言ったか? いや、レーチェルに教わった機関銃とかって言う奴か。まぁ、ってことはやっぱり・・・


 雨のように・・・上から降ってくるわけではないが、そういうべきなのだろうか? たしかにばら撒く量は凄いかもしれないな。だが、こんな速度では


「ふん、この程度避けるまでもないな。」


「俺の鎧を貫きたければ10倍の威力は用意してもらおうか?」


 2人とも腕を組み、ただ立っている。たしかにアシュラの肉体にしてもコクトの鎧にしても奴らのエネルギーで(放出などしなくても)強化されている以上はあの程度の攻撃力は蚊に刺されたほどにも感じないだろう。もっとも奴らが本来楽に避けられるものをあえて受けるのは俺が後ろにいるからか・・・今の俺にならば確かに痛い程度には効きはする。今回は完全に俺が足手まといだな。


「リュウト、下らんことを考えるなよ。」


 俺の方を見向きもせずにコクトはそう語る。少々驚いた俺をクスリと笑い、なお続ける。


「お前には返しきれないほど大きな借りがある。あの時の俺は足手まといどころじゃなかっただろ? 足を引っ張る? それも違うな。何も知らず、なのにわかったつもりでお前たちと敵対し、取り戻せないものを多く奪い失い・・・一番大切なものを泣かした。そんな俺だからこそ! 今度は間違えない! 守るべきものも目指す未来もこの手の中にすでにある。そう、礼をかねて大きな借りのほんの一部、返させてくれ。」


 借りか・・・そんなものはもうすでにない。というのは俺の傲慢なのか? だが、お前の気持ちはありがたく受け取っておくよ、コクト。そして


「ふん、これを教訓に貴様がより強くなるというのなら惜しくはない代償だ。これでいま少し敵がまともなら楽しめただろうがな。」


 アシュラもな・・・いつも思う。俺は本当に仲間に恵まれたと。1人で戦う・・・そう思ったときも何度もあった。だが、きっと俺は一人では何も出来なかっただろうな。俺が英雄なんじゃない、全員で英雄なんだと心から思う。


「馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿なぁ~~!! なんでてめぇらは死なねぇんだ! こいつは貴様らを・・・」


「えっとね~、レーチェル様が言うにはそれは失敗作なんだって。いいとこ低級ぐらいの悪魔と戦うのがやっとで普通に天使たちの方が強いから破棄されたって言ってたよ?」


 当たり前のようにニコニコとそしてフヨフヨと浮かびながら存在していたのは勿論レミー。天使であるそんなレミーを見て盗賊頭の顔色が変る・・・もっとも俺がそうであって欲しいと思う姿とはかけ離れたものであったが


「て、天使様! お助けくだせぇ! 醜悪な悪魔に天罰を与え、か弱い人間を守ってくだせぇ。」


 物はいい様だな。俺としてはまったく同じセリフを悪魔をお前に、人間を魔族に変えて返してやりたいぐらいなんだが? ここまで醜いのはごく一部と知っていても同じ人であったことを恥じたくなるほどにな。


「ム~? わたしはリューくんたちの味方だよ~?」


 ま、相手が悪すぎたよな。他の天使や神なら悪魔の味方はしないかもしれないが、レミーとレーチェルは種族になんて何の価値も見出してない。レーチェルは身体的な特徴程度の価値なら持っているかもしれないが、それ以上ではありえないだろうな。


「なっ!? 天使は正義を守るものだろうが! 悪魔は悪! 俺たち人間は・・・」


「ム~? わたしは難しいことわからないけど、アーくんもリューくんも悪だとは思わないよ~?」


 ・・・まぁ、俺は口が裂けても正義とは名乗れないが、こいつと引き合いに出されて悪と呼ばれたくはないな。無条件に悪と呼ばれることを嘆いていたママナの気持ちが良くわかるよ。正義など・・・自分で名乗るものではないさ。他者の胸の内にこそ、その居場所があると俺は思うがな。


「ふん、オレは正義や悪など下らんものはどうでもいい。 ・・・貴様程度にオレのライバルが討ち取られては面子が立たないのでな。」


 アシュラが面倒だといわんばかりにゴーレムもどきの胴を殴るとバチバチと放電を始める。・・・ついでに雷を流したか?


