6話 「怖くないのに」
う・・・ここはどこ?
「あ、アキ! 気がついたみたいだね!」
ママナ? あ、そうか・・・私はコクトがした怪談で気を失って・・・。うう、恥ずかしいよ~。
「すまぬ、色々と情けないところを見せた。」
「ん~ん、別にいいよ? 誰にだって苦手なことぐらいあると思うし。それにね、アキが気がついた時に誰もいないと怖がるって私をつけたのはリュウトなんだよ。」
うん、その気持ちは嬉しいけど・・・
「では、そのリュウトはどこに行ったのだ?」
「リュウトはみんなに軽食を作ってるよ・・・リュウトが動いたらメイさんもメイドである以上は動かないわけにはいかないでしょ? そうすると私とアキが内緒話できるからね。」
内緒話? お姉ちゃんに聞かれたくない話?
「あっ! そんなに大した話じゃないよ? ただ、次の私の話は出来るだけ怖くない話にするからってだけ。メイさんに聞かれるとちょっとねって感じかな? でも、あのメイさんがただアキを怖がらせるだけでこんなことするかな?」
ママナ! うう、ママナのその気使いが凄く嬉しい。そして・・・うん、私もそう思う。お姉ちゃんはたしかに私をからかうの好きだけど、今回はちょっとやりすぎな感もある。こういうときは別に何かを企んでて・・・その過程でからかって遊んでいるっていうのが普段のパターンなんだけど。
「すまぬ、ああいうときのメイは私も良くわからん。普段は本当に頼りになるのだが・・・」
ああいうときは恐怖以外の何者でもないのよね。よく敵に回したくないって言うけど、本当に敵と味方を行ったりきたりしてる人だから余計に感じるわ。
「おっ、アキも気がついたみたいだな」
「女王様、お目覚めになられましたか?」
大皿いっぱいのサンドイッチを抱えて出てきたのはリュウトとお姉ちゃん。そして無言でそれに飛びついて手を伸ばしているレミー・・・。レミーって結構食べ物に執着してるのね?
「じゃあ、さっそく再開しましょうか。」
そしてニッコリと当たり前のように言うお姉ちゃん。うう、本当に何を考えてるの~~!?
「じゃあ、次の話は私が話すね!」
とは勿論ママナ。さっきの内緒話も勿論あるけど、サンドイッチをほおばりながらの満面の笑顔で話すから余計怖くない。
そして
「でね~、私は吃驚して『きゃ~!』なんて悲鳴あげちゃったの~! でね、でね~!」
身振り手振りを交えて大げさに話すママナ。内容は勿論だけど、その話し方のおかげでさらに怖くない。きっと全部ママナが私のためにやってくれているのだろう。だというのに・・・。
「あ・・・あの、アキ? 私の話、そんなに怖かった?」
青ざめた顔でブルブルと震えている私を心配してママナがそう聞いてくる。ううん、怖くはなかった。なかったのに、何故か震えが止まらない。わ、私どうしちゃったんだろう? そしてニヤニヤと笑っているお姉ちゃんは一体何を考えているんだろう。怖い、それが凄く怖いよ・・・。
フフ、とりあえずは予定通りってところね。あそこまで怖がるっていうのは本当はちょっと予定外ではあるのだけれども・・・。
アキはやっぱり女王の立場に縛られている。それに自分の弱さを嘆いている。だから、本当は一番弱いところを見せないといけないリュウトくんにも見せれていない。ただの恋人ならばそれでいいのかも知れない。でも、もうそろそろ一歩先に進むべきだわ。私は・・・あなたたちには幸せになってほしいのよ。些細なことで喧嘩別れなんてしたらきっとあなたは生涯苦しむでしょうし・・・。
次はコーリンさんが話して、その次が私・・・きっと私の計画に気づいているのはレーチェルさんぐらいなものでしょうからうまく行くわ。レーチェルさんもリュウトくんを幸せにしたいって言うのは同じでしょうから。
ふう、不器用な妹を影ながら支える姉って大変ね。もっとも、そんなアキだから愛おしくて・・・からかうと面白いのだけど♪
アキの困惑をよそに着々と進行してるメイの計画。まさに怖いのはあんただ状態です。
ママナ「うう~、私の話が省略されてる・・・。」
いや~、怖くないってわかっている怪談なんて書いてもですし・・・(汗)
ママナ「ホント~? ただ思いつかなかったってだけだったりしない~?」
・・・ ・・・ ・・・(目をそらす><)
ママナ「こら~~!! 本当のことをいいなさ~い!!」
で、では今日はここら辺で! 次回のコーリンの話は・・・怖いのでしょうか? それとも彼女の優しさで??
ママナ「あ~~~! に~げ~る~な~~~~!!」




