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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
3部7章『優しさと非情』
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1話 「斬るべきもの」

「ご報告いたします!」


 息を切らしながら執務室に入ってきたのは一人の兵士。これはただ事ではないわね。


「うむ、聞こう。」


「我らが森の友『カーバンクル』の住む森に近づいている一団があります!!」


 !? いつかはばれるとは思っていたけど、とうとうきたのね。『カーバンクル』見た目はちょっと大きなリスって感じの彼らだけど、最大の特徴はその額にある赤い宝石。カーバンクルストーンって言われるその宝石は持ち主に幸せを運ぶ力があるという。同じような貴水石と違って力を込める必要がないからお手軽ってこともあって(強い力を込められた貴水石はカーバンクルストーンよりもずっと強力)狙われている。・・・あの石は少なくてもカーバンクルたちには不幸を運んでいるよね。だって取られたら死んじゃうんだもん。


「メイ! 今すぐカーバンクルの森に兵を送るのじゃ! そのような者たちに1人たりとも、彼らの命を奪わせてはならん!」


 彼らは本当にただ穏やかに暮らしているだけなの。もし石が出回ったらまた彼らはその魅力に囚われたものに狙われるんだろう。それだけは絶対に阻止しなくちゃいけない!


「その役目・・・俺に任せてくれないか?」


 突然、思いもしなかった方向からかけられた声。珍しく鍛錬を休んでいたリュウトからかけられた声だ。で、でも・・・


「駄目だ! そなたは・・・そなたはわかっておるのか! カーバンクルたちを狙っている者たち・・・それは」


「わかっているさ。だが、カーバンクルの森からここまでどれだけ離れている? 俺とてこのあたりの地理ぐらいは勉強したぞ?」


 も、森の中を突っ切っていくことも出来るエルフの兵でも普通のものなら約1日はかかるわ。彼らがカーバンクルを狙っているってわかってからすでに1日、これから兵をすぐに出しても助けには入れるまでにさらに1日・・・だけど!


「確かに時間はない! だが、そなたを動かすことは出来ん。 竜神であるそなたがそんなことをしたなどと知れたら・・・」


 本当はそんなことどうでもいい。たとえ、リュウトに・・・竜神に殺されかけたなんて、何人かは殺されたなんて言いふらされても、それが真実竜神である証拠は彼らには出せない。そもそも彼らがやろうとしたことを考えれば言えないし、言っても世論は私たちにつくと思う。でも!


「アキ、わかるだろう? 俺の名誉なんてどうでもいい。大事なのは今、理不尽に奪われようという命があるということ。それをもっとも早く助けに行けるのが俺だと言うこと・・・それだけのはずだろ?」


 わかってる! 私だって・・・そんなことはわかっているのよ。でも、あなたはそれでいいの? あなたは自分を竜だって竜神だっていうけどあなたにとって本当の自分は・・・


「アキ、キミの考えていることはわかる。それはとてもありがたく嬉しく思う。だがな、俺は今までも魔族を斬ってきた。魔族だからじゃない、それは俺が生きるためであり、俺が許せないと思うことを阻止する為だったはずだ。今更・・・今更相手が人間だからって躊躇してしまったらそれが嘘になってしまうじゃないか?」




 今の俺が人間を名乗ることが許されるかはわからない。そもそもそんな権利は初めからなかったのかもしれない。だが、それでも俺は竜である前に、神である前にまだ人間なのだとも思う。


 だから辛いと思う。苦しく思い、悲しくも思う。それでも俺は自分の信念を裏切るわけにはいかないんだ。それはきっともっと辛く、それを許してしまったら俺は今度こそ戦えなくなってしまうのではないかと思うから。


「女王様・・・ここはリュウト殿にお任せしましょう。それがもっとも早いのは事実です。今は一刻の猶予もありません・・・。」


 メイが真面目な顔で言う。彼女はそれがベストな判断だとわかっているから・・・でも、私情を入れてないわけでもない、非情に徹していられるわけでもない。彼女の顔は真面目さの中にも悲しみも優しさも混じっている。わかっていてくれるんだろう、俺がこの戦いから逃げてはいけない理由も、それでもなお痛む胸中も・・・


 そして・・・けしてアキもわかっていないわけではないんだ。だからあんな風に苦しそうな顔をする。もし、俺が苦しむだけだったのなら彼女はどんな合理性も捨てて俺をけして行かせはしないと叫ぶのだろう。だがら、そうできないことが彼女を苦しめている。


「・・・わかった。そなたに・・・任せる。だが、これは女王としてではなく、そなたの恋人として言わせてくれ。・・・私にとってもっとも大事なのはそなただ。命の心配は今回はしていないが、心も大切なのだ。傷つかないで欲しいとは言わない。言えるものならば言いたいが今回は言うことはできぬ。だが心を死なすことだけはしないでくれ。私の愛するそなたのまま、ここに戻ってきて欲しい。それだけだ。」


 ここには人目がある。本来なら女王としてここでは言ってはいけない言葉。そうであるからこそ重みがある、アキの思いがはっきりとわかる。だからこそ、俺にはこうとしか言えず、またそう言う義務がある。


「ああ、必ず帰ってくるさ。笑顔でな。・・・だから俺の好きな笑顔で待っていて欲しい。」


 さぁ、喋っている時間も惜しい。止めて来るさ、命の価値など皆同じ。だからこそ今回カーバンクルたちを救うために斬るべきものは・・・人間だ。

今までは敵は魔族でしたが、今回の敵は人間。リュウトにとっては精神的な大きな試練です。


レーチェル「甘いともいえるけどね。許せない存在なら戦うしかないのよ・・・種族なんて関係なしにね。」


口癖に近いそのセリフ・・・プラスだけでなくマイナスの意味もあったんですね。


レーチェル「そりゃ、そうでしょう。私は仲良くなれる相手は悪魔だろうと鬼だろうと仲良くなるし、許せない存在なら人だろうと天使だろうと神だろうと戦うわよ? 勿論、いきなり実力行使ばかりじゃないけど今回は話し合いでもないでしょう?」


向こうは自分の益のために虐殺するつもりで来てますからねぇ。リュウトに恐れをなして今回は引いたとしても・・・ですし。


レーチェル「時間を置いてリュウトくんがいないときにまた襲うでしょうね。それでも逃げ出したり、命乞いされたら見逃しちゃうのが彼だから心配だわ。」


・・・そうですね。(これ以上言うとネタバレになるから黙っておこう)


レーチェル「ん~? 作者くん? あなた何か隠してるでしょ?」


い、いえ、あなたほどでは! はっ!?


レーチェル「私ほどにはねぇ? じゃ、やっぱり少しはあるのね! さぁ、きりきり話なさい!!」


そ、それは言えません! グヘッ? グハッ!? ちょ、ちょっと・・・(ゴスゴス)・・・た、助けて・・・><

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