3話 「天、割れる時」
「ふん、武器も持たずによく吼えるな。見ろ、これが真の強者が持つ武器というものだ。」
サタンが引き抜いた剣。それは本人に勝るとも劣らない禍々しさを秘めた剣だった。
「他者が命を糧にする魔剣。名をソウルイーターという。」
命を糧に・・・か。ならば、他者と共にあり他者によって支え合う俺たちと、他者を貪り力を取り込むその剣、どっちが上か勝負だ。
「竜神流徒手・・・竜爪閃!」
自分自身の手を剣に見立てての魔法剣。案外できるものだな、もっとも痛いし威力も落ちてるから有効かどうかは微妙だが。
ともあれ、発動した3本の風の刃はサタンを切り刻む! そして、
「うふふ、さあ! 地面に這い蹲りなさい!」
・・・なんか味方のはずなのに俺の方が背筋が寒くなるのはどうしてなんでしょう? メイさん?
「くっ、女・・・調子に乗るな!」
一撃一撃はそう大したレベルではなくとも連撃となればまた話は変ってくる。苛立ったサタンが自分に迫るのを見てメイさんは・・・
「今よ! アキ!!」
「うん、任せて! お姉ちゃん!! 真紅なる業火よ。我が命の火を糧に偽りの生命となれ! ファイヤー! バーーード!!」
普段よりもずっと気合の入ったアキのファイヤーバードがサタンを焼く。自分を囮にするなんてメイさんらしい。
「くぅ、エルフの小娘がうっとおしい!」
今度は反転してアキに迫るサタン。その剣がアキに当たるかと思えたとき、横から飛び出した剣がそれを阻む。
「貴様の相手は1人1人では無いと知るべきだな。サタン!」
「お、おのれ! ヘル~~~!!」
「言っただろう? 俺は暗黒騎士ヘルじゃない、黒騎士コクトだと。頼むぞ・・・アシュラ!」
「・・・よかろう。」
コクトが押さえている隙にアシュラが背後からサタンの後頭部に渾身の回し蹴りを打ち込む。不意をつかれたその一撃に数十Mほど吹き飛んだところでサタンは体勢を立て直す。だが、その隙をさらにつこうとしているものたちがいる。
「ごめんね、まーちゃんにこーちゃん、こんなこと頼んじゃって。」
「ううん、私たちは直接は戦えないから。ここでいいの?」
「あ、もうちょっと右かな?」
「わかりました。では行きますよ。」
動けないレミーを左右から支えて高速飛行をするのはママナとコーリン。そして、指示を出しながら懸命に矢を打ち出すレミー。そうだ、これでいいんだ。一人一人が勝てなくてもいい。俺たちの勝利はそんなものじゃない。
「この・・・ふざけるな~~!!」
何が起きたかわからなかった。サタンの怒声が聞こえた瞬間に俺たちは一人残らず吹き飛んだ。わかったのはただそれだけだった。
「その程度の攻撃が俺の体に死を与えられるとでも?」
確かに効いていたはずの攻撃、ダメージがあったはずの体が・・・回復してる? 奴には再生能力でもあるというのか?
「その程度のダメージなど俺には無意味なのだ。そして・・・」
サタンの周りに浮かぶ6つの球体・・・。ま、まさか!?
「不思議か? そうだろうな、6属性を同時に使う。貴様らには不可能だろう? とくと見ろ! これが属性の王! 天の力だ!!」
一点に集まる6つの球体。それだけでそこには途方も無いエネルギーが発生する。属性の融合、全ての属性を統べる原初の力・・・それが天か。
「ほう? 一人目の犠牲者は貴様か?」
無言でサタンの前に立った俺にそう奴はあざ笑う。ふと、見たアキの目が不安に揺れながらも信頼してくれているのがわかる。それを・・・裏切るわけには行かない。
「イザって時に体を張るのはリーダーって相場が決まっているものさ。だが、死ぬために立ったんじゃない、打ち破る為に立ったんだ!」
「ふん、ならば! 受けて消し飛べ!」
ビリビリと伝わってくる威圧感。先ずはこれをいなして、奴に致命傷を与える攻撃をして、先はまだ長いんだ! ここでは死ねない! そして、生きてる以上諦めない!!
「何!?」
サタンが焦る声が聞こえる。たしかにこれは奇跡だ。いや、俺も何が起きてるのかわからない。ただ、突然辺りを埋め尽くした光がサタンの作ったエネルギー球を打ち消そうとしている。・・・これは、この光はもしかして・・・
「リュム? お前は生きているのか?」
ふと口から出たその言葉、答えなど帰ってくるはずも無い・・・そう思ったのに
「我は究極の魔剣。あの程度で消滅などするはずも無い。・・・そなたの、我が主の思いを受け、我は再びそなたと共に戦おう。」
光が俺の手の中に集まった・・・そう思った瞬間にはいつもと変らないあの剣の姿があった。いや、以前よりももっと強くなっている?
「馬鹿な! 馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な!! 何故、貴様がまだ存在している! 何故、貴様に天の力を消滅できるのだ!!」
「知れたこと。天とはいえ、同質の力をぶつければ相殺できる。究極の名を冠した我の力・・・天以外の何であるとおもっていたのだ?」
帰ってきた竜神剣! 何だかんだいってこの剣がないと締まりません。リュウトとリュム、二人合わせてこその竜神。そして竜神伝説なのです。
アキ「私・・・ヒロインなのに・・・。」
まぁ、リュウトがヒーロー(男主人公)、アキがヒロイン(女主人公)、リュムは影の主役って感じですから。日常じゃ殆ど目立たないでしょリュムは。
アキ「そうだな、日常だとレミーが目立ったりするが・・・。でも、やっぱり不思議な剣のようだな。天の力はまだしも再生どころか強化までするとは。」
そこらへんはもう一枚竜神剣の秘密のベールをめくると見えてくる竜神剣の組成による特徴なんですけどね。ちょっとしたヒントを言うとあのタイミングを狙って出てきたのではなく、あのタイミングが戻ってこれる最速だったのです。リュウト次第ではもっと速く戻ることも出来たともいえますが。
アキ「めくってもめくっても中から秘密のベールが出てくる・・・たまねぎみたいな奴だな。」
たまねぎ・・・なんか一気に格が落ちましたね。以前も言ったように竜神剣の本当の正体が明かされるのは最後の最後。ですが、結構ヒントはあっちこっちにばら撒かれているので是非推理して見てください。僕が正解を書く前に掲示板にでも書き込んでくれると・・・悲鳴を上げながら喜びますので。
アキ「ばれるのは困るが、そこまで読み込んでくれるのは嬉しいか。難儀な奴だ。」
ほっといてください。では次回もよろしくお願いします♪




