2話 「レミーの天敵」
「ム~、リューくんの話はちっとも怖くないよ~。今度はわたしがするね!」
れ、レミーの話? ・・・うん、大丈夫。ちっとも怖そうな感じがしない!
「これは思い出しても身の毛がよだつ、わたしが体験した恐怖の物語だよ。」
えっ? な、なんかレミーの雰囲気が違う!? か、考えてみれば時間的にはレミーは私の4倍強生きてるわけで・・・もの凄い怖い話を経験してたりするの!?
「そう、これはちょうどこんな蒸し暑い夏の日のことだったな~。その日はわたしはレーチェル様に特訓を受けていて・・・」
ちょっとレーチェルさんを見るレミー。そんなレミーにニコニコ~と笑いかけるレーチェルさん。なんだろう? ちょっと背筋が寒い。
「まぁ、特訓自体はね、レーチェル様の特訓にしては優しい特訓だったんだ。巨大な回し車っていうの? あのリスとかがからから回す奴? の中に入れられてね、かなりの高速で回されたの。」
「そんなに速くないわよ? たしか秒速10万キロぐらいだったかしら?」
・・・レーチェルさん、それ十分すぎるぐらい速いです。というよりもどうやってそんな速度を出したんですか?
「うう~、まぁそんな感じでね、視界はグルグル、まともに立っていることさえも出来ない状態だったわたしの傍を掠めて何かがグサッって刺さったの。それでね、前を・・・よく見えなかったんだけど・・・見てみると剣を持ったレーチェル様がいて、横には剣とか斧とか槍とかがいっぱいあって『さぁ、どんどん投げるわよ~♪ 死にたくなかったらちゃんと避けなさい』って。」
も、求められている怖さとは違う気もするけどたしかにそれは怖いわ。リュウトも青ざめているし、コクトなんかは滝のような涙流してるわよ?
「あっ!? いっけな~い、話脱線しちゃったね。これはどうでもいい話でね、怖かったのは家に帰ってからなの。」
へっ!? い、いや、十分怖かったよ? レミーの話はそれでもういいよ! もっと怖いって一体何なのよ~~!!
「そりゃ、そうよね~。あれは面白かったけど、あのぐらいの特訓は日常茶飯事だもの。別に怖いって言うような話じゃないわ。」
そのレーチェルさんの言葉にリュウトがさらに青ざめて、コクトの涙の滝が太くなる。お姉ちゃん! 『私はまだまだ甘かったのね』って言いながらメモするの止めてよね! そんなことやられたら本当に私死んじゃうよ!?
「時刻はそう、午後3時ごろのことだったの。」
ん? でも怖い話って言うにはへんな時間ね? 普通に明るい時間よね?
「わたしは・・・わたしはすっごい楽しみにしてたの! その日、たまたま手に入れられた美味しいって評判のお店のケーキ! 本当に! 本当に楽しみにしてたの~!」
んん? なんか話が変な方向にずれてきたというか・・・初めからずれていたと言えばずれていたけど。
「それなのに! 帰ってきたわたしの目に映ったのは! ケーキのあった場所に群がる黒い最悪の悪魔たちだったの!!」
・・・悪魔という言葉にアシュラが露骨に嫌そうな顔をしたけど・・・まぁ、一緒にされたくはないよね、やっぱ。ようするにゴキ・・・ううん、やめておこう。アレって天界にまでいたんだ。たしかに怖いって言えば怖いけど。
「もう最悪だよ~! トラウマものだよ~! わたし、虫は大嫌いなの~~~!!」
レミーの弱点はわかったけど、そのなんというか・・・。わ、私としては怖くなかったのは嬉しいけど・・・なんて思ってたら
ガタンって部屋の中で音がしたの。何の音かな~なんて思ったら
「はぁ、レミー・・・あなたの仕事よ。連れて行ってあげなさい。」
「は~い。」
し、仕事!? 連れて行く!? い、一体何!?
「ああ、こんな話をしてるとね・・・集まってきちゃうのよ。大丈夫、一応レミーも見習いとはいえ天使だから。」
な! 何が集まってきてるのよ~!? そ、そのわかるような気もするけどわかりたくないよ~!!
「こんなところで彷徨ってたら駄目だよ~。うん、あの世は向こうだよ? ちゃんと迷わずに行ってね♪」
レミーも! レミーも何と話してるのよ~~!! もう! もういや~~~~~!!!!
今回はちょっと短い、そして語られた話は怪談なんかではなかったのですが・・・
レミー「え~、怖かったでしょ? 私の話?」
現実的な怖さという意味では・・・たしかにどっちの話も怖かったですが。
レミー「えっへん! さすがレミーちゃん!」
何を誇っているのかはわかりませんが、安心したところに飛んできたクリティカルヒットはアキには堪えたようです><
レミー「え~? 別に危険はないよ~? だって、ただの浮遊・・・」
それ以上言うと隅っこで震えてる女王様が気を失うから・・・では、次回は誰の話なんでしょうか!? そして、まともな怪談は語られるのか!
レミー「お楽しみにね~♪」




