4話 「神の祠」
「じゃ、次は私が話そうかしら。」
いつもどおりニコニコ~って人好きのする顔で話すはレーチェルさん。・・・この人はこの顔で時折とんでもないことするから油断は禁物だわ。
「神様の語る怪談・・・っていうのはどうなんだろうな?」
なんて首を傾けているけど・・・リュウト、あなたは自分も神だって言う自覚本当にないでしょ?
「あら、リュウトくんに言われるのだけは心外だわ。それにね、私の話はまだ私が人間だった頃の話よ。」
れ、レーチェルさんも体験談なんだ。っていうかなんでみんな怪談に出来るような(?)体験談を持っているのよ~~!!
「そう、あれはまだ私がどこにでもいるような普通の女の子だった頃。たしか6,7歳ぐらいの頃だったかな? 近所に住んでいた10歳ぐらいのねガキ大将をボコボコにした罰として、郊外にある村の神様の祠の掃除をするように言われたのよ。」
・・・レーチェルさん。遠い目をして語っているところ悪いんだけど、普通の6,7歳の女の子は10歳のガキ大将をボコボコになんて絶対出来ないと思うんだけどな?
「実のところね、村では神様なんて言われてたけど、実際には大した信仰があったわけでもなくて、もっと言えば今の私みたいに本当に生きたまま神になったわけでも死んだわけでもない存在がそこにはいたのよ。」
うう、定番では大蛇とかに襲われそうな話だわ。・・・でも、レーチェルさんだからな~、襲われても返り討ちにしそうな気もする。
「祠なんて大層な名前をつけられていたけどね、実際は普通の洞窟よ。ただね、薄暗い洞窟だって言うのに蝙蝠の一匹もいないっていうのが不思議だったわ。」
こ、蝙蝠さえもいつかない洞窟! これは絶対何かあるわ!? うう、なんで皆平気そうな顔してるのよ~!!
「こういう話は夏におきるって言うのは定番なのかしらね? 私の話も夏の話でね、洞窟の中は涼しくて気持ちよかったって記憶があるわ。」
それって、そんな暗い洞窟の中を進んでいる女の子(それも6,7歳)の感想じゃ絶対ないわよ~~~!!
「ピシャン・・・ピシャン・・・と響く水音を聞きながら洞窟を進んでいくと洞窟の奥がボヤ~と光っているのよ。」
ひっ!? それって人魂とか鬼火とかって奴!?
「まぁ、ただのヒカリゴケの群生地だったってだけなんだけどね。」
・・・れ、レーチェルさん~~~!!
「そのさらに奥に行くと意外と綺麗にされている祠? う~ん、まぁ、祠といわれれば見えなくもないって感じのものがあってね、幼いながらにこれを掃除すればいいんだな~ってことで布で拭いていたのよ。」
そこまでは別に怖い話ではないわよね? まぁ、子供だから普通は十分怖いと思うんだけどレーチェルさんはどうみても普通には見えないし?
「う~ん、なんか変なことを考えている子がいそうな気がしたけど、まぁいいわ。」
・・・さすがレーチェルさんね。まぁ、私だけじゃないのかもしれないけど・・・リュウトとかも同じような顔してるし。
「まぁ、そんなこんなでね、か弱い女の子が一生懸命お掃除してたのよ。で、きっと一生懸命になりすぎて力が入りすぎたのね。真新しいキラキラとした鋼鉄の軸・・・といってもそんなに太くなかったな、たしか3cmぐらいかしら? を折っちゃったのよ。もう、吃驚するわ祟られそうで怖いわで泣き出しちゃったのよ。」
いやいや、私たちから見れば3cm『も』ある鋼鉄の軸を折っちゃう女の子が怖いわ。よほどさび付いてたって言うならわからなくはないけど、真新しい綺麗な状態だったって本人が言ってるし・・・ね。となるとむしろガキ大将が死ななくて良かったねって気にさえなるわ。
「そんなときにね、後ろから声がしたのよ。『そんなに泣くな。そんなものが壊れようが俺は気にしない』って。もうパニックもいいところよ。そしたら本当に困ったような声で『すまない。脅かす気はなかったんだ。許してくれ』なんていうものだから泣くどころじゃなくなっちゃったわ。」
う~ん? これって怪談だったよね? なんか方向がずれてきてない??
「くるって笑顔で後ろを向くとね、笑顔の優しい男の人が立ってたのよ! もう完全に一目ぼれ! ちょっとおませさんだったのかな? それから私と彼はいろんなことを話したわ。彼が実は神様なんかじゃないとか、そもそも人間じゃなくて昔からここに住んでいる竜なんだとか・・・」
ん? ちょっと待って? それって!
「そうなのよ! それが私とライオスの出会いだったの! きゃ!」
いやいやいや! なんか乙女な珍しいレーチェルさんは見れたけど! それは怪談じゃなくてむしろ・・・
「レーチェル殿? 誰がのろけ話をしろって言ったのでしょうか? 私たちは怪談話をしているのですが?」
あはは、お姉ちゃんもやっぱそう思うよね? 私としてはこういう話の方が嬉しいんだけどね。
「いいじゃないこういう話だって。そ・れ・に! 私とライオスの話も濃いわよ~。この後いろんなことがあったのよ。ライオスが竜神と呼ばれるようになるまでの物語、そして私が神になってしまう話でもあるわね。」
うん、ある意味私たちの先人の物語だもんね。ちょっと興味あるかな?
「そうね、私が悪霊に取り付かれてライオスが助けてくれた話でも・・・。」
「さぁ、レーチェル殿の話はここら辺にしようぞ! 次は誰が話してくれるのじゃ。」
あ、危ない危ない。そんな話されたらたまったもんじゃないわ! レーチェルさんとお姉ちゃんの恨めしそうな顔が気にかかるけど次の話に逃げさせてもらいましょう♪
レーチェルの話は結局のろけ話で終わりました。
レーチェル「もう! この後私とライオスの大冒険が始まるはずだったのに!」
それ一体何話かけてやるつもりだったんですか!? 出会いが6,7歳で別れが20歳ぐらいだから10年以上はある物語でしょう!?
レーチェル「う~ん? 全300話の大長編?」
勘弁してください。今までの本遍よりも長いぐらいじゃないですか。
レーチェル「だってそのぐらいの文量にはなるでしょ? それに一応設定だけはあるじゃない。」
まぁ、確かにそうなんですけどね。それを書くとリュウトとアキが出て来れないんですよ。主役は彼らなんですから・・・。
レーチェル「え~? いいじゃない、私とライオスが主役の物語。ライオスはリュウトくんと見た目も性格もそっくりなんだから問題ないわよ。」
あなたはアキとは似ても似つかないでしょう・・・。
レーチェル「そうでもないと思うけど? か弱い私がライオスと共に旅をするわけになった理由とか、そもそもライオスとダロン(邪竜神)の間の確執とか! 色々魅力的な話あると思うんだけどなぁ。」
か弱くないですって。少なくても一般の人間は3cmの鋼鉄をへし折る女の子をか弱いとは評しません>< 他にもエルフを救う話なんかもありますけど・・・こっちにはアキやメイの曽祖父の代が出てきたりするんですよね。
レーチェル「そうそう、だから書きなさい!」
命令形ですか!? まぁ、気が向いたら番外編で・・・。というわけで今回はこの辺でお開きです~♪




