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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
3部3章『リュウトの弟子』
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1話 「弟子入り」

 きっと僕はとんでもない大罪を犯そうとしている。


 いや、違うね・・・ここはもう女王様の私室のある区間。極一部のものしか立ち入りを許可されていない場所に入隊して間もない新兵が無断侵入したんだ。もう大罪は犯しているというべきなんだろう。


 僕の足はある部屋の前で止まる。竜神様のお部屋、ファンクラブ(非公式)に加入してるって言う知人の話では今日は珍しくお部屋でお休みになられているという。だから、竜神様がこの扉一枚挟んだ向こうにいらっしゃるはずなんだ。僕は飛び出るんじゃないかと思うぐらい鼓動を早くする心臓をいさめつつドアをノックした。


「鍵はかかってないぞ。入ってきていい。」


 中からかけられたお言葉。僕も竜神様の誕生日に広場にいた。きっと、あの場にいなかったエルファリアの住民なんていないのではないだろうか。だからわかる、このお声は間違いなく竜神様だということが。


 ノックをしたのが誰であるかも確認せずに入って来いと仰った。ひょっとしたら誰かとお会いになる予定があったのだろうか? 僕はその誰か、きっとお偉いさんである誰かと間違われたのだろうか? で、でも!


「ししししし、失礼します!」


 情けないぐらい震える声を出しながら僕はなけなしの勇気を振り絞ってドアを開ける。そして・・・竜神様は中にいた。読まれていた本をパタンと閉じて僕の方へ笑みを向けてくれた。想像していた人物と違うはずなのに何の驚きも見せずに・・・


「どうした? 見つかるとなかなかにまずいだろう。早く入ってドアを閉めたほうがいい。ついでに鍵もかけておくべきだな。」


「は、はい!」


 確かに竜神様の仰るとおりだ。僕は慌てて中に入りドアを閉めて鍵をかけた。これで部屋の中には僕と竜神様だけ。今までになく暴れる心臓の所為で今にも気を失いそうだ。


「で、俺に何のようだ? ここまでやってきたところを見ると、よほど大事なことだと思うが。」


 思えば、このときの僕はどうかしてたんだろう。竜神様のご質問にもお答えせずに


「な、なんで僕を見て驚かないですか?」


 なんて、自分の疑問を口にしてしまったのだから。でも、竜神様はほんのちょっと驚かれた目をして、その後すぐに笑みを浮かべて


「何、そんな扉一枚向こうにいるものが知人かそうでないかぐらいは気配でわかるさ。扉の向こうにいるものが知らないものであることはわかっていた。そのものに敵意がないこともな。だから入れた。それだけのことさ。」


 何でもないことのように竜神様は言う。でも、それが実はとんでもないことであることぐらいは僕でもわかる。つまり、それだけこの方は凄いんだ。


「でだ、俺の質問にも答えて欲しいな。何の用で俺に会いに来たんだ?」


 竜神様のお声が聞こえ、沸騰した脳がそのお言葉を理解した瞬間に、僕の血の気は今までと逆に急激に引いていった。僕自身にその音が聞こえるぐらいに、きっと今の僕はさぞや青ざめた顔をしているのだろう。


「も、ももももも申し訳ありません! あの、その、僕は・・・いえ、私は・・・その・・・」


「落ち着けって。とって食いやしないから。ほら、深呼吸してみろ。うん、もう一回。」


 僕は竜神様に言われるがままに2回大きく深呼吸をした。まだ緊張はしてる。でも大分落ち着いてきた・・・と思う。


「申し訳ありませんでした! 御用というにはあまりに個人的な・・・わがままなのですが、私にあなた様の剣を教えてください!」


 僕は殆ど90度に近い位頭を下げる。これでもまだ足りないぐらいだ。


「はぁ、とりあえず頭を上げろ。あのな、俺は人に剣を教えるほどの存在じゃないぞ。それにエルフ族は魔法と弓、剣を使うものなど殆どいないと聞いているが?」


 竜神様に言われるとおりに僕は頭を上げる。そこにはなんとも困ったような、厄介ごとを拾ったとばかりの表情をした竜神様がいた。でも、僕もこれに関しては引くわけには行かない。


「お願いします! 私は竜神様の剣を知りたいのです。たしかに仰るとおり、エルフ族には剣を使うものは殆どいません。ですので前線は極めて貧弱、私は剣士として皆を守りたいのです!」


 戦いなんてないほうがいいのはわかる。でも僕は兵士だ。万が一があったときには命がけで皆を守るのが仕事。そして、魔法や弓を生かすには前衛がしっかりしていないといけないんだ!


「・・・自惚れるなよ。お前が戦うならそれは戦争だろう? ただの魔物単独なら剣士がいなくてもここら辺の魔物ならば問題ない。戦争で数千、数万の敵を相手にお前一人が前線に立ってなんの役に立つ? 俺とてそんな状態では皆を守ることなど出来ないぞ。」


 それはきっと本当だと思う。きっとこの人ならば万の敵を相手にしても自分が生き残ることも敵を全滅させることも容易なのだろう。でも、後ろにいるもの全てを守ることは出来ないというのもまた事実なのだと思う。でも!


「それはわかっています。ですが、私がそれを習うことで続くものが出てくるはずです! 不肖ながら竜神様から習った剣をそのものたちに私が教えられれば助けられる人は増えるはずなのです! お願いします! 私に剣を教えてください!!」


 僕は竜神様の前に跪き、頭を床にこすり付けるようにしてお願いをする。この人の前で持つようなプライドなんて僕にはない。あるとしたら、なんとしても剣を習いという覚悟だけでいい。


 そんな僕を前に竜神様は『ふう』と軽く息を吐き、僕の横をすたすたと通り過ぎてドアを開けた。ああ、やっぱり僕なんかがこんなことを願うのは過ぎたことだったのだろうか。


「何をしてる? こんな部屋の中で剣なんて教えられるわけがないだろう? ・・・教えるなんて偉そうなことは言えんが、俺の剣を知るつもりがあるならついて来いよ。」


 えっ!? それってつまり・・・


「あ、はい! すぐに参ります!」


 扉の外に体を半分出した状態で待っていてくれている竜神様を僕が慌てて追いかけたのは言うまでもないことです。


リュウトの元にやってきたエルフの若者の言葉はリュウトの心に響いたようです。


リュウト「あんな言葉を言われたらな、答えないわけにもいかないだろ? もっとも俺はまだ人に剣を教えられるほどの実力があるとは思えないのだが」


さすがにそれぐらいの実力はあると・・・というよりも普通の町の剣道家なんて1000人いても相手にならないでしょう?


リュウト「実戦ならな。俺のはあくまで我流の実戦の中での剣だからな。洗練されているわけでも確立されているわけでもない。俺が俺として敵を殺し、生き残る為の手段だ。」


それが彼にとってはいいのではないのかな?


リュウト「ならば何も言わないが・・・ところでこの新兵君の名前がまだ出てきていないんだが? 一話丸々彼の視点で書かれたというのに。」


あはは・・・名前は次あたり出てきます。・・・たぶん。

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