4話 「炎の中で」
「大いなる火よ、風となりて走れ! 最大出力! 範囲濃縮型! エクスプロージョン!」
元々基本技の中では6属性中最高威力の爆発火炎魔法エクスプロージョン、それも詠唱つき、魔力フル放出・・・範囲は僕の周りだけにとどめておいたからキミたちは耐えられると思うし触手は焼き払えるだろう。でも・・・僕はここまでかな?
「アキィィィィィ!!」
アキが何を考えていたのかなんて言われなくったってわかる! ふざけるんじゃないわよ! 私は男だからアキを助けてたんじゃない。女だから助けられたわけでもない。私は・・・俺は俺だからこそアキを助けるんだ!!
超圧縮された熱が伝わる。触手たちが我先にと逃げ出し、熱に焼かれていく。熱源の中心、火の玉にしか見えないそこにアキはいるのね。考える必要なんてない、そこにアキがいるのならどんな地獄にでも飛び込んでいくだけ。
逃げ出し、焼かれながらも、なお私の逝く手を遮ろうとする触手たちを斬り裂き、かわしながらただ向かう。伸びた髪が火に焼かれ、肌がジュウジュウと音をたてるけれど関係ないわ。
「竜神流・・・刹那!」
超音速の突撃、視界に入るは一瞬、でも私がアキを見間違えるなんてありえない! その手をつかんで炎の海から引き釣り出す。うん、全身結構な火傷ができているけど命に別状はなさそう。くす、私もそれは同じかな? でも、どんなに酷い火傷が残っても構わない。アキが助かるならそれが一番だから。・・・それにレーチェルなら治してくれるかな?
「リュウト・・・? ごめん、僕はまたキミに助けられてしまった。僕が君を助けたいのに・・・」
悲しそうに悔しそうに・・・でも少し嬉しそうに微笑むアキはとても可愛らしくて、胸がキュンと・・・って私は本来男であって! この子は今は男の子で! ああ、でもアキであることには変らなくて!? い、いや、そんなことやっている場合じゃないだろう! しっかりしよう、私!
「・・・ふん、貴様らは何をやっている? 相変わらずといえば相変わらずだが。」
アシュラにまで呆れられているし!? クスン・・・ってなんか本格的におかしくなってきている気がするぅ!? って壁が燃えてる!? そうか、アシュラの属性は・・・
「ふん、オレの属性は雷。力の拡散が特性だ、本来の使い方とは違うが炎を壁に対して拡散させてもらった。」
アシュラは普段こういった属性の使い方をしないから忘れていたわ。これも性転換における思考の変化なのかしら? でも、よかった。これで薬が手に入るわ。時間的にも間に合ったみたいだし・・・はっ!?
「アシュラ! 気をつけて!」
アシュラの背後に一瞬映ったもの! 植物の気配は感じにくいけどあれは敵意に近い意思を持っていた。もっとも、私の声なんかよりも早くアシュラは反応していて、振り向き様に炎の中から出てきた巨大な拳をガードして・・・?
「きゃあ!」
アシュラ自体は大したダメージを受けていなかったみたいだけど、魔界の植物の氾濫やら爆発で弱っていた地面は耐え切れなかったようで衝撃に崩れ落ちる。そして、さすがのアシュラも地面なしでは踏ん張りが利かなかったようで、私の方へ吹き飛ばされてきて二人一緒に炎の海の中へ逆戻り。アキを安全な場所へ下ろしておいてよかった。・・・ちなみにさっきの悲鳴は恥ずかしながら私のものである。
「リュウト! アシュラ!」
僕の目に映ったのは突然現れた何者かにアシュラが殴られ、リュウトを巻き込みながら炎の海に逆戻りしたということだけ。
「今、助けに! ・・・くぅ。」
魔力フル放出といっても最大放出量というだけで今もっている魔力の全てを使ったというわけではない・・・のだけどかなりの量を失った体は精細さを欠き、火傷の痛みがさらに動きを遅くする。・・・でも僕が行かないと・・・
「うわっ!? な、何が起きた!?」
突然リュウトたちが吹き飛んでいった場所で爆発が起きる。炎の海だったはずのその場所は、爆発に炎が散りまるで空洞のように何もない空間になっていた。いや、その中に変らずに怖いぐらいの気迫を発している二人がいる。
「ふん、ようやく手ごたえがありそうなのが出てきたか。」
にやりと今は美しいという言葉が似合いそうな顔を歪ませて笑うアシュラ。
「弱い奴に力を使っても散ってしまうだけだからね。・・・あのぐらいの相手じゃないとやる気も起きないってものだわ。」
リュウトの顔はとても凛々しくてドキドキと胸が・・・あ、いや・・・そりゃ今は僕は男だけど本当は女の子で、リュウトは今は女の子なんだから! あ、でもそれでもリュウトには変らないのか? あ、いや、そうじゃないだろ!? そうか、リュウトの力の1つは気迫・・・数が多いだけの相手や防御だけの相手では本当の力を発揮できない。僕を助けてくれた時は今以上だった気がするのは都合のいい錯覚だろうか?
