6話 「閉幕の笑劇」
「そこまで! 勝者、アシュラ=ストロングス! 試合時間38.47秒!」
その宣言と同時に割れるような歓声が聞こえる。どうやらエルフ族の宮廷魔術師が張った結界が解かれたらしい。そして
「リュウト=アルブレス、アシュラ=ストロングス共に素晴らしい戦いを見せてもらった! 皆のもの! 再度両名に熱き拍手を!」
アキの言葉に再び割れんばかりの拍手と歓声が響く・・・アキ? キミは何を考えている?
「みなはこのような素晴らしい試合を何度も見たいとは思わぬか? また、これほどの速度で行われた試合だ、見えなかったものも多いかと思う。そこで、女神レーチェル殿の力を借りてこのようなものを作ってみた。この装置は空中に今の戦いを拡大縮小機能付きで映し出すことが出来る! これが見えれば達人間違いなしのリアルタイムモードからレーチェル殿の解説付きスロー再生モード(時間の引き伸ばし率表示付き)の2つをセットで売店で販売させてもらう!」
・・・アキ? キミは本当に商人になった方が向いているんじゃないか? はぁ、結局俺はアシュラだけじゃなくてアキにも勝てないんだな。こっちには勝つ気もありはしないが
「是非、この装置で戦いの余韻に浸って『来年の試合』を待って欲しい!」
・・・ん? いまさらって凄いこと言っていなかったか?
「「来年 (だと)?」」
俺とアシュラの声が重なる。・・・アキ、アシュラにも伝えてなかったのか。実際に戦うものに伝えなくて・・・いや、問題ないのか。
「くっくっく、いいだろう。どのような思惑があろうとも楽しき戦いを定期的に供給してくれるなら拒む理由もない。貴様の姦計に乗ってやろうではないか。」
そりゃそうだよな・・・。こいつの前に『楽しい戦い』を置くなど馬に人参をぶら下げるようなもんだ。よほどの理由がない限りは乗ってくるに決まっている。そして、俺には反論など許さないってか? まぁ、いい。なんだかんだ言っても俺も
「来年か・・・アシュラ、次の戦いは俺が貰うぞ!」
「ふん、精々強くなっておけ。より楽しき戦いを楽しみにしておこう。」
結局、俺も定期的に戦うのは相手がこいつなら文句はないどころか楽しみなんだ。・・・そして、アキの役に立つことも利用されることも嬉しく思うことはあっても憤りなんてないしな。ふっ、惚れた弱みって奴か?(それは私のセリフだよ~!(アキ談))
「リューく~ん、アーく~ん♪」
突然響く声に俺とアシュラの動きはぴたりと静止する。気配など読む必要もなく、こんなセリフを言う奴は一人しかいない。
「へ? ふにゃぁぁぁあああ!?」
高速で空から降りてきた・・・いや、落ちてきたレミーがまだ解かれていなかったレーチェルの結界に衝突する。うん、確実にレーチェルはわざと結界を残していたな。おまけに光・水属性のレーチェルの張った結界なのになんで雷を纏っているんだろうな? まぁ、やったのがレーチェルってことだけで納得が出来る気はするが。
ぽてっ・・・っとレーチェルが結界を解いたことで真っ黒に焦げながら俺たちの足元に落ちてきたレミー。俺もさすがのアシュラも突然の事態に唖然とするばかりだ。・・・うん、珍しいものを見たな。などと考えていると突然転移してくるものがいる。勿論レーチェルだ。
「はぁ、この子ったら・・・。飛ばずに落下してくる、結界があっても気が付かない、結界の解除も飛んで逃げることも出来ない・・・いつになったら一人前になってくれるのかしら? リュウトくんとアシュラくん、この子は私が天界につれて帰るわ。たっぷりとお仕置きと鍛錬をやってあげるんだから。」
「いや、その前に治療を・・・」
俺の言葉を最後まで聞くこともなく、レーチェルは来た時と同じように転移で帰っていく。まぁ、死ぬことはないだろう・・・たぶん。
「こほん、え~、この後の予定だが我らが英雄である竜神リュウト=アルブレスの握手・サイン会を予定している!」
再び流れるのはアキの声・・・アキ? 一体どうしてそういうことになったのかな?
「売店で色紙も売っているゆえ、どんどん参加して欲しい!」
・・・そういうことか。ふう、まぁ今回はアキの世話になったのも事実だし、こんなことでも多少はアキの助けになるんだったらやってやるさ。そうだ! ここはアシュラも巻き込んで
「アシュラ、お前も・・・っていないし!!」
逃げられた!? 気配も完全に隠してか!? い、いつの間に・・・。さすがにこれは追いかけられないな・・・それに
「ほら、リュウト! こっちだよ!」
ニッコリと笑って俺の手を引っ張る彼女には勝てそうもないからな。アキ、俺の最強はやっぱりキミだよ。
というわけで最後に持って行ったのはレミーとアキでした! しかしレミーは何をしに出てきたんだろう?
レーチェル「ん? 朝(時間的には昼)起きたら誰もいなかったから探し回ったらしいわ。」
それで天界から落下してきたのか? 他の方法はないのか?
レーチェル「あるんだけど天使は使わないわよ。飛んでいけばいいんだから・・・あの子はどうも空を飛べるってことを忘れるから落ちるけど。」
それでもって墜落してもピンピンしてるから凄い。天界って相当高い場所にあるはずですが・・・
レーチェル「以前、レミーが言っていたでしょ? 落下すると10分かかるって。そこから逆算してみなさい。」
えっと、自由落下だから S=1/2at^2 ってことは上空1764キロ!? それ地球なら完全に宇宙空間なんですが・・・
レーチェル「まぁ、ネフェーシアは地球よりも大きいからね。空気抵抗や10分ぴったりじゃないってことも入れて・・・あなたが作っていた設定では?」
え、えっと・・・(ガサゴソ)あ、あった・・・ん~、天界は地上から上空1700キロのところにある・・・になってます。つまり落っこちて無事・・・『いった~い』程度で済んでいるレミーが異常だってことですね。
レーチェル「そういうことね。まぁ、アキちゃんやメイちゃんたちは無理でしょうけど、リュウトくんやアシュラくんは普通に耐えるわよ。つまりレミーじゃなくて・・・」
うちの連中の防御力と生命力が異常だってことですね>< では、そろそろ次回予告を・・・
レーチェル「そうね。エルファリアに送られてきた贈り物はお饅頭? 何の疑いもなく食べたリュウトくんたちだけど、送り主は例のお気楽なトラブルメーカーで・・・竜神伝説3部6章『俺が私で私が僕で!?』くすくす、女の子のリュウトくんや男の子のアキちゃんか。面白いことになりそうね。」