「えへへ~、アーくんはレーチェル様に話を聞いてすぐに走り出してたもんね~? ホント、リューくんたち仲いいよね?」


 仲がいいとか悪いとかってレベルではない気がするな。俺たちはまさにお互いの命と誇りをあずけあう戦友なんだろう。・・・で、レミー? 確かに効いているみたいだけど放電している敵に水の矢は俺たちにも危ないんだけどな? とりあえず今の俺には・・・だが


「リュウトですら名乗れない正義の旗・・・貴様ごときが掲げるな。・・・リュウト! これはお前の戦いだ! 最後はお前が決めろ!!」


 コクトが振り下ろした剣はゴーレムもどきの体勢を大きく崩し、俺の方へとよろよろと歩を進めさせる。そうだな・・・なら俺が幕を引かせてもらおう!


「竜神流・・・風竜斬!」


 俺に残っている最後の力・・・全てを込めた思いの一撃はゴーレムもどきを両断した。まぁ、あれだけお膳立てされていて切れなかったら他ならぬリュムに愛想をつかされるな。


「師匠は! 師匠はこんな心無き者に負けるほど弱くはない!!」


 ふっ、俺の言いたいことは代わりにヤマトが言ってくれたらしい。そうだ、俺が今まで戦ってきた者・・・邪竜神、サタンを代表する魔王たち、どいつもこいつも自分の譲れない未来の為に戦っていた。どっちが正しかったかなんてわからない。だが、少なくてもこいつほどには間違っていたはずがない!


「くっ! くそ!!」


 三流のド悪党は言うことも三流か? しかし、なんだ? あの投げ捨てていったものは? 煙幕? いや! 毒ガスか!?


「リュウト、ここは俺に任せてもらうぞ。」


 ん? ああ、そうか! レミーとコクトには毒は効かなかったな。ということであっさりと毒ガスの発生装置は斬られたが・・・逃げられてしまったな。


「ん~、たぶん大丈夫! というよりも一番可哀想な道を選んだと思うな~。」


 へっ? ああ、なんとなくわかった。・・・迷わず成仏しろよ。迷うと余計に拷問時間が増えるから。


 しかし、今回は・・・疲れたな・・・


「し、師匠!? しっかりしてください!! レミーさん、早く! 師匠の治療を!!」


「えっと、ヤーくんだっけ? ごめんなさい、わたしは解毒はまだ・・・」


「レーチェル様がこっちに来ないところを見ると自分たちで何とかしろってことか・・・。」


「ちっ! オレがエルファリアまで運んでやる。こいつには貸しが増える一方だな。」




 おまけ


「はぁはぁ・・・ここまで逃げれば大丈夫だろ。くそっ! 酷い目に会った! あいつらいつか復讐してやる・・・行くぞ! やろう共! ん? おい、なんで返事を?」


「うふふ、あなたの部下はもう話す元気はないみたいよ? 念のために網を張ってたけどこんなに逃げてくるなんてね~?」


「おい! く、来るんじゃねぇ! く、来るな・・・うぎゃぁぁあああ!」


「うふふ、リュウトくんが化け物だったら私やライオスは何かしら? 簡単には死ねないから覚悟することね。・・・リュウトくん、あなたもこんな場所じゃ死ねないわよ。死んだほうが遥かに幸せだと思える試練と運命がまだあなたを待っているんだから・・・。」


 ま、それでもリュウトくんがカーバンクルたちの幸運の加護を手に入れたことはラッキーだったわね

盗賊団は無事壊滅! アシュラ、レミー、コクト・・・止めにレーチェル。むしろ黙祷を捧げたいぐらいな哀れさがあります。自業自得だけど。・・・ぐふぅ!?


アキ「馬鹿なことを言うでない! リュウトが! 今回は無事に済むと思っていたのに倒れてしまっているではないか! レミーも! 自分が毒が効かなかろうと解毒ぐらい覚えているべきじゃろうに!!」


あ、アキ・・・さん・・・す、少し落ち着いて・・・><


アキ「ああ、こうしてはおれない! 早くドクターに連絡を入れて血清を用意させないと! りゅ、リュウト、死んだりしたら・・・死んだりしたら嫌なんだからね(泣)」


あ、あの・・・アキさん? こっちも・・・重症なんですが・・・?


メイ「あとでレーチェル殿のところへ送っておきますわ。リュウト殿が倒れた一番の元凶を探しておいででしたので・・・」


あはは、い、生きていたら次回会いましょう・・・がくっ。

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