「行くぞ・・・リュウト!」
「ええ、アシュラ!」
ともあれ、2人は突然現れた植物の巨人。おそらく、この森のボスなのだろうそいつを強敵と認識したらしい。ああなった二人を止められる存在なんて誰もいないだろうな。
「ふん、修羅・・・烈風脚!」
アシュラが得意する修羅烈風斬・・・のアレンジバージョンである烈風脚。腹部への一撃で浮いた敵を追撃しての鋼鉄の爪での8連撃、そして最後の蹴りでリュウトの方に対して蹴り落とす! そしてリュウトが
「竜神流・・・竜爪閃!」
これまた得意の風の刃で切りつける。そしてそのまま・・・
「続けて! 竜神流・・・竜昇撃!」
蹴りと風の力がぶつかり合った結果、その場にドスンと落ちた植物の巨人を地面ごと再び宙に巻き上げる。そして2人は一瞬のアイコンタクトの後・・・
「・・・これで!」
「止めよ!」
空中でクロスするように一撃・・・あはは、あの2人のコンビネーションは相変わらずというかさらに良くなっているような? でもこれで決まり! そう僕は思ったんだけど。
「ちっ、しぶとい!」
忌々しげにアシュラが呟くように植物の巨人は何事もなかったように立ち上がる。いや、ダメージが回復しているというところか。実力的には2人に遠く及ばないのに何度斬りつけても回復してくる。・・・アシュラが一番嫌がる面白みがない面倒なだけの相手って感じにイメージが変ったってところだろうね。
「やっぱり、こういう相手は火の力が必要ね。」
リュウトがそういうが、まだ僕はリュウトの火炎系の魔法剣の元になるほどの魔法を使えるほどには回復していない。
「ごめん、僕はまだ・・・」
「大丈夫よ、この場には強い火の力がすでにあるからね。」
・・・へっ? でもこの火はもう僕の魔法としての火ではない。これを宿すなんてことは普通の魔法剣では出来ないはずだが・・・
一方その頃
「たまには直接見ようと思ってやってきたけど、なかなか激しくやっているわね~♪ まっ、あの様子なら大丈夫でしょ。とりあえずは合格よ。」
リュウトたちから少し離れたところでアシュラにさえ気づかれない気殺をしながら見学してるは女神レーチェル。
「ん? んん? へぇ、私も襲ってくるんだ~。へぇ~、そう・・・身の程を知ったほうがいいわね!」
しゅるしゅると近づいてきた触手に全身を絡みつかれてもまったく慌てずに余裕の笑みを浮かべ・・・すっと手が上がったとほぼ同時に走る閃光・・・その光はリュウトたちのところまでは漏れることなく、けれど力強く辺りを覆い、消えた頃には周囲から彼女以外のものを全て消滅させていた。
「あらあら? 準備運動にもならないのねぇ? まぁ、リュウトくんたちの未来を考えると、彼らはこんな相手に苦戦されてちゃ話にならないってことね。こんなのを危険だとか近づけないだとか言う神ばっかりだからこんなことに・・・いえ、あいつに手も足も出せないのは私も同じ・・・か。だから、あなたが頼りなのよ、リュウトくん。予定外ではあるけど、私の光の力もおまけでちょこっとつけておくわ。じゃあね、キミが最強の竜神の座につけるように私も協力させてもらうわ。」
森の植物と真剣バトル・・・なんですがリュウトとアキはやっぱり似たもの同士^^ お互いに同じようなことで悶々と悩んでますね♪
メイ「恋人で少なくても現在も異性なわけですからドキドキがあってもおかしくないんですけどね。」
自分の本来の性別と同性だってことで若干違和感があるってところですが、それがなくなるとタイムオーバーなのかなとも同時に思いますね。
メイ「しかし、リュウト殿は新しい力を手に入れたような気配がありますね?」
厳密にはリュウトではなく・・・いえ、これは次回のお楽しみで♪ 意外と便利な能力が追加されますので!
メイ「追加? なるほど、そういうことですか。」
そういうことです^^ 後は現状最強をいかんなく発揮しているレーチェル。ですが彼女を大きく越えるぐらい強くならないといけないのです。
メイ「でも、まだ時間はありそうですわ。リュウト殿も女王様もアシュラ殿もどんどん強くなっていってますから心配は要りません。」
レミーもまだ相当な力を秘めていますし、味方はまだまだ続々出てきますからね。といったところで今回はここまでです。次回もよろしくお願いしますね!




